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ナチスの支配下で行われた1936年のベルリンオリンピック。
このベルリンオリンピックを背景にしたフレンチコメディー映画『エースの中のエース(原題:L'as des as)』をご存知でしょうか。
監督が、ジャン=ポール・ベルモンド同様の名俳優、ルイ・ド・フィネスを起用し、今でもフランスのテレビで毎年再放送される大ヒットコメディ映画『大進撃』(1966年)を制作したジェラール・ウーリー(Gérard Oury)と聞けば、興味をそそられる方も多いかと思います。
『エースの中のエース』は、ボクシングのフランス代表コーチ、ジョーがユダヤ人を助けるアドベンチャー物語です。
この映画は1982年に制作された古い作品であるにも関わらず、日本では39年間も未公開だったのですが、2021年5月に東京・武蔵野館などで初公開されました。
◆こんにちは!エミレーヌです。
約40年も経ってから日本で初公開だなんて珍しいですよね!
『エースの中のエース』の主演キャストはジャン・ポール・ベルモンド。
決してハンサムではありませんが、シリアスからアクション、コメディーまで何でもこなせる器用な名俳優で、20世紀を代表するフランスの俳優の一人です。
この記事では、フランス映画『エースの中のエース』のあらすじ、キャストと、約40年もの時を経て日本初公開となった映画の「みどころ」をご紹介します。
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映画『エースの中のエース』予告編
下記は映画『エースの中のエース』の予告編です。
日本語字幕はありませんが、フランス語の勉強を兼ねてぜひ御覧ください。
映画『エースの中のエース』のあらすじ
この映画は第一次世界大戦から始まります。
フランス軍パイロットのジョーと、ドイツ軍パイロットのギュンターが操縦する2機の飛行機が一騎打ちして両機とも墜落するのですが、最後はお互いに助け合ってしまいます。
20年後、ボクシングのオリンピック代表チームのトレーナーとなったジョーと、ナチスの将校になったギュンターはベルリンで再会することになります。
フランスチームがベルリンに向かう列車の中で、ジョーは同行している女性新聞記者に一目ぼれしてしまいます。
しかしその女性は、数日前にジョーの発言を盗み聞きして記事を書き、ジョーを追い詰めた女性でした。
また、ジョーは列車の中で彼のファンであるユダヤ人の10才の男の子、シモンとも出会います。
ベルリン到着後、シモンとその一族がナチスに連行されそうになったことを知り、ジョーはフランスチームをほったらかしにして救出作戦を展開します。
シモンたちをオーストリアに逃がそうとして悪戦苦闘し、ようやくジョーがたどり着いた場所はよりによってとんでもない所でした。
その場所とは…。
Georges 〈Jo〉Cavalier(ジョー)を演じるキャスト:Jean-Paul Belmondo(ジャン・ポール・ベルモンド)
第一次世界大戦の名パイロットとして人気を博した通称<ジョー>は、今はボクシングのオリンピック代表チームのトレーナー。
1936年のベルリンオリンピックにフランス選手団を率いて参加することになりました。
ジョーは陽気で怖いもの知らず。
美女にはめっぽう弱いけれど、弱い者を見捨てられない正義感の持ち主です。
この性格が災いして、ベルリンで大騒動を巻き起こしてしまいます。
この大胆不敵なジョーを演じたジャン・ポール・ベルモンドのアクションシーンが見ものです。
もともとベルモンドはボクシングをやっていたので、身のこなしが軽いです。
60年代のアクション映画『リオの男』では、スタント無しで体当たりの演技を見せました。
Gabrielle Belcourt(ガブリエル・ベルクール:ギャビー)を演じるキャスト: Marie-France Pisier(マリー・フランス・ピジェ)
ジョーを一目ぼれさせるほどの美しい容姿を備えた新聞記者です。
ジョーを利用して記事を書いたのち、ヒトラーに取材をするために何食わぬ顔をして、ジョーたちと同じ列車でベルリンに向かいます。
したたかな敏腕女性記者ギャビーを、マリー・フランス・ピジェはエレガントなファッションで演じました。
◆あの頃の新聞記者は、ハイヒールを履いて取材していたのですね。
Simon Rosenblum(シモン)を演じるキャスト: Rachid Febrrache(ラシド・フェラーシュ)
シモンは、たまたまジョーと同じ列車に乗り合わせ、サインをねだったことがきっかけで、ジョーと話をするようになります。
ベルリンに帰った時にナチスに捕まえられそうになるのですが、ジョーの機転で難を逃れます。
シモンは、ややもするとジョーの身勝手で放り出されますが、結局は見捨てきれない心の優しいジョーに救われます。
ナチスに追われるシモンを、ラシド・フェラーシュが愛らしく演じています。
ラシド・フェラーシュは、もともとは雑誌などで活躍していたの子供モデルですが、1982年に俳優としても活動を始め、この映画は2作目でした。
Günther von Beckmann (ギュンター)を演じるキャスト: Frank Hoffmann(フランク・ホフマン)
ジョーと第一次世界大戦で戦ったパイロットのギュンターは今やナチスの将校。
しかし、本音はナチスに批判的で、ジョーとの再会を喜びました。
そしてジョーに頼まれ、ユダヤ人を助ける片棒をかつぎますが、最後の方では想定外の役回りを演じるハメになってしまいます。
典型的な「まじめなドイツ人」ギュンターを、フランク・ホフマンは時には渋く、時にはコミカルに好演します。
Adolf Hitler/Angela Hitler(アドルフ・ヒトラー/アンジェラ・ヒトラー)を演じるキャスト: Günther Meisner(ギュンター・マイズナー)
