フランス映画『おかしなおかしな訪問者』のあらすじと中世フランスの時代背景

1993年に上映され、フランス映画のフランス国内映画興行収入歴代5位(2021年4月現在)の大ヒット作、『おかしなおかしな訪問者(原題:Les Visiteurs)』をご存知でしょうか?

日本でも人気のフランス人俳優ジャン・レノ(Jean Reno)と、70年代よりコメディーを中心に活躍しているクリスチャン・クラヴィエ(Christian Clavier)が出演した映画です。

ストーリーは、なんと監督のジャン=マリー・ポアレ(Jean-Marie Poiré)が17歳の時に、「数学の授業中に走り書きしたもの」がベースになっています。

ポアレ監督は、段ボール箱の中で忘れ去られていた高校時代の数学ノートを、1990年に引越準備の際にたまたま見つけ、あまりにも面白いストーリーだったため、それを元にクリスチャン・クラヴィエと共に脚本を仕上げたそうです。

こんにちは!数学の授業中は睡魔と戦うことで精一杯だったカタクリです。

この記事では、『おかしなおかしな訪問者(原題:Les Visiteurs)』のあらすじと、物語をより良く理解するための中世ヨーロッパの時代背景についてご紹介します。

空前の大ヒット作『おかしなおかしな訪問者』のあらすじ

1123年中世中期、ルイ6世(Louis VI)はイギリス王の姪キャスリン(Kathlyn)と小屋で逢い引きをしていました。

モントミライユの伯爵ゴッドフロア(Godefroy, comte de Montmirail)が見張りをしていると、イギリス兵が近づいていることに気がつき、間一髪のところでルイ6世を助け出すことに成功します。

この功績の褒美として、ゴッドフロアは許嫁であったプイユ公(Pouille du duc)の娘フレネゴンド(Frénégonde)との結婚が晴れて許されます。

その報告と挙式の準備のため、ゴッドフロアが下僕のジャクイユ(Jacquouille)達を連れてフレネゴンドの待つ城に戻る途中、森で怪しげな儀式をしている魔女をみつけてしまいます。

