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人種差別の根源を描いた衝撃作品!
普段はおとなしい人が狂気に走る事件を見聞きすると、「なぜそんなことをしてしまったのだろう……」と疑問に思うことはありませんか?
この記事では、そんな疑問に真っ向から取り組んだ、ブリュノ・デュモン(Bruno Dumont)の長編デビュー作、映画『ジーザスの日々(原題:La Vie de Jésus)』をご紹介します。
実際に起こった事件を元に、寂しい田舎町で過ごす若者の怒りが、静かに爆発していく姿を96分という短い時間で見事に描き、1997年に公開以降、フランスでカルト的な人気を誇っているヒット作品です。
それでは早速あらすじと、映画を理解するために知っておくべき3のポイントを紹介します。
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人種差別を問う問題作、映画『ジーザスの日々』のあらすじ
舞台は、ベルギーとの国境に位置するフランス北部小さな町バイユール(Bailleul)。
そこは、農業以外に主だった産業がないため、失業者も多く、どこか粛々とした雰囲気が漂う小さな田舎街。
この街に生まれ育ったフレディー(Freddy)は、だらだら仕事もせずカフェバーを営む母親と一緒に暮らしていました。
てんかんの発作に苦しみながらも、毎日幼馴染の仲間たちとブルンブルンと大きな音を立ててバイクを乗り回し、退屈な時間をつぶしながら日々を送っています。
彼の唯一の楽しみは、ズアオアトリ(スズメの一種)の飼育と、スーパーでレジ業務をしている恋人のマリー(Marie)と会うこと。
そんなある日、フレディーや彼の仲間たち参加するブラスバンドのパレードが、街を挙げて行われることに。
パレード終了後、母親のカフェ・バーで打ち上げのため、ブラスバンドメンバーが集合。
ガヤガヤと騒がしい店内で、ふと、後ろの席のアラブ人家族の会話が耳に入ってきます。
フレディー達は、ケラケラ笑いながら彼らを侮辱するような言葉を投げか始めました。
それに気がついたアラブ人家族は、ふつふつと湧き上がる怒りを抑えながら静かに店を後にします。
数日後、フレディーとマリーが仲間たちと集まって、わいわい騒ぎながら自動車修理をしていた時のこと。
そこに、あのアラブ人家族の一人、カデール(Kader)が現れ、フレディーたちにすっと中指を立て挑発し始めます。
フレディー達はバタバタと走って追いかけますが、カデールはブーンとバイクで足早に立ち去って行きました。
しばらくして、マリーが働いているスーパーにふらふらと訪れたカデール。
その日から、彼はマリーを積極的に誘い始めます。
マリーは、最初はアラブ人であるカデールを嫌がっていました。
しかし、ぶっきらぼうで身体を合わせることしかしないフレディーと異なり、優しくなんでも話せるカデールが次第に気になっていくのですが……。
英語字幕付き予告編
「なぜ『ジーザスの日々』というタイトルが付いているか?」に関して、出演者たちが思い思いに答えているとても面白い作りになっています。
映画をもっと理解できる!知っておくべき3のポイント
デュモン監督の中でも、比較的わかりやすい本作品『ジーザスの日々』。
ここではこの作品をもっと理解するために知っておくべき3ポイントを一緒に見ていきましょう!
映画のロケ地「バイユール」の特徴
デュモン監督が生まれ育った場所でもあるバイユールは、19世紀に入るまでオランダ領でした。
通りや町の名前も、オランダ語に由来するところが多いのが特徴。
バイユールが位置するノール県(Departement du Nord)は、2021年現在フランス国内でも失業率がトップクラスになっています。
映画『ジーザスの日々』の監督、ブリュノ・デュモン監督の人物像とは
独特の作風で根強いファンがいるデュモン監督。
実は、映画監督になる前は、高校の哲学の教師だったのです。
その後、映像関係の仕事に転職し、ドキュメンタリーやテレビCMに携わったあと、1992年に短編映画を製作。
1997年本作品で長編映画デビューを果たし、カンヌ映画祭ではカメラ・ドールを受賞、若手シネアストの登竜門ジャン・ヴィゴ賞を受賞しました。
映画『ジーザスの日々』の出演者はみんな素人って本当!?
デュモン監督のこだわり……
それが「俳優経験がない人をキャスティングする」です!
このデビュー作品でも、「演じないことこそ演じることだ!」という監督のポリシーから、本作品の出演者全て演技未経験者なんです。
主人公のフレディーを見事に演じたダビッド・ドゥーシュ(David Douche)は、撮影当時はバイユールの住民でした。
ちなみにドゥーシュは、本作品に出演した後映画界を離れ、波乱万丈の人生の末、2015年、43歳という若さで火災に巻き込まれ他界しています。
La mort tragique de David Douche, héros de La Vie de Jésus (Le Figaro)
まとめ
どこにでもいそうな無口な青年が人種差別者になると言うストーリーで、上映から20年以上たった現在でもカルト的な人気を誇るデュモン監督のデビュー作品『ジーザスの日々』。
なぜ『La Vie de Jésus(イエスの人生)』というタイトルをつけたかという問いに、監督自身ははっきりとは答えていません。
出演者のほとんどが地元の人たちで、彼らが話すフランス語は通称「シュティ(Ch'tis)」と言われるなまりが特徴。
少し聞き取りづらいかもしれませんが、ベルギーのフランス語に近いフランス北部フランス語を聞くいい機会です。
テーマは決して軽くありませんが、「ドキュメンタリーにではないが、限りなくリアルに近い」本作品は、見ている人に「何か」を考えさせる素晴らしい作品です。
また、デュモン監督の長編二作目の作品『ユマニテ(原題:L’Humanité)』は、「人間の本性(=ユマニテ)とは何か!?」を問う異色のサスペンス映画で、なんとカンヌ国際映画祭を制しました!
デュモン監督に興味ある方はぜひこちらもあわせて御覧ください。
デュモン監督の長編二作目の作品『ユマニテ(原題:L’Humanité)』のあらすじと演技未経験で男優賞・女優賞を受賞したキャストのその後
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。