フランス映画『王妃マルゴ』のあらすじがよく分かるフランスの歴史と登場人物紹介

フランスの中世歴史物語『王妃マルゴ(原題:La Reine Margot』。

この映画は16世紀の宗教戦争の真っただ中にあった末期のヴァロア朝を題材に、ノンフィクション風に描いています。

「サン・バルテルミの虐殺」の前後を描いたもので、カトリックとプロテスタントの争いで人物の関係がちょっとわかりづらいところがあります。

そこでストーリーがより理解しやすくなるように、あらすじとキャストの紹介に加え、『王妃マルゴ』に関係する部分のヴァロア朝の家系とフランスの歴史について、簡潔にご説明致します。

アンリ(Henri)」の名前がたくさん出てきますので、ご注意ください。

「この映画を観て、中世のフランスの歴史に興味を持った」という声も聞く『王妃マルゴ』。

ぜひ、お楽しみください。

映画『王妃マルゴ』の概要

王妃マルゴ』はアレクサンドル・デュマ(Alexandre Dumas)の小説をもとに、莫大な製作費が評判になった歴史物語の大作です。

キャストも豪華で、カンヌ国際映画祭では「審査員賞」を受賞しました。

中世の宗教対立の中でも、最も象徴的な「サン・バルテルミの虐殺」の前後を通して、王妃マルゴの壮絶な生き方を描いています。

監督は『インティマシー/親密』のパトリス・シェロー(Patrice Chereau)です。

映画『王妃マルゴ』のあらすじと登場人物

16世紀の宗教戦争で混乱していたフランスで、性に奔放で知的で美しい王女マルゴはプロテスタントのナヴァル公アンリと政略結婚させられます。

冒頭の結婚式では緋色で華麗な刺繍が施されたウェディングドレス姿のマルゴが登場し、バロック音楽とともに中世の世界へ案内してくれます

当時はカトリック(旧教徒)とプロテスタント(新教徒:ユグノー派)の間で対立が起こり、ユグノー戦争が起こっていました。

マルゴの母后であるカトリーヌは、マルゴの兄のシャルル9世の摂政となって実権を握り、事態の打開を図ろうとしました。

しかし、1572年、結婚式のお祝いムードがやまないうちに、カトリック教徒がプロテスタント教徒を大量に虐殺しました。

のちに「サン・バルテルミの虐殺」(Massacre de la Saint-Barthelemy)と呼ばれ、宗教戦争は尾を引くことになりました。

乱れた性、陰謀、虐殺シーンなどがフランス映画ならではの、赤裸々な描写によってかなり強烈に描かれており、ちょっと驚かれるかも知れません。

でも、フランスの歴史を知る良いきっかけになると思いますので、ご覧になってみてください。

マルゴ(Margo)を演じるキャスト:イザベル・アジャーニ(Isabelle Adjani)

アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの三女で、奔放な「マルゴ」をイザベル・アジャーニ(Isabelle Adjani)は妖艶に演じています。

「マルゴ」の正式な名前はマルグリット・ド・フランス(Marguerite de France)

またはマルグリット・ド・ヴァロワ(Maruguerite de Valois)です。

『王妃マルゴ』でマルゴが結婚した時の年齢は、19才でしたが、実際に演じたイザベル・アジャーニは38歳でした。

筆者は後でこのことを知って、たいそう驚きました。

イザベル・アジャーニは全く違和感なく、マルゴを演じていたからです。

イザベルの美しさは際立っており、知的で淫乱なマルゴにぴったりの配役でした。

シャルル9世(Charles Ⅸ)を演じるキャスト:ユーグ・アングラード(Jean-Hugues Anglade)

病弱なシャルル9世の役をユーグ・アングラード(Jean-Hugues Anglade)は、鬼気迫る演技で好演しました。

シャルル9世は10歳で即位しましたが、病気がちで何度も発作を起こし、そのたびに妹のマルゴを頼ります。

アンジュー公アンリ(duc d’Anjou :後のアンリ3世)を演じるキャスト:パスカル・グレゴリー(Pascal Greggory)

身体の弱いシャルル9世と違って、野心的な王子で、ヴァロア朝最後のフランス王になります。

全くモラルがなく、母と組んで陰謀を張り巡らせるアンジュー公アンリをパスカル・グレゴリー(Pascal Greggory)は野性的に演じています。

ナヴァル王アンリ(Henri de Navarre)を演じるキャスト:ダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)

後のアンリ4世で、マルゴと愛のない政略結婚をさせられます。

常に暗殺の危機にさらされ、そのたびに改宗します。

サン・バルテルミの虐殺(1572年)後にはカトリックに改宗し、そののち、またプロテスタントに復帰します。

ダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)は「愛と宿命の泉」で田舎の青年を演じましたが、今回は全く違うイメージでナヴァル王アンリに臨みました。

ラ・モール伯爵(La Mole)を演じるキャスト:ヴァンサン・ペレーズ (Vincent Perez)

マルゴは結婚初夜に夫と過ごさず城外をさまよって、偶然出会ったラ・モールと一夜を過ごします。

ラ ・モールはプロテスタントだったために、サン・バルテルミの虐殺時に襲われて生死をさまよいますが、マルゴと再会したのちは愛人となり、マルゴを救うために奔走します。

