映画『メルシィ!人生(Le placard)』のあらすじ・感想と原題に秘められた意味とは

※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。

フランスは「バカンス大国」と言われたりします。

フランス人の働き方は「ワーク・ライフ・バランス」や「仕事の効率化」の観点から日本と対照的で、フランスでの働き方が参考にされることも多いようです。

こんにちは!イル・ド・フランスに住んでいたシモンヌです。

日本と対照的な「フランスでの働き方や会社の雰囲気」とは、どのような感じなのでしょうか。

疑問に思ったことはありませんか?

そんな方におすすめなのが、映画『メルシィ!人生』

この仏映画ではフランスの会社の様子を垣間見ることができるので、「フランス語圏で働いてみたい!」と考えている人には、特におすすめの作品です。

私の感想とともに、映画のあらすじと原題に秘められた意味、本作品で学べるフランス語単語についてご紹介します。

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フランス映画『メルシィ!人生』の概要

今回ご紹介する作品は、2001年に公開された映画『メルシィ!人生(原題:Le Placard)』

社会風刺と皮肉的なユーモアを取り入れつつも、人情味溢れたコメディ映画です。

脚本・監督は「フランス人ならみんな知っている」と言っても過言ではない、映画「奇人たちの晩餐会」を手掛けた名手フランシス・ヴェベール

そしてキャストには、フランス映画界を代表する俳優陣。

愉快な競演が注目の作品です。

フレンチ・コメディはただ面白いだけではなく、「笑い」に社会問題や政治的な内容を取り入れるのが特徴。

本作も、フランシス・ヴェベール監督によってさまざまな社会問題を取り入れながらも、ほっこり笑えます。

まさにフレンチ・コメディの奥深さが詰まってますね!

映画『メルシィ!人生』の監督&キャスト

監督(Réalisé par) フランシス・ヴェベール(Francis Veber)
出演(Avec) ダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)
ジェラール・ドパルデュー(Gérard Depardieu)
ティエリー・レルミット(Thierry Lhermitte)
ミシェル・ラロック(Michèle Laroque)他

監督:フランシス・ヴェベール(Francis Veber)

フランシス・ヴェベール(Francis Veber)は、監督、脚本家、プロデューサー、劇作家、俳優などマルチな才能で活躍し、主に彼はコメディの脚本を執筆、監督を手掛けました。

ヴェベールの作品はアメリカでもリメイクされるなど、世界的にも人気で今もなお愛されている作品が多くあります。

有名な作品はたくさんありますが、1981年の『La Chèvre』、1983年の『Les Compères』で成功を収め、さらに1998年の『奇人たちの晩餐会』では大ヒットとなりました。

今回ご紹介している『メルシィ!人生』も、当時フランスで大注目となりました。

フランソワ・ピニョン役:ダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)

主人公のピニョン役には、フランス映画界でトップに立ち続けるダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)。

1986年の映画『愛と宿命の泉』でセザール賞の最優秀男優賞を受賞し、1996年の映画『八日目』ではカンヌ映画祭男優賞を受賞するなど、演技派で知られる俳優です。

本作品ではダニエル・オートゥイユが妻や子供からも相手をされず、会社でもおとなしく面白味のない人と言われてしまう冴えない中年男性を、見事に演じています。

サンティニ役:ジェラール・ドパルデュー(Gérard Depardieu)

フランスを代表する俳優のジェラール・ドパルデュー(Gérard Depardieu)が、ピニョンの同僚として差別主義者でマッチョ思想なサンティニ役を演じています。

ジェラール・ドパルデューは、1990年の映画『シラノ・ド・ベルジュラック』でカンヌ国際映画祭男優賞、セザール賞では主演男優賞を受賞するなど、コミカルな役から悪役までこなす名高い俳優です。

俳優業以外での話題も多く、2013年には「富裕税への反発」からロシア国籍を取得したことにより、当時のフランスではかなりの論争が繰り広げられました。

本作品には、フランスで名高い実力派バイプレーヤーがたくさん出演していることも見どころのひとつです。

彼等が織りなすテンポの良い演技にも注目です。

フランス映画『メルシィ!人生』のあらすじ

長年勤めてきたコンドームの会社をリストラで解雇されることを知った、中年男性のフランソワ・ピニョン。

妻子にも相手にされず絶望した彼は、投身自殺を図るも隣人のベロンに救われます。これをきっかけにピニョンはベロンとともに解雇回避の策として、ゲイであると偽のカミングアウトをするのだが、思いもよらない騒動へと繋がっていく……。

フランス映画『メルシィ!人生』の予告編

映画『メルシィ!人生(原題:Le Placard)』の予告編はこちらです。

『メルシィ!人生』映画の感想とネタバレ

この映画は単なるドタバタコメディではなく、LGBT、差別、リストラ、家庭崩壊と様々な問題提起を取り入れており、2001年の作品にもかかわらず現代社会においても考えさせられる作品だと思います。

