「運命の人は一体どこにいるんだろう?」皆さんも一度はそう思ったことはありませんか?
この記事では、そんな「運命の人探し」がテーマになっている映画、『ロシュフォールの恋人たち(原題:Les Demoiselles De Rochefort)』をご紹介します。
1967年に大ヒットしたミュージカル映画です。
「きっとまだ見ぬ運命の人は世界のどこかにいる!」
「ここではないきっと遠くの街に運命の人がいる!」
「そんな運命の人にある日出会えるはず!」
と漠然と思いながら日々を過ごしている人々を、ジャック・ドゥミ(Jacques Demy)監督によっておしゃれでユーモアたっぷりで描かれています。
みなさん、こんにちは!ミュージカルの舞台を観るため、年に一回はロンドンへ行くほどミュージカルが大好きなカタクリです。
フレンチ・ミュージカル映画の傑作『ロシュフォールの恋人たち』で使われている曲はテレビのコマーシャルでもよく使われているため、本作を観たことがない人でも、聞き覚えがある人も多いと思います。
ここでは映画のあらすじ、アメリカン・ミュージカルへのオマージュ満載の豪華俳優陣、そして、フランス人なら誰でも知っている曲『双子姉妹の歌』にスポットを当てて『ロシュフォールの恋人たち』の魅力に迫ってみます。
ドゥミ風アメリカン・ミュージカル『ロシュフォールの恋人たち』のあらすじ
フランス西部に位置する小さな港町ロシュフォール(Rochefort)に住む作曲家ソランジュ(Solange)とバレエダンサーであるデルフィーヌ(Delphine)の双子の姉妹は、「運命の人」との出会い、そして有名になるためにパリに行くことを夢見ていました。
そんな中、週末に開催されるお祭を盛り上げるため、イベント会社のトラックが到着します。
その頃、海兵のマクサンス(Maxence)は双子の姉妹の母イヴォンヌ(Yvonne)が経営するカフェで、夢の中に出てくる「運命の女性」に未だ会えないことを語っていました。
同じ頃、デルフィーヌは元恋人ギヨーム(Guillaume)が経営する画廊に展示してある自分そっくりの肖像画を目にし、絵の作者が運命の人であると想いを募らせていました。
ソランジュは行きつけのピアノ店を訪ね、パリに住む有名な音楽家アンディ(Andy)への紹介状を書いてもらうよう、店主のシモン(Simon)に頼みます。
シモンは快く引き受けますが、話しているうちに、昔この町で出会い「ある理由」で別れた元婚約者を、今でも忘れられないことをソランジュに語ります。
ピアノ店を出たソランジュは、歳の離れた父親の違う弟ブブを迎えに学校に向かう途中、道でぶつかったアメリカ人男性に心を奪われ、またそのアメリカ人男性もソランジュを忘れることができなくなっていました。
一方、カフェではイヴォンヌが、かつてこの町で出会った男性の子どもを身籠っていたにも関わらず、「ある理由」で離れざる得なったことを話します。
週末のお祭りの準備が進む中、パフォーマーのエティエンヌ(Étienne)とビル(Bill)は、パートナーである女性ダンサーたちが海兵と恋に落ち、イベントには参加しないと言われます。
困った二人はイヴォンヌに双子の姉妹がいることを知り、パートナーとして一緒にお祭りに参加しないか提案することに決めました。
そしてお祭りが始まると同時に、登場人物たちの運命も動き出していきます。
アメリカのミュージカル界のスター勢揃い
ドゥミ監督が、『ロシュフォールの恋人たち』はアメリカン・ミュージカルへのオマージュと言っていたように、本編には様々なシーンでその影響が見られます。
例えば、お祭りのシーンでのソランジュとデルフィーヌは、1953年の映画『紳士は金髪がお好き』のジーン・ラッセル(Jane Russell)とマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)そのものです。
その他、本編にはアメリカのミュージカル界のスター勢が揃いしています。
アンディー役を演じたのは、50年代から60年代を代表するミュジカル界の大スター、ジーン・ケリー(Gene Kelly)は、元々ブロードウェイのミュージカル俳優で、40年代に映画デビューをしてから1951年に出演した『巴里のアメリカ人』そして翌年の『雨に唄えば』に出演し、その地位を不動のものにしました。
アンディーがソランジュと偶然出会い、恋に落ちるシーンでは『巴里のアメリカ人』のレスペクトが垣間見ることができます。
また、パフォーマーのエティエンヌを演じたのは、1961年公開の映画『ウエスト・サイド・ストーリー』でプエルトリコ人の不良グループのリーダーを演じたジョージ・チャキリス(George Chakiris)、そして相棒のビルを演じたグローバー・ギルモア(Grover Dale)は、ブロードウェイ版の『ウエスト・サイド・ストーリー』に出演していました。
ロシュフォールに到着しトラックから降りて踊るシーンは、まさに『ウエスト・サイド・ストーリー』のコレオグラフィーさながらです。
彼らが出演したミュージカル映画『巴里のアメリカ人』そして『ウエスト・サイド・ストーリー』を観てから、再度『ロシュフォールの恋人たち』を観ると、いかにドゥミ監督がアメリカン・コミディーのエスプリ満載で本作を作ったかということが、改めて確認できると思います。
『双子姉妹の歌(原題:Chanson des jumelles)』の出だしを覚えて一緒に歌いましょう!
