『クラブ・ドロテ(Club Dorothée)』世代に送る、フランス人によるフランス人のための『シティーハンター』!
2018年に公開されたアニメ『シティハンター』の実写版『シティーハンター:THE MOVIE 史上最香のミッション』をご紹介…と言いたいところですが、ここではあえてフランス版アニメ『ニッキー・ラルソン』の実写版『ニッキー・ラルソンとキューピッドの香水(Nicky Larson et le Parfum de Cupidon)』としてご紹介させていただきます!

この記事では映画のあらすじの他に、本作がフランスで大ヒットした理由を理解するために知っておくべき子ども向け番組『クラブ・ドロテ』について一緒にみていきましょう。
フランスで大ヒット!『シティーハンター』実写版、映画『ニッキー・ラルソンとキューピッドの香水』のあらすじ
某高層ビル街のアパートに住む、闇の世界では名の知れた探偵兼ボディーガードのニッキー・ラルソンと相棒のローラ・マルコニ(Laura Marconi)。
ある日、掲示板にXYZのメッセージを残した依頼者と公園で待ち合わせをした二人は、ワイワイとサッカーを楽しんでいる子どもたちを見ながら、ふと一年前の「ある事件」を思い出します。
ちょうど一年前のこの日は、ニッキーの親友であり仕事の相棒であったローラの実兄トニー・マルコニ(Tony Marconi)が、何者かによって殺害された日だったのです。
そんな想いにふけっている二人の前に、依頼者であるドミニク・ルテリエ(Dominique Lettelier)という中年の男性が現れます。
彼の依頼内容は、科学者であった亡き父親が発明した「キューピッドの香水」を警護してほしいとのこと。
その香水はシュシュッと吹きかけると、近づいた相手を必ず恋に落ちさせてしまうという秘薬。
ただし、48時間以内に「解毒剤」を使わなければ、永遠に人を惹きつけ続けてしまうため、悪用されると大変危険であると判断したドミニクは、ニッキーに連絡を取ったのでした。
「美人の依頼しか受けない」と決めているニッキーは、この「疑わしい」依頼にあまり乗り気ではなく、ローラに香水をバンバン大量にふりかけ、彼らから少し離れたところで日焼けをしながら横になっているイケメンを指し、「あの男をお前が落とせたら、この依頼を受ける」言い放ちます。
依頼された以上、何とかニッキーに仕事をしてもらいたいローラは席を離れた瞬間、ドカーンと激しい爆発がおこります。
そして、爆風により倒れて目を離した隙に、香水の入ったアタッシュケースがバイクに乗った男に盗まれてしまいました。
ニッキーは香水を奪い返すべく逃げた犯人を追って、美容整形外科クリニックへ潜入。
そこで、なんとアタッシュケースを持った旧友で凄腕のスナイパー「マムット」に再会することに!
果たしてニッキーは盗まれたキューピッドの香水を無事に取り戻せるのか?!
日本アニメ文化を根付かせた伝説の子ども向け番組「クラブ・ドロテ」
皆さんは、フランスが日本に次ぐ世界第2位の「マンガ市場の国」ということをご存知でしょうか?
日本マンガ・アニメがここまでフランス人に受け入れられているのには、ある子ども向け番組の存在があったからなのです。
それが1987年から1997年まで続いた、伝説の子ども向け番組「クラブ・ドロテ」。
この番組は、全盛期にはなんと月曜日から日曜日まで、毎日平均8時間ほどのプログラムで放送されていました。