マルゴを虜にしたラ・モール伯爵を、若いヴァンサン・ペレーズ(Vincent Perez)が文字通り体を張って熱演しています。

カトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de Medicis)を演じるキャスト:ヴィルナ・リージ(Viruna Lisi)

政略結婚でフランス王アンリ2世の王妃になったイタリア人で、10人の子供を産みました。

夫の亡きあと、シャルル9世が即位してから実権を握ります。

数々の陰謀を画策したと言われて歴史上では悪女のイメージがありますが、フランスにフォークやナイフを持ち込んだのはカトリーヌではないかと言われており、文化、芸術でも多大な貢献をしていたようです。

カトリーヌ・ド・メディシスを演じたヴィルナ・リージ(Viruna Lisi)はイタリアの大女優で、禍々しくて目をそむけたくなるような悪女部分を最大限に引き出す一方で、母性故に苦しむ時は観客が同情を寄せたくなるような演技を披露し、大女優の貫録を見せました。

役柄もイタリア人で、彼女が話すフランス語は非常にイタリア訛りが強くなっていますので、ご注目ください。

アンリエット・ド・ヌヴェール(Henriette de Nevers)を演じるキャスト:ドミニク・ブラン(Dominique Blanc)

マルゴの侍女であると同時に友人的な存在で、ハレンチな遊びをマルゴと一緒に繰り広げます。モラルも何もありません。

しかし、マルゴに忠実で、最後まで裏切ることなく尽くします。

ドミニク・ブラン(Dominique Blanc)演じるアンリエットの存在感は大きく、単なる脇役の域を超えていました。

『王妃マルゴ』の背景となったフランスの歴史

王妃マルゴ』は、全体を通して画面がほの暗いです。

恐らく監督は、中世のリアリティを出すために狙ったのだと思いますが、実は、筆者は初めて観た時、出演者が区別できなくなり、ストーリーがこんがらがってわからなくなってしまいました。

男性が同じような容貌(長い髪と髭)だった上に、同じ名前が出て来て人物相関図が頭に入らず、単に「性的描写の激しい愛憎歴史物語」で終わってしまったのです。

しかし、歴史を頭に入れて再度見ると、なかなか面白いですよ。

そこで、これから初めてご覧になられる方のために、ちょっと『王妃マルゴ』用に歴史を整理して、簡単に時系列でご説明します。

<ヴァロア朝(カトリック)>

アンリ2世(事故死40歳)=カトリーヌ・ド・メディシス(イタリア人)政略結婚

長男・フランソワ2世(病死16歳)

三男・シャルル9世(病死23歳)※次男は夭逝

※1572年マルゴとナヴァル公アンリ結婚し、数日後「サン・バルテルミの虐殺」が勃発。

カトリーヌたちは、シャルル9世がプロテスタントのコリーニ提督を慕っていたために暗殺を企みますが、失敗してしまいます。

プロテスタントの逆襲を恐れたカトリーヌたちは先手を打って、サン・バルテルミの虐殺を実行しました。

※サン・モール伯爵

マルゴの愛人になったプロテスタントのサン・モール伯爵は、父親の形見の狩猟の本を町で売ります。この本がのちに陰謀に使われます。

四男・アンリ3世:元アンジュー公アンリ(暗殺37歳)

※マルゴはアンリ3世の次に生まれています。

<ブルボン朝>

アンリ4世:ナヴァル王アンリ(暗殺56歳)

マルゴと結婚した時はプロテスタント、サン・バルテルミの虐殺のあとはカトリックに、幽閉から脱出した後はまたプロテスタントに改宗、フランス王に即位後はカトリックの民衆に認められなかったので、最終的にはまたカトリックに改宗しました。

王妃マルゴ』ではこの歴史の中のシャルル9世の時代に起こった「サン・バルテルミの虐殺」から2年間の出来事が描かれています。

まとめ

王妃マルゴ』はかなり、ショッキングな映像がリアルに描かれています。

死体の扱い方、退廃的なフランスの淫靡な性生活模様は、日本人の立場で観ると理解不能に陥るかも知れません。

虐殺シーン以降は生臭ささが漂いそうな血みどろの映像が続き、陰謀に巻き込まれるマルゴが血の涙を流します。

その中でちょっと救いがあるのは、ナヴァル公アンリとマルゴの関係です。

政略結婚で愛はなかったものの、二人の間には同志のような信頼関係がありました。

フランス王室の生活と聞くと、ブルボン王朝のベルサイユ宮殿の華やかなイメージが最初に浮かぶと思いますが、『王妃マルゴ』はラストシーンまで生臭ささが絶えません。

当時の評価にもあったように、途中で話が終わってしまった感じは否めませんが、イザベル・アジャーニの、ある意味で不気味な美しさに気を取られているうちに終わってしまう感じなので、筆者はあまり気になりませんでした。

また、シェロー監督がヴァロア朝時代の王侯貴族の実態を恥部までつまびらかに見せたことで中世時代の陰部が浮かび上がり、普段、欧州の中世の歴史に馴染みのない私たちのようなアジア人には新鮮にうつるかも知れません。

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