フランス映画『アンタッチャブルズ(De l’autre côté du périph)』のあらすじと見どころ

あの大ヒットフランス映画『最強のふたり』で世界中に名を轟かせたオマール・シーOmar Sy)が、再び主演をつとめた映画『アンタッチャブルズDe l’autre côté du périph)』。

生まれ育った環境も肌の色も、何もかも違う2人の凸凹刑事コンビが、足を引っ張り合いながらも事件解決に向けて奮闘するドタバタのアクション・コメディです。

フランス映画『アンタッチャブルズ(De l’autre côté du périph)』のあらすじ

舞台はフランス郊外、ボビニー市。集合住宅地にたたずむ古びた闇賭場で、1人の女性の変死体が発見される。

彼女は、国内外に強い影響力を持つ大企業の社長ジャン=エリック・シャリニの妻、エポニーヌだった。

偶然現場の近くで張り込みをしていた同市警察財務捜査課のウスマヌ・ジャキテ(オマール・シー)は、現場に要請されたパリ警視庁犯罪捜査課長官のフランソワ・モンジュ(ロラン・ラフィット)に、この殺人事件と闇取引の関係性を訴えるが聞き入れてもらえない。

どうしても自分も捜査に参加したいウスマヌは、上司にフランソワが合同捜査を提案してきたと嘘をつき、コンビを組むことに。

全く馬が合わない2人の刑事はぶつかり合い、失敗を繰り返しながらもなんとか変死事件を解決に導いていく。

この映画の見どころ

オマール・シーの飾らないありのままの演技

最強のふたり』で演じた役柄同様、この映画でもお調子者で明るい青年役をつとめたオマール。

今回も、上流階級の人たちやお偉い人たちにも全く物怖じすることなくズケズケと入り込んでいく、オマールワールド全開の演技で観客を楽しませてくれています。

汚い言葉を大量に使いながらも、不快さを全く感じさせないコミカルな演技と、ニヤッと笑うたびに見える白い歯が印象的な彼。

フランス映画はあまり好きになれないけど、オマールの作品は見たい!」という人も多いようです。

リアルなフランスの社会問題にも注目

フランス映画はよく、自分たちの抱える格差社会や人種差別に関して、ブラックジョークを交えながらストーリーを展開させていく傾向にありますが、この作品にもしっかりとその要素が含まれています。

例えばこの映画のタイトル。

邦名は『アンタッチャブルズ』ですが、フランス語の原題は『De l’autre côté du périph』です。

“Périph”とは、“Boulevard Périphérique”の略で、都市を環状に取り囲む都市高速道路の名称のことです。

Paris - Boulevard Périphérique

パリをグルっと囲んで走っている「環状道路( Boulevard Périphérique)」

直訳すると「ペリフの反対側」、つまりパリの外側を意味し、「パリ郊外」のことを指しています。

この物語の舞台にもなっている、ウスマヌの出身地であるボビニー市もパリ北東の郊外に位置し、8つに分けられた地区のほとんどが「経済・社会問題対策優先実施区域(脆弱都市地域。zone urbaine sensible, ZUS)」に指定されています。

映画内で映るボビニー市の街は、治安はとても悪く、老朽化が進んだ大型集合住宅に囲まれとても暗い印象です。

ボビニーの屋台トラックで食事を買うシーンで、ウスマヌとフランソワはこんな会話をしていました。

ぶつかっても謝ることなく立ち去る子供にフランソワが

“T’excuses pas surtout! Petit con là! Ils vont jamais à l’école ici ou quoi?”
「謝らないか!クソガキめ。彼らは学校に全然通わないのか!」

出典:フランス映画『アンタッチャブルズ(De l’autre côté du périph)』

と言うと、ウスマヌは

“Quand l’étas mettera autant d’argent dans les école ici que dans les parcs et des jardins à Paris, on verra.”
「国が、パリの公園にかけるのと同じくらいここの学校にもお金を入れてくれたら、考えるだろうね。」

出典:フランス映画『アンタッチャブルズ(De l’autre côté du périph)』

と返します。

さらに2人が住居に関して話をしているとウスマヌがこう言います。

“Regarde devant toi là. Tu vois la salle de jeunesse de Georges-Moustaki.
「あれを見ろ、 Georges-Moustakiの青少年センターだ。

Et ben ça, c’etait en travaux quand j’etais déjà gamin. Ça sera terminé quand toi, t'autas tes gamin. C’est à dire jamais!”
俺がガキの頃から工事をしていたんだ。で、お前に子供ができる頃に完成するのさ!つまり、永遠に完成しないってことさ。」

出典:フランス映画『アンタッチャブルズ(De l’autre côté du périph)』

パリ郊外は国からの支援が少なく、蔑ろにされている事実が浮き彫りになっているシーンです。

さらに、このドラマのカギを握る経仏連のカルディネ事務局長は、ウスマヌに対して明らさまに見下した態度をとります。

白人でパリ出身のエリート警察官であるフランソワにはVouvoimentで、黒人でパリ郊外出身のウスマヌにはTutoimentで会話し、極端に異なる扱いで差別心を露呈します。

このように、フランスには現在においても人種差別や格差問題が根強く残っています。

その他にも、労働問題やストライキなど、様々な問題が盛り込まれた映画です。

それをオマールが演じるウスマヌが面白おかしく伝えてくれているため、深刻な問題を目の当たりにしながらも、暗く悲しいストーリーにはならず、最後まで楽しみながら観続けられるのです。

邦題『アンタッチャブルズ』の意味と邦題に込められた想いとは

オリジナルのタイトル『De l’autre côté du périph(ペリフの反対側)』では、日本人には馴染みがなくイメージが出来ないため、邦題は『アンタッチャブルズ』という別の名前がつけられたのだと推測します。

しかし、なぜ『アンタッチャブルズ』となったのでしょうか?

「アンタッチャブルズ」とは英語で“Untouchables”、フランス語では“Intouchables”になります。

“Intouchables”と聞いてまず思い浮かべるのが、『最強のふたり』ではないでしょうか?

邦題『最強のふたり』のフランス語原題は“Intouchables”でしたからね。

“Intouchables”、つまり直訳すると「触れることのできない人たち」ですが、

「身分や生まれ育った環境も全て異なり、本来なら出会うはずのない2人が絆を深め合い、最後には誰にも邪魔できない関係になった」という、「出会うはずのない2人」と「誰も邪魔できない関係の2人」という二重の“Intouchables”の意味を持っていると思っています。

この『アンタッチャブルズ』の2人にも同様の関係性があるのと、オマール・シーも出演しているということで『最強のふたり』のオマージュとしてタイトルを似せたように思えます。

もしくは、日本でも有名なケビン・コスナー主演の警察映画『アンタッチャブル(The Untouchables)』にタイトルを寄せたのか……

真意はわかりませんが、結果的にはストーリーにぴったりのタイトルになっていたような気がします。

まとめ

フランス映画『アンタッチャブルズDe l’autre côté du périph)』のあらすじと見どころをご紹介しました。

フランスで大人気の俳優でコメディアンでもあるオマール・シーが主演する作品です。

同じくオマール・シーが主演し大ヒットを記録した『最強のふたり(原題:Intouchables)』の翌年に公開されたということもあって、ご覧になられた方は多かったのではないでしょうか。

全然噛み合わないふたりの凸凹コンビが、最後にはどのように事件を解決することになるのか、最後まで目が離せない作品です。

コメディー作品でありながらも、社会問題に大きく触れており、普段は見られないフランスのリアルな部分を覗くことができる映画となっています。

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