フランス映画『ココ・アヴァン・シャネル』のあらすじとココの名台詞

映画『マリーアントワネット』や漫画『ベルサイユの薔薇』に出てくる女性たちのファッションは、細く絞ったウエストとケーキの様に装飾されたドレスや帽子が印象的です。

一方、現代では、フランスの女性たちの装いはとてもシンプルです。

"パリジェンヌ・ルック"として、ベレー帽とボーダーのトップス、スキニーデニムにバレエシューズを身につけて、小脇に抱えたバゲットと共にパリの街を颯爽と歩く姿をファッション誌などで、紹介されているのを目にしたことはありませんか?

「デコレーションケーキを纏う日々から、どのようにシンプルな装いへと変化を遂げたのか?」、その時代の変わり目において"新しい女性像"を作り上げた一人の女性に着目したいと思います。

今回ご紹介する映画は、時代が変わっても尚、ハイブランドとして圧倒的な輝きを持ち続けているシャネルの創始者、ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)にまつわる物語、『ココ・アヴァン・シャネル(原題:Coco Avant Chanel)』です。

映画のあらすじ、見どころに加え、ココ・アヴァン・シャネルの名台詞についてご紹介します。

映画『ココ・アヴァン・シャネル(原題:Coco Avant Chanel)』のあらすじ

2009年に公開されたこの映画は、タイトルの通り、ガブリエル・シャネルが「シャネル(CHANEL)」を作り上げる前(avant=前)の"ココ(Coco=ガブリエル・シャネルのあだ名)"だった時代の伝記映画です。

1883年8月19日、世界遺産の城が多く残るメーヌ=エ=ロワール県(Maine-et-Loire)、ソミュール(Saumur)にてココは生まれました。

映画では、彼女が12歳の時に母親が死去し、父親によって姉のアドリエンヌ(Adrienne)と共にオーバジーヌ(Aubazine)の修道院が運営する孤児院に預けられるところから物語が始まります。

孤児院を出た後、お針子として働く傍ら、ムーラン(Moulins)のキャバレーで歌を歌っていたココは、エティエンヌ・バルサン(Ètienne Balsan)という将校と出会い、彼の愛人となってパリ郊外のロワイヤリュー(Royallieu)にて暮らし始めました。

そこで運命の恋人アーサー・"ボーイ"・カペル(Arthur"Boy"Capel)に出会うのです。

この出会いによって、ココはパリのカンボン通り(Rue Cambon)に帽子屋をオープンし、そのキャリアをスタートさせ、後にオートクチュールのビックメゾンとして成功していくのですが、映画ではこの帽子屋を開くまでの彼女の恋愛模様がメインに話が展開されていきます。

ココと言うのは彼女がキャバレーで歌っていた時の"ココを見たのは誰?(Qui qu’a vu Coco?)"と言う曲のタイトルが元になっていますが、父から呼ばれていたあだ名だと語ることもあったようです。

映画『ココ・アヴァン・シャネル(原題:Coco Avant Chanel)』の見どころ

始まりから終わりまで、一貫して目を引く美しい衣装の数々は、シャネルの全面協力によるものです。

所々、画面全体がココ(あえて、シャネル創業前の彼女を表すためにこう呼びたいと思います。)の視線と同じ高さになる演出によって、ココと同じものの見方を教えられているような気分になります。

修道院での修道女たちの装い、キャバレーの衣装、バルザン邸に集う人々、ドーヴィルの漁師たち……

彼女はその視線に何を捕らえ、何からインスピレーションを受けて、その独自のスタイルを作り上げていったのかが、よく分かる内容になっています。

そして、この主人公ココを演じたオドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)の再現度の高さも素晴らしいと思いました。

彼女のどこまでも深く黒い瞳からは、女性として、実業家として新しい時代を切り開いていく強い意志を感じましたし、ココ自身がシャネルの広告塔であったように、オドレイ自身も様々な衣装をとても上品に着こなしていました。

『アメリ』ではファンタジックで可憐な女性を演じた彼女が、この映画ではどこか中性的で大胆で、しかしエレガントさを失うことなく演じています。

ココ・アヴァン・シャネルはどんな女性だったのか?

ココは、どのような育ち方、生き方によって成功者となったのか。

映画で描かれる彼女は、孤児院に預けられた時からはっきりとした自身の意志、考えを持っているようでしたし、その姿勢は大人になってからも終始貫かれています。

ココ・アヴァン・シャネルの名台詞

劇中のセリフの中にも、ココのキャラクターを表現している名台詞がありますので、いくつか紹介したいと思います。

Quand je m’ennuie, je me sens très vieille.
(退屈だと老婆になったように感じる。)

出典:映画『ココ・アヴァン・シャネル』

退屈が嫌いで、休息日であった日曜日が大嫌いだったと言う彼女の性格を感じられる一言です。

Je veux du travail. Je veux gagner ma vie.
(私は仕事がほしいの。自分で稼ぎたいの。)

出典:映画『ココ・アヴァン・シャネル』

愛人として何不自由ない暮らしの中から、彼女が見出した結論は「職を得て、自分でお金を稼ぐこと」でした。

C’est pas en bricolant 3 chapeaux pour tes petites amies que je vais réussir à faire fortune.
(私が成功するのはあなたの女友達のために3つの帽子をこしらえることによってではない。)

出典:映画『ココ・アヴァン・シャネル』

パリに行かずとも帽子は作れると提案したバルザンに対し、彼の友達へ帽子を作り続けることでは富と名声は手に入らないと彼女は考えたのです。

また、シャネルの製品を思い浮かべると、ブランドのロゴやショップバック、コスメ製品にも多様に使用されている「黒色」があります。

Qu’est-ce que tu dirais d’une couleur qui soit vraiment une couleur?
(究極の色(=本物の色)って何だと思う?)

