フランスホラー映画『フロンティア』のあらすじとネタがよりよく分かるストーリー背景

2007年に大ヒットしたハリウッド映画『ヒットマン(Hitman)』のグザヴィエ・ジャン(Xavier Gens)監督が初めて手がけた長編映画作品『フロンティア(原題:Frontière(s))』

この記事でご紹介する映画『フロンティア』は2007年に公開され、フランスの映画情報サイト「アロシネ」のユーザー評価で低評価を得ながら、2021年の現在でも一部のホラー映画ファンにカルト的な人気を誇っているフレンチ・スプラッター映画です。

こんにちは!ホラー映画は、残虐なシーンよりも女性の叫び声に恐怖を感じるカタクリです。

「映画のあらすじ」「映画の冒頭のストーリー背景」を通して、『フロンティア』の本当の恐ろしさに迫ってみたいと思います。

フランス社会を映し出したホラー映画『フロンティア』のあらすじ

フランス大統領選挙の決選投票(フランス大統領選挙は「二回投票制」になっており、得票数上位二人が2回目の投票を行い当選者を決めるシステム)に、保守政党と極右政党が残り、その反発から移民者が多く住むパリ郊外で、移民出身者の若者たちを中心に暴動が起こってしまいます。

フランスの情勢にうんざりしていたパリ郊外に住むマグレブ(北西アフリカ諸国)系の若者、アレックス(Alex)、サミ(Sami)、サミの妹でアレックスの子どもを身ごもっているヤスミン(Yasmine)、ファリド(Farid)、トム(Tom)の5人の若者は、この機会にアムステルダムへ移住することを決意。

途中、資金調達のために強盗行為を行い大金を手に入れますが、警察に見つかってしまい銃撃戦の末サミが撃たれ重体になってしまいます。

グループは二手に分かれ、アレックスとヤスミンはサミを病院へ、そしてファリドとトムは先に進むことに。

病院へ着いたサミですが、医者に診てもらう前に力尽きてしまいました。

一方、先に進んだファリドとトムはフランスの国境を超え、ルクセンブルクに到着します。

疲れ果てていた二人は古びた怪しいホテルを見つけ、宿泊しようと中に入ると、そこにはジルベール(Gilberte)とクローディア(Klaudia)という女性がいました。

トムはジルベールをナンパしますが、この事がきっかけでパリ郊外から脱出した若者たちが恐怖のどん底に突き落とされることに…

映画の冒頭のストーリー背景

人を切り刻んだり、食べてしまったりとショッキングなシーンが多く、フランスでは16歳未満、そして日本では18歳未満の鑑賞が禁止されている映画『フロンティア』。

しかし、映画の中で最も「恐ろしい」のは、フィクションのスプラッターシーンではなく、彼らがフランスを出るきっかけになった「ほぼノンフィクション」の冒頭シーンにあります。

ここでは、映画の冒頭のストーリー背景を見ながら、フランスの社会問題にスポットを当ててみます。

実話が元!「保守政党VS極右政党の大統領選挙」

2007年に公開された映画『フロンティア』、その5年前に実際に保守政党と極右政党の間でフランス大統領決選投票が行われました

2002年当時、選挙前の世論などから保守政党の共和国連合からジャック・シラク(Jacques Chirac)と社会党のリオネル・ジョスパン(Lionel Jospin)が決選投票を争うと考えたれていましたが、蓋を開けてみると極右政党である国民連合のジャン=マリー・ルペン(Jean-Marie Le Pen)がジョスパンを押し退けて、シラクに続く投票数を獲得していたのです。

2回目の決選投票が実施される2週間の間、対ルペンのデモがフランス各地で行われました。

5月5日の2回目の投票結果はシラクが82%、ルペンが18%の大差で保守政党が勝ちましたが、極右=ファシズム=ナチスというイメージが根強いフランス人にとって、この選挙結果は国民にとって一種のトラウマ体験になっています

社会党による約30年間の政策が原因か

2002年にこのような結果になった背景の一つとして、1974年のジスカールデスタン(Giscard d'Estaing)大統領から1995年のミッテラン(Mitterrand)までの、約30年に渡る社会党の政策に対する国民の落胆が理由だとされています。

主には、制限のない移民受け入れ問題や経済政策問題、治安・経済共に悪化によって「左翼離れ」が起こってしまったと言われています。

映画『フロンティア』の5人の登場人物は、この30年間の社会党政権よって、旧植民地の国から出稼ぎとして来仏し、パリ郊外に建てられた低所得者のための高層団地に住むことになった移民たちを両親達持っている若者たちなのです。

そんな彼らのフランス社会への不満が、映画『フロンティア』の冒頭シーンであり、未だに解決策が見つからないフランスの社会問題を映し出しています

まとめ

映画『ヒットマン』が大ヒットしたため、急遽上映されたジャン監督の長編映画デビュー作『フロンティア』。

アメリカのホラー作品の影響を受けたシーンも多く、辻褄が合わない設定が多いため映画自体は低評価を受けていますが、2021年現在でも一部のホラー映画ファンに根強い人気を誇っています。

エンディングはアメリカ映画にはない情緒深い終わり方になっており、フランス映画らしさを感じさせます。

映画の冒頭では、背景にあるフランスの社会問題「移民出身者の若者たち」の揺れ動く心を、リアルに映しているため、フランス語を学ぶというよりも、フランス社会を学ぶという観念で見るのに向いています

ただしグロテスクなシーンが多いので、夜中一人で観るときは要注意です!

なお、フランスの社会問題に興味ある方は、ありのままの移民問題を映し出した話題作『レ・ミゼラブル(原題:Les Misérables)』(2019年公開)もおすすめです。

ヴィクトル・ユゴー著の同名作品がありますが、全く別のストーリです。

大絶賛された本作は第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、第45回セザール賞では4つの賞を受賞しています。

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