2017年には『ロシュフォールの恋人たち』の50周年記念として、フランス各地でイベントが行われ、パリでもパリ市庁舎前で「フラッシュ・モブ」が行われました。
そんなフランス人なら誰でも知っている曲、『双子姉妹の歌』の出だしを覚えて一緒に歌ってみましょう。
Nous sommes deux sœurs jumelles
(私たちは双子の姉妹)Nées sous le signe des Gémeaux
(ふたご座生まれ)Mi fa sol la, mi ré
(ミ、ファ、ソ、ミ、レ)Ré mi fa sol sol sol ré do
(レ、ミ、フ、ソ、ソ、レ、ド)Toutes deux demoiselles
(二人の若い娘は)Ayant eu des amants très tôt
(早くに恋人ができたの)Mi fa sol la, mi ré
(ミ、ファ・ソ・ミ・レ)Ré mi fa sol sol sol ré do
(レ、ミ、フ、ソ、ソ、レ、ド)出典:映画『ロシュフォールの恋人たち』
ドゥミ監督は歌詞の内容よりも、「アレクサンドラン」という十二音綴(一行が6音節の二行で一区切りになっており、一区切り置きに韻を踏む)の様式に重点を置き、リズム感良く歌えるように歌詞を書いたそうです。
確かに「jumelles」と「demoiselles」、「Gémeaux」と「tôt」と韻を踏んでいて面白いですね。
歌詞全体を見ても、簡単で発音しやすい単語が使われているので、フランス語の発音勉強には役立ちます。
ちなみに、なぜ「ソ」が「sol」となっているのか調べると、ドレミの元となっているラテン語の聖歌(グレゴリオ聖歌)の歌詞「Solve(解く、緩める)」からきているそうです。
まとめ
「運命の人探し」をテーマにした映画『ロシュフォールの恋人たち』は、フレンチ・ミュージカル映画の傑作と名高いです。
どこにでもあるテーマを、ドゥミ・ルグラン・マジックによって、音楽も映像もおしゃれでユーモアたっぷりに描写されています。
アメリカン・ミュージカルへのオマージュである『ロシュフォールの恋人たち』に大きな影響を受けて、アメリカ映画『ラ・ラ・ランド』(2016年アカデミー賞作品賞受賞)のオープニングが作られたと思うと、とても感慨深いものがあります。
ジーン・ケリー、ジョージ・チャキリス、グローバー・ギルモアとの共演は、本編でしか見ることができません。
記事でご紹介した『双子姉妹の歌』を始め、作中の曲はどの歌も覚えやすい上、歌詞が比較的難しくないので、フランス語の学習には最適です。
サントラのCDがあるので、くり返し聞いてリスニングの練習に活用するのもおすすめです。
この映画の成功により、監督ジャック・ドゥミ(Jacques Demy)、音楽ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)、主演カトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve)とジャック・ペラン(Jacques Perrin)という組み合わせは、3年後に制作される『ロバと王女』に繋がっていきます。
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今見ても古さを感じさせない『ロシュフォールの恋人たち』は、誰とでも一緒に見ることができる時代を超えたおすすめエンターテーメント映画です。

フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。