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フランス語は、言葉使いによって「その人の国語力が分かる」というくらい、同じ意味のフレーズにも何通りかの言い方や表現があります。
「元気ですか?」を意味する表現だけでも、"Ça va?","Comment vas-tu?", "Comment allez-vous?", "Tu es en forme?", "Ça roule?"等、多岐に渡ります。
日本語の敬語とタメ口のように、相手によって主語や動詞を変える必要がある場合、「どうやって使い分けるのが自然なのか」という疑問が出てきたりしませんか?
シーンや相手に合わせた口調の違い、またはビジネス的な言葉使いを自然な形で学ぶということは、現地の企業に勤めでもしない限り、教材や学校のみで学ぶことは簡単ではありません。
今回ご紹介するドラマは、"言葉"について学びどころが沢山の"お仕事ドラマ"、Netflixオリジナル作品の『エージェント物語(原題:Dix pour cent)』です。
Netflixオリジナル作品は、音声・字幕共にフランス語選択ができるので、何と言ったのかを答え合わせしながら作品を鑑賞することができる点が特におすすめです。
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Netflixドラマ『エージェント物語』のあらすじ
舞台はフランス、パリのど真ん中に事務所を構える"ASK"という芸能事務所です。
華やかなフランス芸能界を支えるパリの一流芸能事務所であるASKには、日々、所属タレント達が様々な悩み事や問題を抱えてやってきます。
担当のエージェントたちはその問題解決のため、時には彼らを励まし、共に戦力を練りながら事務所の報酬である10分の1(dix pour cent=タレントの契約金のうちの1割がエージェントに入る仕組み)を獲得すべく奮闘しています。
各話完結型で、それぞれに実際の俳優や女優たちが本人役として出演しているところも見どころです。
最新シーズンの配信が2021年1月より開始された大人気シリーズで、シーズンを通して事務所の経営危機を乗り越えていくというドキュメンタリー的な要素も備えています。
お堅い社会派というよりも、笑いもあり、家族や恋愛関連の"フランスらしい内容"も交えながら決して下品になることなく、キャラクター設定、展開の速さや仕掛けが練り上げられた上品な作品です。
Netflixドラマ『エージェント物語』の見どころ
このドラマの見どころは、やはり本物のフランス人俳優・女優たちが、本人役として出演しているところです。
シーズン1だけでも、セシル・ドゥ・フランス(Cécile De France)、ナタリー・バイ(Nathalie Baye)とローラ・スメット(Laura Smet)、フランソワ・ベルレアン(François Berléand)などの豪華キャストが登場します。
雰囲気としては日本でもリメイクされたアメリカのドラマ、『スーツ(原題:suit)』に近いものがありますね。
オシャレなオフィスを中心に物語は展開されていきますが、エージェント役の俳優陣の演技がとてもリアルなので、うっかりドラマであることを忘れて観てしまいます。
本物の俳優・女優たちも本人役として出演しているのにも関わらず、美容整形や母娘の本音、夫婦間のいざこざなど設定も際どいものが多く、実際はどうなのかと色々な想像を掻き立てられるストーリーです。
また、「こんなに一生懸命に働いているフランス人は見たことがない!」と思うくらい、エージェント達は私生活を投げ打って仕事をしています。
もちろん、彼らも俳優としてその役を演じているのですが、人間味あふれるそれぞれのキャラクターは観ていながらも応援したくなる魅力を感じざるおえません。
時代と共に変化し、進化するフランス語の魅力
フランス語を勉強し始めて、「単純過去(le Passé Simple)」を学んだ時は、「なぜもう使うことのない文法を学ぶ必要があるのだろう。」と不思議に思いました。
フランス語は生きた言語と言われ、年々新しい言葉が生まれていきます(おそらく消滅してもいます)。
2020年初めに突如、世界中を混乱に陥れたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)も、「男性名詞(Le)なのか女性名詞(La)なのか」と数ヶ月の間フランス人を悩ませていましたが、後に、COVID-19は女性名詞(La)とする見解を学術機関アカデミー・フランセーズが発表しています。
ちなみにアカデミー・フランセーズとは、フランス語を守りつつ、規則や辞書に入る単語を決めたり、英語など他言語の脅威からもフランス語を守る役割を担う機関です。
このように、アカデミー・フランセーズから正式に認められる以前から、巷で使われている新しいフランス語を少し紹介していきます。
フランス語における名詞の動詞化
シーズン1第3話の中で、母娘(ナタリー・バイとローラ・スメット)の共演をいかに阻止するかという戦略を練った際、娘のローラにブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)のように振る舞う(ワガママで小悪魔な性格)のはどうかと担当エージェントの助手が助言します。
彼女は上手にバルドー風に振る舞うことに成功し、オファーは拒否されるのですが、結果としてこの計画は失敗してしまうのです。
以下、計画に意味がなかったと嘆く担当エージェントと、自分のせいで失敗したのではと不安になった助手との会話です。
Je suis viré?
(僕はクビですか?)Oui. Je suis désolé.
(悪いな。)Je suis vraiment viré?
(本当にクビですか?)Mais non, je te BARDOTTE.
(もちろん違うよ。バルドーしただけだよ。=わざと意地悪にしただけ)出典:『エージェント物語』
もちろん"bardotter"という動詞は存在しておらず、バルドー風に振る舞っただけ、というのをそれっぽく動詞化しています。
このセリフを聞いて、2019年頃にアメリカ国内で大人気となった、断捨離の達人である近藤麻理恵さんをそのまま動詞にした「I’m konmaring.(断捨離している。)」を思い出しました。
「バルドーする」という動詞はこのドラマの演出ですが、名詞が動詞として機能している例は実際にフランス国内でもいくつかあります。
例えば、私たちもよく使うGoogleです。
分からない言葉や、行きたいお店を調べる時など、「ググる」という言い方はしませんか?
「ググる」はフランス語でも「googliser/googler」として日常的に使用されています。
「googliser/googler」の他にも、以下のようなものがあります。
日本語 | フランス語 |
ググる | googliser/googler |
Zoomする | zoomer/se zoomer |
Skypeする | skyper/se skyper |
Tweetする |
また、mec(=男友達)をman、サッカーのシュートを決める時はshooter、ファッションウィークでのキャットウォークはそのままcatwalk、to impactはimpacter(=〜に衝撃を与える)など、日本で言うところの"横文字"が、かつて英語が通じないと言われ世界中の観光客たちを困らせたパリの街中で大流行しています。
近年フランスの若者の間では、英語を使うことが「カッコイイ」という認識となっており、多くの英単語がフランス語化しているようです。
まとめ
このドラマシリーズは舞台がパリというだけあって、パリ市内のカフェや地下鉄、セーヌ川沿いなど、ドラマを観ながらパリ観光をしている気分にもなれます。
パリは滅多なことでは建物や道路などが変わることがないため、「ここはどこら辺だろう。」と、思い出を反芻しながら物語を進めていくのも一つの楽しみ方です。
言葉は時代や時世と共に変化していきますが、いつ見ても同じ風景のあるパリの街並みや、今も昔も、街中でも映像の中でさえも、ひっきりなしに煙草を吸っているフランス人の「変わらない姿」は一種の安心感を抱きました。
ドラマは映画とはまた異なった観点からフレンチカルチャーを知ることができるので、「気軽な情報収集ツール」のようにフランスの"今"を探索してみてはいかがでしょうか。