映画『スパニッシュ・アパートメント』のあらすじと、すぐに使えるフランス語のスラングや俗語紹介

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フランス語の映画やドラマ、実際のフランス人との会話の時に、話し方や相槌で学習用テキストでは聞いたことのないような表現、言葉を耳にすることはありませんか?

口語のフランス語でもキレイなフレーズはフランス語教室で習得できても、スラングや俗語を教えてくれるところは少ないです。

とはいえ、実際の日常会話ではスラングや俗語が多用されていますので、日常生活でフランス語を活用したいのであれば、スラングや俗語の習得は避けて通れません

そこでこの記事では、実際の日常会話で役立つフレーズが満載の映画『スパニッシュアパートメント(L'Auberge Espagnole)』のあらすじと、スラングや俗語についてご紹介します。

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『スパニッシュアパートメント』のあらすじ

2002年に公開された映画『スパニッシュアパートメント』は、監督セドリック・クラピッシュが手掛けた、3部作の1作目のコメディ要素がちりばめられた青春ドラマです。

パリに住むフランス人のグザヴィエは、卒業を来年に控えた25歳の大学院生。

作家を夢見ていた彼だが、現実を受け入れ就職のため父の知人の勧めにより、恋人を残しスペインのバルセロナへ1年間留学することを決意します。

バルセロナに着いたグザヴィエは、国籍もバラバラな男女7人とルームシェアをすることを決め、共同生活を送ることになります。

恋人との遠距離恋愛、国籍・性別の違うルームメイトとの生活、異国の地での出来事がどのように彼を刺激し成長していくのか?

グザヴィエの留学生活は始まった……。

『スパニッシュアパートメント』のキャスト、監督

監督(Réalisé par) セドリック・クラピッシュ(Cédric Klapisch)
出演(Avec) ロマン・デュリス(Romain Duris)
オドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)
ジュディット・ゴドレーシュ(Judith Godrèche)
セシル・ドゥ・フランス(Cécile de France)

 

『スパニッシュアパートメント』の監督と主演俳優は名コンビの2人

監督のセドリック・クラピッシュは、パリやニューヨークの大学で映画製作を学び、96年制作の『猫が行方不明』ではベルリン国際映画祭の映画批評家協会賞を受賞するなど、フランスを代表する名監督です。

主演グザヴィエ役のロマン・デュリスは、学生の時にセドリック・クラピッシュ監督に出会います

1995年の映画『青春シンドローム』で俳優デビューした後多くの映画に出演し、どんな役でもこなす、フランス映画に欠かせない名優です。

ロマン・デュリスはセドリック・クラピッシュ監督作品の常連で、数多くの映画に出演しています。

彼は正統派イケメンではない(あくまでも私見です)けど、魅力的で味があり、人の心を惹きつけるそんな俳優です。

特に笑った時の顔が可愛らしいところが、なんとも言えない魅力です。

そして映画『アメリ』で有名なオドレイ・トトゥが、主人公グザヴィエの恋人マルティーヌ役で出演しています。

『アメリ』のイメージが強い彼女ですが、今回は恋人との遠距離恋愛に悩む、ちょっと冴えない女性を演じているオドレイ・トトゥにも注目して観てください。

『スパニッシュアパートメント』映画の見どころとネタバレ

この映画の見どころは、フランス人・イタリア人・ドイツ人・スペイン人・ベルギー人・デンマーク人が住む、「ヨーロッパの縮図」のような、ごちゃまぜ共同生活を舞台に、「国籍、文化、アイデンティティとは何か?」をテーマに、時にはルームメイトと喧嘩したり、慰めあったりと、留学生活の酸いも甘いもたっぷり詰まった、「きっと留学したらこんな感じなのかなぁ?」と、まるで自分が留学生活を体験した気分になれるところです。

ステレオタイプな国民性や習慣の違いで起こる問題にも、ぜひ注目して観てみてください。

例えば、「スペイン人はこうだよね」とか「ドイツ人は皆こうでしょ」のように、国籍だけで国民性を一緒にしたり、フランス人はカエルを食べる習慣があるから「カエル(フロッグ)野郎」と言ったり、その国の習慣をからかったりするシーンが出てきます。

映画の中ではこれらのシーンをコミカルに描きながらも、そんな考え方はナンセンスである、というメッセージが込められているのではないでしょうか。

海外生活で経験する習慣の違い

海外で生活していると、習慣の違いに驚くことがたくさんあります。

次の話は、私がフランスで実際に経験した出来事です。

「どら焼き」をフランス人に説明していた時のこと、「Il y a de la pâte de haricots rouges(中に小豆のペーストが入っている)」と言ったところ、友人の表情が変わりました....。

