フランス映画『Tout s'est bien passé』のあらすじと、世界の「安楽死」認可国とは

tout s'est bien passé

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人生の終わりを決めることは罪なのか?

突然ですが質問です。

みなさんは「安楽死」について考えたことはありますか?

こんにちは!パリ在住のカタクリです!

「尊厳死」という言葉と同じかな?と思ってしまうかもしれませんが、意味は異なります。

前者は、患者本人の希望で医師が薬物投与、もしくは治療をやめるとい言った方法で、後者は、完治の見込みが難しい患者に対し、本人と家族の同意のもと過剰な延命治療を行わず、緩和ケアを行いつつ自然な経過に任せた方法のことを指すそうです。

2023年現在、日本では少子高齢化が加速し、安楽死や尊厳死についての論議が活発になっています。

そんなだからこそ見ていただきたいフランス映画、それが『Tout s'est bien passé(読み方:トゥ・セ・ビアン・パセ』です。

日本では2023年2月3日に劇場公開されました。

監督は、日本でも有名なフランソワ・オゾン(François Ozon)!

2018年に製作した『グレース・オブ・ゴッド 告発の時(Grâce à Dieu)』に続き、実話を元にした本作品は、世界のタブーである「人生の終わりを自分で決める」をテーマにした問題作です。

オゾン監督、今回もかなり攻めています!

主演は、倒れた父親の面倒を見る次女、小説家エマニュエル(Emmanuèle)を演じたのはフランスで最も人気のある女優の一人、ソフィー・マルソー(Sophie Marceau)

そして「安楽死」を願うアンドレ(André)には、フランスで社会現象を起こした大ヒット作『Tanguy(日本未公開)』で主人公の父親ポールを演じたアンドレ・デュソリエ(André Dussollier)

フランス映画『Tanguy』については、こちらの記事をチェック!

それでは早速、映画『Tout s'est bien passé』のあらすじと、世界の安楽死認可国を紹介します!

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父親の最後の望みを受け入れるべきか?フランス映画『Tout s'est bien passé』のあらすじ

9月15日、パリ。

小説家のエマニュエルは、その日も自宅でパチパチとパソコンを打ちながら仕事をしていました。

しばらくすると、姉のパスカル(Pascale)から電話がかかってきます。

慌ててバッと部屋を飛び出して向かった先は、緊急指定病院。

病院内に入ると、そこには脳卒中でバタッと倒れ、運び込まれたばかりの父親アンドレがMRI検査を受けていました。

検査が終了ししばらくしてから姉妹が病室へ向かうと、そこにはウゥウゥと唸りながら話すこともままらない父親の姿があったのです。

翌日、アルツハイマーで苦しむ母親を連れ、アンドレの元を訪れる姉妹。

父親と母親の老いていく現実を突きつけられたエマニュエルパスカルは、ショックを隠せないまま、公証人や弁護士に連絡し遺産相続の手続きを開始。

エマニュエルが担当医と面談しこれ以上良くならないことを告げられたその日、アンドレからボソッと「もう生きていたくない」と言われるのですが……

誰にでも起こる「老い」と「死」を隠すことなく描いた衝撃作『Tout s'est bien passé』の予告編はこちらでご覧いただけます!

世界ではどうなっている?安楽死認可国を紹介

世界のタブーである安楽死をテーマに、フランスで大ヒットした映画『Tout s'est bien passé』

2023年現在、日本同様、フランスでも安楽死・尊厳死は認可されていません

安楽死の権利を主張する団体「ADMD(l’Association pour le Droit de Mourir dans la Dignité)」が2022年2月に実施した調査によると、アンケートに答えたフランス人の94%が安楽死に関する法案を支持しているという結果が出ています。

高齢化が進む先進国では、避けられないテーマになってきました

世界ではどうなっているのでしょうか?

安楽死認可国について調べてみました。

ヨーロッパ諸国

本作品でも扱われていたスイスの処置方法は、1942年に法律で可決されました。

本作品でもアンドレがスイスに渡っていきました

5つの非営利団体が仲介となり、安楽死を希望する本人や家族との面談、担当医の診断書を含めた必要書類など、時間をかけて行われます。

2022年9月に、あのジャン=リュック・ゴダール監督(Jean-Luc Godard)が、スイスで安楽死を選択したのが記憶に新しいところです

2001年のオランダを皮切りに、2002年にベルギー、2009年にルクセンブルク、2019年にイタリア、2021年にはポルトガルとスペイン、そして2022年からオーストリアでも合法化されました。

キリスト・カトリック教徒が多いヨーロッパでもとても難しいテーマです。

しかし、高齢者、癌患者、そのほかの難病が増え自ら命を絶つ人が増加する中、自分自身で「人生の終わりを決める」権利を主張する声が高まっているのも事実です。

日本でも話題となったパラリンピックのベルギー代表マリーケ・フェルフールト(Marieke Vervoort)も、長年の治療の末、自ら旅立つタイミングを選びました

その他の国

カナダ、全米(カリフォルニア州、ワシントン州、オレゴン州など合わせて10州)、南米のコロンビア、オーストラリア(ビクトリア州、クイーンズランド州など合わせて5州)が既に、安楽死を認可しています。

参考サイト

まとめ

2021年に発表されたフランス映画『Tout s'est bien passé』

高齢化が加速するフランスで未だタブー視されている安楽死問題に真っ向から問いかけている内容で、2021年カンヌ映画祭コンペティション部門で上映されました。

日本でも人気のオゾン監督の渾身の作品です!

フランス語だけでなく、フランス社会が抱えている問題を学ぶことができる作品に仕上がっています。

主人公エマニュエルと同じ世代、4、50代の方に特に見ていただきたいフランス映画の一つです。

アンドレを演じたアンドレ・デュソリエのインタビューはこちら!
同じく「安楽死」をテーマにした映画『92歳のパリジェンヌ』も、ぜひ合わせてご覧ください!

おまけ

本作品の原作を手かけたのは、小説家エマニュエル・ベンハイム(Emmanuèle Bernheim)

エマニュエル・ベンハイムは脚本家として、オゾン監督と何度もコラボしています!

2017年、61歳という若さで他界した彼女の遺作『Tout s'est bien passé』は、彼女の経験を描いたノンフィクション小説です。

作家自身が作品に対する思いを語った映像もあわせてどうぞ!

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