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ただ母親に愛されたかった……
世間で「毒親」という言葉が使われるようになり、20年近く。
日本だけでなく、フランスでも親による過干渉やネグレットなどに苦しむ子どもたちが社会問題になっています。
この記事を目にするみなさんの中にも、親子関係で苦しんでいる、または苦しんでいたという経験を持っている方もいるでしょう。
そんな方にぜひ見ていただきたいフランス映画が、『ヴィオレッタ(原題:My Little Princess)』です。
主人公のヴィオレッタ(Violetta)を演じたのは、オーディションで500人の候補の中から選ばれ本作品でデビューを果たしたアナマリア・ヴァルトロメイ(Anamaria Vartolomei)、そして母親のアンナ(Hanna)は、フランスを代表する大女優イザベル・ユペール(Isabelle Huppert)が演じています。
さらに、アップデイク(Updike)役こと、70年代にイギリスで人気を博したパンクバンドセックス・ピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャス(Sid Vicious)を演じたのは、オーストラリアで絶大な人気を誇るミュージシャン、ニック・ケイヴ(Nick Cave)の息子ジェスロ・ケイヴ(Jethro Cave)。
それでは早速、映画『ヴィオレッタ』のあらすじと、母娘が加害者と被害者として対決したイオネスコ裁判について解説します!
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母と娘の在り方を問うフランス映画『ヴィオレッタ』のあらすじ
低所得者が住む団地の中庭でポツンと一人で遊ぶヴィオレッタ。
10歳になる彼女は、曽祖母と一部屋のアパートに住んでいました。
母親のアンナは家に寄り付かず、たまに帰ってきても曽祖母とガミガミ口喧嘩が絶えず、すぐに部屋を出て行って待ち合わせていた男性の元へ。
そんなある日、プレゼントとしてかわいいティアラを片手に再びアンナが現れます。
「彼にもらった」というカメラを持参したアンナは、まともな生活をしてほしいと頼む曽祖母と激しく口論し、「もう二度と来ない!」と言い残しバタンと扉を閉めて出ていってしまうのです。
しばらくするといつもの団地の中庭で遊ぶヴィオレッタに、珍しくアンナは声をかけ自分の部屋に誘います。
実は、ヴィオレッタの住む建物の隣のアパートにアンナは住んでいたのです。
昼間なのに真っ暗で、不気味な人形や鏡などが置いてある部屋。
ハッと何か思いついたように、ヴィオレッタのおさげ髪をほどき、白いドレスを着させ写真を撮り始めるアンナ。
生まれて初めて親子水入らずの時間が嬉しいヴィオレッタは、母親を喜ばせようと要望に応えてせっせとポーズをとるのですが……
35年後の母娘対決「イオネスコ裁判」について解説
ショッキングな内容のフランス映画『ヴィオレッタ』は、監督のエヴァ・イオネスコ自身の体験を元に描かれています。
ここでは、2011年に本作品が公開された後に起こったイオネスコ裁判について解説します。
ゴシックの女王、写真家イリナ・イオネスコ
1930年にルーマニアで生まれ。
実の祖父の性的虐待によって妊ってしまったイリナの母親は、望まない子を産んだとして出産後に蒸発してしまいます。
その後、異動サーカス団を営んでいた祖母と叔父さんたちと一緒に暮らします。
サーカスの演技中に事故にあい、リハビリを兼ねて絵を描き始めた頃、オランダの前衛芸術家コルネイユ(Corneille)と知り合います。
彼から一眼レフカメラをプレゼントされたことで、34歳で写真の道を進むことに。
そして40代に入り、カメラマンとして有名になっていきます。
フレンチロリータのアイコン、エヴァ・イオネスコ
1965年にパリに生まれたエヴァは、父親の存在を知らないまま母親であるイリナの祖母に育てられます。
4歳頃からイリナの被写体として活動し始めまるのです。
なんと11歳でヌード写真が米国の雑誌プレイボーイやドイツの雑誌などの表紙を飾りました。
13歳の時に麻薬の使用が発覚してから、保健所によって母親と引き離され養育所へ、そのほかにもひったくりなど繰り返し更生所へ送られます。
70年代にはまだ未成年でありながら、数々のポルノ作品に出演。
その後もセクシー路線の女優、モデルとして映画やテレビで活躍していきます。
2012年、イオネスコ裁判
映画『ヴィオレッタ』が公開された翌年、2012年11月12日、4歳から12歳の間に撮影したヌード写真をアートブックとして出版し、さらに男性雑誌に売ったとし、エヴァは母親であるイリナに対して20万ユーロの損害賠償を求める裁判を起こしました。
そして、イリナの作品が「わいせつ」か「芸術」、さらには「児童虐待」になるかに焦点が当たります。
裁判の結果
2012年12月17日、イオネスコ裁判の判決が言い渡されます。
70年代は「性」に対して自由で寛大だったため、2012年の価値観では裁くことができないとしながらも、母親のイリナに1万ユーロ(約143万円)の支払いと、すべての写真のネガフィルムを渡すという判決が下りました。
裁判に関する参考記事
- Eva Ionesco : "Me photographier, c'était me mettre dans une boîte"
- Irina Ionesco condamnée pour les photos sulfureuses de sa fillel
まとめ
母親と一緒にいるために写真のモデルを受け入れたことで、親子関係に苦しんでいく少女の姿を描いたフランス映画『ヴィオレッタ』。
エヴァ・イオネスコ監督のこだわりが随所に見られる作品に仕上がっており、2011年のカンヌ映画招待作品として、そして2012年にはセザール賞にもノミネートされています。
日本語字幕もあるので、フランス語の初心者の方にもぜひ見ていただきたい作品の一つです。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。