アーモンドペーストと同じように、「あんこって小豆のペーストだよな……」と、最初は何がダメなのかわかりませんでした。

理由を聞くと、フランスでは豆を甘く煮て食べる習慣がなく、赤い豆という意味の「haricot rouge」と言うとチリコンカンなどで使われている豆を想像するようで、あの豆の甘いペーストがお菓子に入っているということで、微妙な顔をされてしまいました。

味見をした友人は「想像していたよりおいしい」と言って食べてくれました。

そして、「pate de haricots rouges(小豆のペースト)」より「confiture de haricots rouges(小豆のジャム)」と伝えた方が、フランス人には抵抗が少ないのかも、とアドバイスをもらい、それからは言い換えるようにしました。

このように、話し方や伝え方だけでなく、自分にとっては当たり前のことだとしても、他の国の人々にとっては同じ習慣とは限らないということを経験しました。

異なる価値観を受け入れ、そこから生まれる刺激的な経験はずっと心の中に残り続け、その後の人生に大きな影響を与えてくれるのではないでしょうか。

この映画の主人公グザヴィエは、私が海外で過ごした刺激的な日々を思い出させてくれました。

『スパニッシュアパートメント』で垣間見れるヨーロッパの留学制度とは

映画『スパニッシュアパートメント』を観ると、ヨーロッパの留学制度を知ることができます。

主人公のグザヴィエが使っている留学制度「エラスムス(ERASMUS)」、ヨーロッパの学生の多くはこの制度を利用し留学しています。

留学制度「エラスムス(ERASMUS)」とは?

エラスムス計画(The European Region Action Scheme for the Mobility of University Students : ERASMUS)とは、大学間で協定を結び、EU(欧州連合)加盟国の学生の移動を活発にすることが目的に計画された交換留学プログラムです。

EU圏の学生ではなくても、日本人の学生も参加できるエラスムス・プラス(Erasmus+)という制度もあり、留学だけでなくインターンシップなど、様々な方法で参加可能で、フランスやヨーロッパへ留学を考えている方には優れた制度です。

エラスムス計画とエラスムス・プラス制度について詳しくは、下記のリンクをご覧ください。

エラスムス計画についての参考リンク:文部科学省のウェブサイト

エラスムス・プラスについての参考リンク:駐日欧州連合代表部のウェブサイト

映画の中で使われているフランス語のフレーズや単語

『スパニッシュアパートメント』のフランス語の原題は『L’auberge espagnole(ロベルジュ エスパニョール)』です。

Auberge 1.(田舎の)旅館
2.(田舎風の)小ホテル
Espagnole 1.スペインの
2.スペイン人

『L’auberge espagnole』を直訳すると「スペインの宿」ですが、実はこれは慣用表現の一つで、日本語では「ごちゃまぜ」と意訳されることがあります。

なおInternauteによると、次のように説明されています。

Auberge où chacun amène son repas, au sens propre, elle devient une idée creuse où l’on ne voit que ce qu’on souhaite voir au sens figuré.

出典:Internaute

表現の起源は18世紀に遡るようです。

元々は当時のスペインの宿を評価する表現で、「提供される食事がなくて各自持参しなければならなかったか、提供されるものが悪い事」を意味していました。

そしてその「スペインの宿」が点在する街道では様々な人の往来があったため、比喩的な表現として「各自が異なる価値観で物事を捉え、各々が自身の好きなように物事を判断する」意味合いになったようです。

Expression datant du XVIIIe siècle, utilisée pour qualifier les mauvais services proposés par les auberges en Espagne (chacun doit y apporter sa propre nourriture par obligation ou parce que la nourriture des cuisiniers est mauvaise).

Les auberges se trouvant sur la route de St Jacques-de-Compostelle, on peut croiser de nombreuses personnes sur les routes et donc dans les tavernes.

C’est de là que vient son sens dérivé : chacun voit et interprète une chose comme il le sent.