それまでも日本アニメはいくつかテレビ放送されていましたが、1987年に「クラブ・ドロテ」で紹介された少女漫画「キャンディー・キャンディー」の大ヒットにより、子どもたちの間で「日本アニメブーム」が起こります。
その人気は番組制作会社の想像を超えてしまったため、視聴率を上げるために内容を確認せずに、日本からアニメをドンドン輸入し放映するようになっていったのです。
「子どもにとって不適切なシーン」がカット
1989年、当時社会党の一議員であったシゴレーヌ・ロワイアル(Ségolène Royal)が「日本のアニメは子どもたちに悪影響を及ぼす」と発言したことで、「子どもにとって不適切なシーン」が不自然にカットされるという事態に発展。
しかし、カットされればされるほど、子どもたちの間で「どんなシーンがカットされたか」探しが白熱していき、皮肉にもさらなる日本のアニメ人気に繋がっていくことに。
フランス人の友達は口を揃えて「子どもの時に見た『ニッキー・ラルソン』は、ニッキーの興奮するシーン(通称、les scènes de mokkori)や人が撃たれるシーンが全部カットされていたから、トータル15分で終わるエピソードもあってストーリーがよくわからなかった!」とのこと。
2021年でも日本マンガ・アニメ人気は健在!
この番組を通して日本アニメで育った子どもたちが、世界最大の日本イベント「ジャパンエキスポ」や日本の漫画専門出版社、日本アニメを紹介する雑誌など、日本マンガ・アニメ文化をビジネスとして確立していったことで、2021年現在まで続くフランスの日本ブームが健在なのです。

80、90年代のフランス人の子どもたちにとって「日本」はあまり馴染みがなかったからというのが理由から、「クラブ・ドロテ」で放映されていたアニメの特徴は、主題歌、話の舞台、登場人物の名前などが、全てフランス人に分かりやすいように変更されていること。
例えば、80年代中盤のにバレーアニメ『アタッカーYOU!』が『Jeanne et Serge』になっています。

フランス版のアニメ主題歌
「クラブ・ドロテ」で放映されていたフランス語バージョンのアニメソングをご紹介します。
これを知っていれば、30代以上のフランス人との会話が盛り上がります!
ニッキー・ラルソン
主題歌を歌っているジャン=ポール・セザリ(Jean-Paul Césari)は、映画『ニッキー・ラルソンとキューピッドの香水』後半のパーティーシーンで歌手としてゲスト出演しています。

カタクリおすすめ!『Juliette, je t’aime』
アニメ『めぞん一刻』は、フランス版では『Juliette, je t’aime.』というタイトルで放送されました。
音無響子が「ジュリエット(Juliette)」、五代裕作が「ユーゴ(Hugo)」、そして一刻館が「ミモザ館(le pension de Mimosa)」と、登場人物も設定もフランス!
ツッコミどころ満載の動画ですが、歌詞は分かりやすく本当に可愛いので是非聞いてみてください。
番外編
あの『北斗の拳』はフランス語タイトルで『Ken le Survivant』。
この主題歌、歌詞も曲もなんだか予想外の方向に進み、手がつけられません……一見の価値アリです!
その他の番組は「クラブ・ドロテ」公式チャンネルからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/channel/UCEJbKfzHlnszu5_dfeDhY5w
まとめ
2018年、映画評論家の予想を遥かに超えて、フランスで大ヒットとなった実写映画版『シティーハンター:THE MOVIE 史上最香のミッション』こと『ニッキー・ラルソンとキューピッドの香水』は、80年代後半から90年代にかけてカルト的人気を博した『クラブ・ドロテ』世代の監督フィリップ・ラショーによって製作されました。
大ヒットの要因は、登場人物やストーリ、舞台まで忠実に『ニッキー・ラルソン』の実写映画版として作られていること、そして30代から40代までの『クラブ・ドロテ』世代の心を揺さぶる小ネタ(例えば、『キャプテン翼』『ドラゴンボール』『らんま1/2』など)ふんだん盛り込まれていることにあります。
記事内で紹介させていただいたフランス版のアニメ主題歌は、子どものために作られた歌詞なので、わかりやすくフランス語の学習にオススメです。
本作は『ニッキー・ラルソン』の実写版として是非ご覧ください!

フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。