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差別を無くすために活動するキュートな女の子と、真面目で平凡な中年男性が織りなす世界平和の方法とは?
この記事では、2010年にフランスで大ヒットした映画『戦争より愛のカンケイ(原題:Le Nom des gens)』をご紹介します。
本作は本邦劇場未公開ですが、動画配信サービスで気軽にご覧いただくことが可能です。
こんにちは!面白いフランス映画に限って、日本では劇場未公開なのが不思議でならないカタクリです。
かなり突拍子も無い内容の映画『戦争より愛のカンケイ』ですが、フランス人の政治に対する考えが、よーくわかる内容になっています。
映画を楽しく観るために「映画のあらすじ」、そして「フランスにおける右翼と左翼」もご紹介させていただきます。
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フランス人しか作れない!社会派ラブコメディー、映画『戦争より愛のカンケイ』
料理調理器具メーカーと同じ名前を持つアルチュール・マルタン(Arthur Martin)は、平凡でどこにいでもいるような風貌の典型的な白人の中年男性。
獣疫(動物がかかる伝染病)の専門家であることから、ある日、動物の感染症に関する視聴者からの質問に答えるため、フランスのラジオ局フランス・アンテル(France Inter)の視聴者参加番組「テレフォン・ソンヌ(Téléphone sonne)」に出演することに。
この放送の数日前に地方の小さな村でカモが亡くなった事により、視聴者から「鳥インフルエンザ」に関する質問を受け、「感染の危険性が十分にあるためカモを触らないようにした方が良い」と淡々と語るアルチュール。
この日は、ブラジル人のような名前を持つアルジェリア人とフランス人のハーフ、バイア・ベンマムード(Bahia Benmahmoud)がテレフォン・ソンヌの視聴者の質問を受けるコールセンターでの仕事初日。
「カモ」話を聞いていたバイアは突然席を立ち上がり、放送中のスタジオにヅカヅカと入るなりアルチュールに向かって、「鳥インフルエンザの話よりももっと大切な話があるはずなのに、あなたのような人がいるから『ファショ』が生まれる」、と叫び出しました。
「カモを排除することから始まり、それがエスカレートして次は移民を排除すんでしょう!」とまくし立てるバイアを放送局のスタッフがガッと取り押さえ、スタジオから連れ出されてしまいます。
当然ながら彼女はその場で契約社員をクビになってしまいます。
突然の出来事に呆然としていたアルチュールでしたが、帰宅する途中のバイアに遭遇し「あの突拍子もない行動」の理由を尋ねるべく彼女を呼び止めました。
その「外見」や「カモの発言」からアルチュールを「右翼」だと思い込んでいたバイアは、「一緒に寝ること」をグングンと迫ってきたのです。
また、彼女の突拍子も無い行動にアタフタしたアルチュールは、バイアの誘いを断ります。
しばらくし、フランス大統領選挙投票日。
アルチュールはその投票会場で、あのバイアと再会することに。
そこから、アルチュールはバイアの「壮大なドタバタ活動」に巻き込まれて行くのですが……
フランスにおける右翼と左翼
映画『戦争より愛のカンケイ』で、カモを排除するような発言をしたアルチュールに、バイアが「ファショ」と呼び捨てたシーンでは驚いた人も多いのではないでしょうか?
「ファショ(facho)」とは「ファシスト(fasciste)」の省略の言葉で、フランスでは排他的な考えの人を非難する時に使います。
#ちなみにバイアの様な反ファシストを「アンティファ(antifa)」と言います!
本編もっと面白く観るために、そしてフランス関連のニュースをもっと理解するために、フランスにおける右翼と左翼の概念を理解しておくことが大切です。
フランス人と普通の会話する上でも欠かせない基礎知識なので、是非覚えてください。
右翼と左翼の生い立ち
右翼と左翼の生い立ちの生い立ちは、フランス大革命があった1789年に遡ります。
5月から起こっていたフランス国内の混乱を収拾するため、1789年8月28日にルイ16世の今後を決めるための国民会議が開かれました。
その際に、半円形の会場の中央に設置された議長席から見て、右翼の席に「革命後もイギリスのように王室を存続させることに賛成」していた王党派が座り、左翼に「革命後は王室制度を廃止」を訴えた急進派が座ったのがきっかけとなり「右翼」「左翼」という言葉が生まれました。
現在でも、フランスで行われる国民会議でもこの席の配置は伝統的に続いています。
右翼と左翼の生い立ちに関しては、分かりやすくそして面白く紹介している仏独共同放送番組「Karambolage」も一緒にご覧ください。
右翼と左翼の傾向の違い
フランスでは「極右」=「ファシズム」=「ナチス」が一般的な考え方です。
しかし、当のナチスの正式名称は「国家社会主義ドイツ労働者党」=「社会党」なので、「左翼」では?と考える方もいらっしゃると思います。
1789年に生まれたこの「右翼」「左翼」という考え方は、決して固定されている観念ではなく、歴史や時代背景、また政治のスローガンにより少しずつ変わり続けています。
ここでは、2021年のフランス政治における右翼と左翼の概念の違いをご紹介します。
#日本人の私達からすると「これが右で、これが左なの?」と思うとこともたくさんありますが、その違いを知ることでフランス人の感覚を理解することができるんです!
フランス的右翼思想
資本主義、権力、規律、伝統、国家、家族、宗教(特にキリスト教)など
フランス的左翼思想
発展、人権、個人の尊重、社会正義、平等、人とのつながり、非宗教性、反人種差別、環境・エコロジー、反資本主義など
子どものためにニュースに出てくるキーワードを解説したアニメ『1 jour 1actu』でも、フランス政治における右翼と左翼を簡単なフランス語で説明していますので、初級の方もフランス語の字幕をつけて是非挑戦してみてください。
まとめ
2010年に劇場公開された映画『戦争より愛のカンケイ』は、フランス人の政治思想をコミカルに描いた異色のラブコメディーで、フランスでは大ヒットしました。
#全登場人物が「どこにでもいる、まさしくリアルなフランス人!」
人種差別、政治的思想など難しい問題をこれだけ軽く見せることができるのは、フランス映画ならではと言えるでしょう。
映画をより理解するためだけでなく、フランス人と会話をする上でも、フランス政治を知ることが大切です。
右翼や左翼という言葉が生まれた1789年以降、同じ「左右」であっても、時代によって変わっていくイデオロギー、そして国によって全く異なる特性を見比べてみるもの面白いと思います。
フランス語を学べるだけでなく、フランス人の政治や社会に対する考え方にも楽しく触れることができる、オススメの映画です。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。