出典:映画『ココ・アヴァン・シャネル』

彼女はこうボーイ・カペルに尋ね、黒いドレスを作るのです。

あたり前だった当時の価値観に対して疑問や抵抗を持ち、男性のような動きやすい服装を好んだり、当時は喪に服すための色であった黒を選んだりするなど、その姿からは「強い女性」と言うのを感じますし、世間的な彼女へのイメージも同じかと思います。

その中でも、唯一、彼女が弱音を吐いたシーンは非常に印象的です。

J’ai peur.
(怖いの。)

出典:映画『ココ・アヴァン・シャネル』

非常にはっきりと物を言い、自分の意見を貫くココでしたが、パリへ発つ決心をした彼女がバルザンと別れの挨拶をするシーンでは「怖い。」と漏らします。

劇中では描ききれていない彼女の苦悩や困難の大きさを感じる場面でもありました。

映画の中だけではなく、実際に、ココ・シャネルが残した数々の言葉たちは、そのブランドのスタイルと共に、現代女性たちへ果敢に生きていくための刺激を与え続けています。

ココ・アヴァン・シャネルを象徴するフランスの海

ビアリッツの海(筆者撮影)

ビアリッツの海(筆者撮影)

ココが現代の私たちに残したスタイルは数多くありますが、マリンルックもその一つです。

パリジェンヌの代名詞ともとれるボーダーのトップスも、ココがその普及に一役を買ったであろうことは否定できません。

ドーヴィルの海岸でボーイと共に、漁師たちを眺めるシーンが映画内にも登場しますが、この漁師たちが防寒着として採用していたストライプ柄の上着がそのボーダートップスの元ネタになっています。

ココにとって特別な場所である海のある町から、シャネルのフレグランス、レゾードゥシャネル(Les Eaux de Chanel)シリーズの名前にもなっているドーヴィルとビアリッツをご紹介します。

ドーヴィル(DEAUVILLE)

ドーヴィル駅(筆者撮影)

ドーヴィル駅(筆者撮影)

パリから最も近い港町で、リゾートを楽しむ富裕層たちによって発展したドーヴィルは"ノルマンディーの真珠"と呼ばれ、ビーチはもちろんカジノやヨット、テニスなどが楽しめます。

ドーヴィルの波止場(筆者撮影)

ドーヴィルの波止場(筆者撮影)

毎年映画祭が開かれるたび、多くの観光客が訪れ、映画の舞台や撮影スポットにもなっているドーヴィルですが、冬にはドーヴァー海峡からの冷たい北風が吹き付け、季節によってガラリと装いを変化させます。

ドーヴィル海辺のデッキ(筆者撮影)

ドーヴィル海辺のデッキ(筆者撮影)

シャネルにとってのファッション・ブティック1号店は、1913年にこの地に開店しましたが、現在は閉店しています。

多くのハイブランドが店舗を構え、町全体の建物がどことなくドールハウスのような可愛さのある町です。

ドーヴィルドールハウスのような家(筆者撮影)

ドーヴィルドールハウスのような家(筆者撮影)

ドーヴィルのかわいい街並み(筆者撮影)

ドーヴィルのかわいい街並み(筆者撮影)

ビアリッツ(BIARRITZ)

ビアリッツ駅の看板(筆者撮影)

ビアリッツ駅の看板(筆者撮影)

ボルドーよりもさらに南西、まもなくスペイン国境という場所にあるのが、中世より貴族や王族たちの保養地として愛されてきたビアリッツです。

ビアリッツのビーチ(筆者撮影)

ビアリッツのビーチ(筆者撮影)

スペインにまたがるバスク地方にあるビアリッツは逗子・葉山のような落ち着いた海辺の町です。

富裕層に愛されたビアリッツの保養地(筆者撮影)

富裕層に愛されたビアリッツの保養地(筆者撮影)

ピレネーから流れる水は水道水でも美味しく、人々も陽気で夏にはヨーロッパ各地からバカンスを楽しみに人々が集まる人気のリゾート地です。

ビアリッツの街中(筆者撮影)

ビアリッツの街中(筆者撮影)

1915年にクチュールハウスを併設した本格的なブティックをカジノの目の前にオープンしました。(現在は閉店し、跡地には本屋さんが入っています。)

観光客で賑わうビアリッツのビーチ(筆者撮影)

観光客で賑わうビアリッツのビーチ(筆者撮影)

まとめ

この映画では主に、ココの恋愛や男性関係について多く語られていますが、その関係性を通して当時の女性たちの理想とする生活や格好、価値観がどのようなものであったかを知り、さらに映画を観た方たちに「ココについてもっと知りたい」と思わせる映画となっています。

ココ・シャネルはその人生や功績だけでも十分に魅力的で、現代女性たちの憧れとなる存在です。

彼女をそこまで押し上げたものは何か、衣装の一つひとつや、彼女とその周辺の人物たちとの会話全てが、その後の成功へ繋がるヒントのように感じながら観ることができます。

彼女が生み出した"新しい女性像"は、その後のファッションへも大きく影響を及ばしていますし、当時の女性たちを窮屈なコルセットから解放し、動きやすい服装と共に自由に考え生きることを、身を持って伝えたココ

映画『ココ・アヴァン・シャネル』を見れば、パリジェンヌのシンプルで上品な装いの原点を見つけることができるでしょう。

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