出典:Internaute

この「ごちゃまぜ」という言葉、映画『スパニッシュアパートメント』にぴったりですね。

ちなみに、英語でのタイトルは「有り合わせの料理や、(参加者による)持ち寄り料理の食事会」を意味する『Pot Luck』です。

『スパニッシュアパートメント』で学べるフランス語のフレーズ&単語

ENA(École nationale d'administrationの略) 国立行政学院(エリート官僚養成学校)
CV(curriculum vitaeの略) 履歴書
LM(Lettre de motivationの略) 志望動機書、モチベーションレター
Carte d’étudiant 学生証
Déprimé うつ状態の
Sors de ta coquille ! 自分の殻(coquille)を破れ(sors)
Un coup de foudre 一目惚れ
C’est idiot それはバカげている
Draguer 誘惑する、ナンパする
Vieux jeu 時代おくれ、古くさい
Vertige めまい、目がくらむこと

『スパニッシュアパートメント』で学べる口語フランス語とスラング

Fac(facultéの略) 大学(faculté)の略で学生がよく使う(話し言葉)
Fric 金(話し言葉)
C’est pas grave
(Ce n’est pas grave)
大したことじゃないよ(話し言葉)
Boulot 仕事(話し言葉)
C’est génial ! それはすごいね!、それはおもしろい!(話し言葉)
Coucou ! 友達や家族とのくだけた挨拶に使う
意味は「やあ!」や「おーい!」(話し言葉)
※ 映画の中では「ただいま!」と訳しているが、フランスでは「ただいま」のような決まり言葉はないので、必ず帰宅時に「Coucou」を使うことはない
Ta gueule ! 黙れお前!(スラングで強い言い方)
C’est chiant こんなの最悪、うんざり(スラング)

『スパニッシュアパートメント』でクスっと笑える印象的なシーン

ルームシェア仲間のフランス語のわからない、イギリス人のウェンディが、グザヴィエの母親からかかってきた電話でのシーン

ウェンディ:Xavier n’est pas là… il va revenir ce soir…

グザヴィエは今いません、夜戻ってきます。

出典:映画『スパニッシュアパートメント』

とウェンディが紙に書かれているフランス語を片言で英語読みします。

すると、グザヴィエの母親がフランス語で

グザヴィエの母:Il est à la fac?

グザヴィエは大学に行ったのね?

出典:映画『スパニッシュアパートメント』

「fac(ファック)」 は 「faculté」の略で、大学という意味ですが、ウェンディは英語の「fuck」 と勘違いしてしまいます。

フランス語にも話し言葉やスラングがたくさんあり、よく使われるので、日常的に使うフランス語も覚えるとより楽しめるでしょう。

他にも例えば、「bosser(ボセ)」という単語は、「travailler(勉強する、働く)」のくだけた言い方です。

例文:「J’ai pas envie de bosser aujourd’hui.」(今日は勉強/仕事をする気になれないよ。)

『スパニッシュアパートメント』で心に残るシーン

フランスに戻ったグザヴィエが、パリの街を歩きながら自分に語りかけるシーン

J’étais un étranger parmi les étrangers…
Pourquoi j’étais là, je savais pas…
J’ai en général jamais su pourquoi j’étais là où j’étais…
Je dois être typique……

僕は観光客の中の異邦人….
なぜ行ったのか…?
理由は今も わからない…
僕は平凡な男……

出典:映画『スパニッシュアパートメント』

「Je dois être typique」の「typique」とは「典型的」なという意味ですが、映画の中では「僕は平凡な男」と訳されています

帰国したグザヴィエはどのような気持ちになったのでしょうか?

海外で生活し自国に帰って来たことのある方は、同じような想いをした経験があるのではないでしょうか。

私もフランスから自国へ戻った時、グザヴィエと同じ気持ちになりました。

ちなみに、このシーンはパリ18区で撮影されています。

18区はパリ市の北部にあり観光地で有名なモンマルトルの丘やサクレ・クール寺院があり、常に観光客で賑わっています。

この地区ではパリで「1番歩道が狭い通り」と言われている、オルシャン通り(Rue d'Orchampt)があり、映画にも登場します。

パリは散歩にぴったりの風情のある石畳の小道がたくさんあり、パリジャンは散歩して、カフェのテラスでお茶をするのが大好きです。

まとめ

舞台はバルセロナで、フランス語、英語、スペイン語が飛び交うのですが、主人公はフランス人のグザヴィエなので、物語はフランス語を中心にテンポ良く進んでいき気軽に楽しめる作品です。

また、この映画では話し言葉やスラングがたくさん出てくるので、そこにも注目して観るとフランス人の日常会話を学ぶことができます。

きっと留学したらこんな感じなのかなと、これから留学を考えている方、留学した経験がある方に特におすすめの作品です。

今回ご紹介した『スパニッシュアパートメント』の続編となる2作目『ロシアン・ドールズ』(2005年)では、社会人になったグザヴィエの恋愛模様が描かれています。

そして40歳となったグザヴィエの日々を映し出した2013年の『ニューヨークの巴里夫』で完結します。

グザヴィエと仲間たちの人生の行方はどうなるのか?

フランス映画界を代表する監督セドリック・クラピッシュの3部作、ぜひ完結編までご覧ください。

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