アドルフ・ヒトラーのそっくりさんキャストはギュンター・マイズナー。
真摯な態度がクスっと笑えるヒトラーと、妙なウブさが笑えるアドルフの姉アンジェラを一人二役で見事に演じ分けています。
◆ちゃんとアンジェラが女性に見えるからさすがですね。
un boxer (ボクサー)を演じるキャスト:Florent Pagny(フローラン・パニー)
ジョーが率いるフランス代表の一人。フランスの代表的なポップスターのフローラン・パニーが端役で、ボクサー選手の一人として出演しています。
◆売り出し前の、若いフローランは初々しくてかわいいです。
Florent Pagny dans "l'as des as". pic.twitter.com/QifQoKytVu
— ç (@vadub69) 7 mars 2021
Florent Pagny à ses débuts avec Belmondo dans "L'As des as" (82)... pic.twitter.com/hxmjlqSgIa
— Philippe Lombard (@phil_lombard) 9 octobre 2016
『エースの中のエース』の見どころ
約40年の時を経て日本に上陸したフランス映画を存分に楽しむための「みどころ」を、3つご紹介します。
ナチズム批判
各々のキャラクターが面白おかしく演出され、ドイツ人をからかう典型的なフランス映画の指揮をとった監督は、ユダヤ系のジェラール・ウーリー。
監督がユダヤ系であり、ドイツと戦ったフランスの映画ということもあって、ところどころにナチズムを批判するシーンがあります。
しかし、ナチスの「反ユダヤ主義」を深刻にせず、コメディーで笑い飛ばします。
例えば、ベルリンのシモンの祖父のお店で、ドイツ警察が本を検閲するシーンなどがその一例です。
実際、ナチスは1933年に「ナチス・ドイツの焚書」を行っており、ユダヤ人著者やマルキストの本が焼かれました。
ベルリンオリンピック(1936年)と聖火リレー
ベルリンオリンピックは、1916年に第一次世界大戦勃発のため、中止された経緯があります。
第一次世界大戦後、ドイツはオリンピック開催に再挑戦、バルセロナを破って開催地に選ばれました。
ナチスはオリンピックをプロパガンダに使えると考えていましたが、すでにナチスによるユダヤ人迫害が世界に知られ始めて、ボイコットの動きが広まりつつありました。
そこで、ドイツは人種差別政策を一時凍結して、ボイコットを回避することに成功し、開催にこぎつけたのです。
そして今やオリンピックの一大人気イベントなっている聖火リレーですが、この「聖火リレー」はナチスがプロパガンダ効果を高めるために考案し、ベルリンオリンピックで初めて実施されたものです。
『エースの中のエース』では、ベルモンドが成り行きで聖火リレーに参加するシーンがありますので、そういった背景を意識してぜひ見てみてください。
戦闘機と追跡シーンのバイク
映画の最初に出てくる戦闘機ですが、実はジョーが搭乗していた戦闘機RAF-SE5はイギリスの複葉機でした。
ギュンターが搭乗した戦闘機はフォッカーDr.Ⅰで、こちらはドイツ製の三葉機です。
ドイツが主な舞台となっているため、オリンピックの聖火リレーのシーンや、山道でジョーを追跡するシーンで、様々なドイツ製バイクが登場します。
しかし、1950年代のBMW R25、1970年代のR75、そして戦後に設計されたRatier C6Sが使われており、いずれも第二次世界大戦当時にはまだ存在していなかったバイクです。
バイク好きにはわかる、クスッと笑える演出です。
まとめ
ジョーのアドベンチャー物語を前面に出しつつ、反ユダヤ主義政策を行ったナチスに対する批判を込めた『エースの中のエース』。
重たい政治問題をコメディーに仕立て、観衆を笑わせながらも歴史を忘れさせないことに成功した映画の一つだと言えるでしょう。
映画タイトル『エースの中のエース』のエース(as)とは、「第一人者」という意味ですが、「エース・パイロット(撃墜王)」の意味も含まれていると考えられます。
◆二度と悲劇は繰り返してはならないと思いつつ、「歴史は繰り返す」とエミレーヌは思っていて、現代の「エース」の登場を期待しています。
また、『エースの中のエース』で、大勢の人の期待と興奮を背負って走るジョーの姿を見ながら、「復興五輪」として福島からスタートした聖火リレーや、東京オリンピックにまで思いを馳せました。
♂️ #福島県 1日目 ハイライト♀️
第一走者はサッカー女子W杯で優勝したなでしこジャパンのメンバー✨#しずちゃん さんや #聖火ランナー の皆さん!最高のスマイルをありがとうございました☺️https://t.co/scAuI0ARQv@marukarichan11#みんなの聖火リレー #聖火リレー #Tokyo2020 pic.twitter.com/zlIzbY6v4q
— 東京2020聖火リレー【公式】 (@tokyo2020seika) March 26, 2021
参考資料
映画 エースの中のエース (1982)について 映画データベース - allcinema
1936年ナチス政権下のベルリンオリンピック | ホロコースト百科事典
L'As des As - film 1982 - AlloCiné
L'as des as - Gérard Oury - Jean-Paul Belmondo, Marie-France Pisier, Rachid Ferrache - Gaumont
Jean-Paul Belmondo — Wikipédia
スイス・ジュネーブ在住
スイス生まれのフランス人と結婚した、二人の娘の母。
趣味は料理。フランス料理は義母から教えてもらったブルゴーニュ料理が得意。
特技や趣味など、詳しいプロフィールはこちら。