フランス映画『感傷的な運命』のあらすじと、キリスト教におけるプロテスタントとは

技術革新とグローバル化の中で一番大切だったのは愛だった!

目覚ましいテクノロジー改革を目の前に、それまでの価値観が揺らぐのは2021年現在だけのことではありません。

伝統的な価値観の中で生きてきた若い夫婦を通して、昔ながらの価値観が大きく変化していったフランスを見事に描いた、映画『感傷的な運命(原題:Les destinées sentimentales)』では、生きる上で「何が本当に必要なのか?」を考えさせてくれます。

ストーリー展開の素晴らしさ、豪華キャスト陣、美しいリモージュの風景、そして細部にまでこだわりリアルに描いた当時のキラキラした衣装や生活様式は必見です!

こんにちは!イザベル・ユペール(Isabelle Huppert)が演じる「面倒臭い女」が大好きなカタクリです!

早速あらすじと、ストーリーの軸となっている「プロテスタント」について一緒にみていきましょう。

激動の時代に愛を信じる夫婦を描いた映画『感傷的な運命』のあらすじ

物語の舞台はフランス中部に位置する都市リモージュ。

磁器生産会社を経営するプロテスタント系の上流階級の家に次男として生まれたジャン(Jean)は、親の反対を押し切ってプロテスタントの牧師として生活していました。

結婚し娘も生まれますが、妻ナタリー(Nathalie)の難しい性格から、夫婦の関係がギスギスしはじめ、ついには夫婦の関係がバラバラになってしまい離婚してしまいます。

時を同じくし、20歳のポリーヌ(Pauline)は2年間のイギリス生活を終えフランスに戻ってきます。

ポリーヌは、父親がエジプトで不義の死を遂げたことにより、伯父でありネゴシアン(コニャックやワインなどの製造・卸売業者)であるフィリップ(Philippe)の家に居候することに。

フィリップの家族もまたプロテスタント系であることから、教会での日曜日の礼拝に参加します。

粛々と礼拝が続く中、ポリーヌは牧師のジャンが気になり始めるのです。

その後、フィリップの息子アルチュール(Arthur)主催の夜会に出かけたポリーヌは、ガヤガヤとする人混みの中でジャンと二人きりで話す機会を得ます。

しかし、離婚のことで心がボロボロになっていたジャンは、夜会のお祭り騒ぎが耐えきれずに一人で帰路に。

後日、フィリップが営むぶどう畑でジャンとポリーヌはばったりと再会。

ポリーヌも同じくプロテスタントですが、自分の信仰について、そして誰にも話したことがない父親の真実をジャンに淡々と語ります。

若いながらも自分をしっかり持っているはきはきとした性格のポリーヌに、いつしかジャンは惹かれていきます。

一方、ジャンの実家にビジネスの話しで訪れたフィリップは、彼の父親が重い病気にかかり先が長くないことを知るのですが……

映画『感傷的な運命』の予告編

下記はフランス語版『感傷的な運命』の予告編になります。

映画がより良く理解できるようになる「プロテスタント」とは

ストーリーの軸になっている「プロテスタント」を少し理解すると、より映画を楽しく見ることができます。

プロテスタントはいつ生まれたの?

プロテスタントは、キリスト教の教派のひとつで、16世紀に生まれました。

キリスト教は、キリスト亡き後、弟子のペテロ(フランス語ではピエール/Pierre)によって作られ、11世紀初頭にローマ・カトリック教会(通称カトリック)とオーソドックス(正教会)に分離。

その後、16世紀の宗教改革によりカトリックから分離する形でプロテスタントは誕生しました。

カトリックのプロテスタントの違いとは?

カトリックもプロテスタントも同じキリスト教ですが、違いはたくさんあります!

その中から、ここでは3点に注目してみます。

日曜日の集会の呼称の違い

キリスト教には日曜日に集会があり、カトリックでは「ミサ」といい、プロテスタントは「礼拝」と言います。

最高位聖職者の有無の違い

カトリック教会の最高位聖職者はバチカンのローマ教皇ですが、プロテスタントは神の前ではみんな平等という観念から最高位聖職者という地位を設けていません。

司祭の違い

カトリックの司祭(教会で儀式を行う)は「神父」といい、男性限定で生涯独身です。

一方、プロテスタントでは「牧師」といい、男女を問わずになることができ、結婚も許されています。

映画の中で「なぜ聖職者が結婚?」と思った人もいるかもしれませんが、ジャンが牧師だったからなんですね!

カトリックのプロテスタントの違いをもっと知りたい方は、こちらの動画をぜひご覧ください!

違いを知ると、カトリックの国フランスとプロテスタントが多いドイツやアメリカとの文化の違いがわかるようになって面白いです!

お金持ちにはプロテスタントが多い?

映画『感傷的な運命』の登場人物のように、上流階級プロテスタントたちのことをフランス語で Haute société protestante(上流階級プロテスタント)、略してHSPと言います。

日本で言う「財閥」に似ています!

HSPは19世紀にできた言葉で、当時盛んだった産業工場、銀行、ネゴシアン、輸入貿易などで大きな財産を得た上流階級プロテスタントを指していました。

香水メーカーの「ゲルラン(ゲラン)」や、高級バッグで有名な「エルメス」、そして自動車メーカーの「プジョー」の創立者たちは、HSP出身のです!

「お金持ちはプロテスタントが多い」と言われる理由は、お金に対する考え方の違いにあります。

お金持ちにプロテスタントが多い歴史的背景とは

中世から、「天国に行くためにはキリストのように清貧であれ!」、という教えがカトリックには根付いています。

一方、プロテスタントでは「人が尊厳を持つためにはお金を稼ぐことが大切だ」という考えの元、それまでカトリックでタブー視されていた「利子付き金貸し(後に銀行に発展)」などの職業を積極的に行っていました。

プロテスタントでは頑張った人が「お金持ちなる=徳になる」と考え、このような思想が上流階級に受け入れられたんですね!

ヨーロッパで迫害されたプロテスタントが新大陸のアメリカに渡った歴史を考えると、とても興味深いのではないでしょうか。

まとめ

2000年に上映されフランスで大ヒットした映画『感傷的な運命』

作者のジャック・シャルドン(Jacques Chardonne)の母方の家族はフランスの裕福な都市リモージュで磁器生産会社を、父方の家族がコニャックのネゴシアンと、両親の物語がベースになっていて、技術革新とグローバル化間に立った伝統産業の人々の苦悩が見事に描かれています。

映画は約180分と長めですが、長さを感じさせないストーリー展開です。

この映画では、映像の美しさだけでなく、フィクションでありながらも、第一次世界大戦前から第二次世界大戦直前までの、激動のフランスの動きを知ることができます。

また、カトリックの国フランスにおける「プロテスタント」を学ぶことで、欧米の根本的な違いなども学ぶことができ、大変面白いですよ!

ちなみにフランスでは、キリスト教徒でプロテスタントなのはたったの3%しかいません。

フランスの近代史を知るためにもオススメの映画です!

出演者のエマニュエル・べアール(Emmanuelle Béart)とシャルル・ベルラン(Charles Berling)のインタビューも合わせてご覧ください。

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