例えば、主人公のピニョンがゲイだと噂になると、「あの仕草、歩き方はそうっぽい」など、周りの人がゲイに対する偏ったものの見方や考え方で彼を見始め、周囲の態度や関係性が変化していくのですが、自分自身では気づかない無意識の偏見がとてもわかりやすく描かれています。

この映画でも登場する、LGBTの法的権利を求める社会運動の場でもある「ゲイ・プライド」

パリでは「Marche des fiertés LGBT=LGBTプライド・パレード」と呼ばれ、1977年から毎年6月下旬に開催されています。

映画『メルシィ!人生』で学べるフランス語&仕事で使えるフランス語

『メルシィ!人生』のフランス語の原題は『Le placard(ル・プラカール)』です。

placard 戸棚、押し入れ、クロゼット

日本語とは全く違った題名です。

なぜ、「戸棚」なのでしょうか!?

実は、フランスでは「閑職に追いやられてしまった窓際族」のことを、「Mettre au placard(戸棚に入れる)」と言いますので、これが原題の由来かと思われます。

フランスの場合、「窓際」というよりクロゼットや押し入れのような、窓もない暗い場所に追いやられてしまうイメージなのかもしれません。

この「placard」という言葉、隣人のベロンと主人公ピニョンの会話のシーンで言葉遊びが含まれています。

ただ、日本語の映画字幕では伝えきれていないところもあり、観る前に事前に知っていると、もっと映画が楽しめると思いますのでご紹介します。

隣人ベロン:Si vous voulez garder votre emploi…
(クビにならない方法は…)

ピニョン:Si je veux garder mon emploi ?
(その方法は?)

ベロン:Sortez du placard.
(戸棚から出ろ(カムアウト))

ピニョン:Comment ?
(戸棚?)

ベロン:Sortez du placard, avouez votre homosexualité.
(ゲイだと公表(カムアウト)するんだ)

出典:映画『メルシィ!人生』 和訳は字幕より引用

解雇されそうな主人公のピニョンが、隣人ベロンから「Sortez du placard(戸棚から出ろ)」と言われます。

実はこの表現、フランス語ではあまり使うことがありません。

本作品では、英語で「同性愛者であると公表する」という意味の「Come out of the closet」(フランス語では「Sortir du placard」)という「ゲイを公表する」という意味と、解雇されないために「Mettre au placard」の「戸棚から出る」という意味の両者がダジャレのように含まれているのです。

映画『メルシィ!人生』で使われているフランス語単語

まず、日常会話などで知っておくと良い単語をご紹介します。

voisin(e) 隣人
con(ne) ばかな、間抜けな、ばかげた(スラング)
moche 酷い、みっともない、不細工な(話し言葉)
montage 合成写真、モンタージュ
merde ① 糞、くそ ②ろくでもないやつ(もの)
スラングで「くそっ、ちぇっ、しまった、ちくしょう」などの意味でも使われるが、使うときは気を付ける必要がある。
être dans la merde どうにもならない状態である(スラング)
本作品では「困ったことになった」と訳されている
antipathique 感じの悪い
franc フラン
フランスの旧通貨単位、2002年からユーロの流通により廃止
drôle 滑稽な、愉快な、おもしろい
raciste 差別主義者
pédé Pédérastieの話し言葉で、日本語だと「ホモ」や「オカマ」。侮辱的な意味合いを含むということで今は使われない。
次に仕事や会社関連のフランス語単語です。
entreprise 会社、企業
bureau 事務所、会社、営業所、役所
patron 企業主、雇用者
président 大統領、会長、総裁、議長
本作品では「社長」に「Monsieur président」と使用している
stagiaire 研修生
chef (集団・組織の)チーフ、リーダー
本作品では「上司」と翻訳されている
visite usine 工場見学
harcèlement sexuel セクハラ
réduction de personnel
restructuration
リストラ
secrétaire du patron
secrétaire du P.D.G.
社長秘書
secrétariat 秘書課
service du personnel 人事部
service commercial 営業部
comptabilité 経理部
service des affaires générales 総務部
heures supplémentaires 残業

なおフランスの会社事情については、下記の記事でも詳しく紹介しています。

まとめ

『メルシィ!人生(Le placard)』では、フランスの会社の様子がどのような感じなのか垣間見ることができ、上司や同僚との話し方や接し方などの参考にもなると思います。

ただあくまでコメディなので、参考にしすぎると危ない場面もありますのでご注意ください。

話し言葉やスラング、仕事や会社で使う単語もたくさん登場するので、フランス人が普段使う生きたフランス語を学ぶことができます

この作品では、日本語字幕では表現できない「Sortir du placard」のような言葉遊びが登場し、そのような時には日本語字幕に「 “ ” 」の記号が付いています。

そういったシーンに注目し意味を理解しながら観ると、なおいっそう楽しめると思います。

「人生何があるかわからない。でも意外なことで人生を好転させられるかもしれない。」

私はそんな感想をいだきましたし、笑えて前向きになれる作品です。

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