宗教裁判にかけるべく魔女を捕まえ城に戻ると、魔女に魔法の薬を盛られたゴッドフロアは、フレネゴンドの目の前でプイユ公を誤って矢で打ち抜いて殺してしまったのです。

この事件が原因でフレネゴンドから婚約破棄されたゴッドフロアは、ショックのあまり大魔術師エルゼビウス(le mage Eusæbius)に助けを求めに行きます。

「死者を蘇らせることはできないが、事件が起こる前に時間を遡ることはできるかもしれない」

そう大魔術師エルゼビウス言われ、ゴッドフロアはジャクイユと共に「過去に戻れるかもしれない秘薬」を一気に飲み干しました

しばらくして二人が目を覚ますと、そこは森の中。

ジャクイユが森を出ると、車道で「黄色い郵便局配達自動車」に遭遇します。

見たことのない「黄色い物体」に戸惑っていると、中から黒人が出てきたのです。

生まれて初めて黒人を見たジャクイユは、驚きのあまり森に戻ってゴッドフロアを呼び、二人で自動車を叩き壊しました。

過去に戻ったはずなのに何かがおかしいと混乱しているゴッドフロアは、しばらくすると教会を見つけ、中に入り祭司に助けを求めます。

ゴッドフロアが壁に貼ってあるカレンダーを見ると、そこには「1992年」と記してあったのです。

映画『おかしなおかしな訪問者』で学べる中世時代のフランス

映画『おかしなおかしな訪問者』が大ヒットした要因の一つは、フランス人にはおなじみの「中世時代」が描かれたことでしょう。

フランスでは、中世時代を背景にした映画、ドラマ、小説、バンデシネは非常に人気があります

日本で「戦国時代」の作品が人気なのと似ていますね。

ヨーロッパにおける中世とは、西ローマ帝国滅亡(5世紀後半)からルネサンス到来(15世紀くらい)までの約1,000年間の事を指します。

日本人にはあまり馴染みのないフランスの中世時代ですが、次の2つの時代背景を知っていると、より本編を楽しむことができるようになります。

中世ヨーロッパにおけるキリスト教の存在とは

中世時代のヨーロッパで切っても切れないのが「キリスト教」です。

当時のヨーロッパにおいて、世界はキリスト教を中心に回っており、政治、経済、文化などはキリスト教に沿った形で発展していました。

映画の登場人物ゴッドフロアとジャックイユが生きていた時代は、「時課」と呼ばれる時間区分になっており、時間に合わせて1日に8度の祈りを行われていたそうです。

例えば、1日が始まる時間は1時課(「いちじか」と読み、フランス語では「Le Prime」)と言われ、朝の6時に当たります。

その後は3時間毎に時間が区切られ、一日の終わりを21時として晩堂課(「ばんどうか」、フランス語では「les Complies」)として、就寝前の祈りの時間を指していました。

映画『おかしなおかしな訪問者』では、子孫であるベアトリス(Béatrice)の家の居間で、ゴッドフロアとジャックイユがラテン語で祈りをするシーンがあります。

これが、「一日の終わりの祈り」(la prière des complies)を表す場面になっているのです。

中世時代のヨーロッパにおける衛生環境

未来にタイムスリップしたゴッドフロアとジャックイユは、出会う人々に「臭い!」と言わます。

というのも、中世時代の衛生環境の悪さは「今日も尚衛生的ではないフランス史」の中でも一際ひどかったようです。

「身分に関わらず、人々は人生で一度も歯磨きや髪を梳かすことがなかった」

そう言い伝えられている程なので、ゴッドフロアとジャックイユは「歯」や「髪の毛」がどんな匂いを放っていたかは想像がつくことでしょう。

そして中世では風呂に入ることはなく、濡れた布で年に数回のみ、身体の汚れを拭き取る程度だったと言われています。

理由としては、水に浸かることにより皮膚から病原菌が入り、病気になってしまうと信じられていたためです。

ゴッドフロアとジャックイユが湯船で身体を洗うシーンでは、おそるおそる、身体を直接お湯につけないように肌着を脱がずに軽く洗っていたのには、そういった理由からです。

しかも、「年に数回のみ身体の汚れを拭き取る程度」という習慣は、中世以後も根強く残りました。

18世紀になってもなお、ヴェルサイユ宮殿を建てた太陽王ルイ14世でさえ、76歳の生涯で一度もお風呂に入らなかったとのエピソードがあるくらいです。

医学の発展により、「身体を洗って清潔を保つこと」が勧められるようになりましたが、パリ市内で一般家庭の水道環境が良くなったのはなんと1980年に入ってからです。

それまで一般庶民のアパートには個別にシャワーやトイレが設置されてなかったので、共同シャワーや共同トイレを使うか、市営のシャワー浴場を利用していたということです。

まとめ

1993年に上映され、フランス国内映画興行収入歴代5位の大ヒット映画『おかしなおかしな訪問者』は、なんとポアレ監督が17歳の時に、数学の授業中に走り書きした物語がベースになっています。

フランス人の大好きな「中世時代の物語」と、人気俳優ジャン・レノやクリスチャン・クラヴィエはもちろんのこと、その他、周りを固める俳優陣もとても素晴らしかったのが、大ヒットの要因だったようです。

個人的に、ヴァレリー・ルメルシェ(Valérie Lemercier)がゴッドフロアの子孫ベアトリスを、見事に「典型的なブルジョワなフランス人女性」を演じていて素晴らしいと思っていたので調べてみると、1994年のセザール賞助演女優賞を受賞していました。

必ずしも歴史に忠実というわけではありませんが、映画『おかしなおかしな訪問者』は中世時代のフランスを面白おかしく垣間見るのに最適な一作です。

ただし「フランス語学習」の視点では、中世に関する単語や言い回しが多いため、フランス語上級者であっても字幕なしで理解するのは難しいかもしれません。

純粋に「コメディー映画」として楽しむのがオススメの作品です。

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