フランスのフィルム・ノワール映画『チャオ・パンタン』のあらすじとコリューシュの人物紹介

フランスのユーモリスト「コリューシュColuche)」をご存知でしょうか。

コリューシュは、70年代から80年代にかけて、フランスで絶大的な人気を誇った社会派ユーモリストです。

この記事ではそんなコリューシュが、シリアスな役を演じて大きな話題となったのが、1983年の映画『チャオ・パンタン(原題:Tchao Pantin)』。

撮影当時、主人公のランベール(Lambert)のように、コリューシュ自身もうつ病とアルコール中毒に悩まされており、その迫真の演技から1984年のセザール最優秀主演男優賞を受賞しました。

みなさん、こんにちは!80年代のフランス映画が大好きなカタクリです!

記事後半ではコルーシュの人物像についても詳しく紹介させていただきますが、まずは映画『チャオ・パンタン』あらすじからご紹介します。

80年を代表するフィルム・ノワール映画『チャオ・パンタン』のあらすじ

ガソリンスタンドで夜間の給油係として勤めているランベールのもとに、ユーセフ・ベンスーサン(Youssef Bensoussan)という青年が、警察に追われるような形で訪ねてきました。

何気ない会話をする中で不思議と二人は打ち解け合い、その日からユーセフは毎晩ランベールのもとに訪ねるようになります。

アル中であるランベールと麻薬の売人であるユーセフ、二人の共通点は孤独でした。

そんなある日、ユーセフはパンクのローラ(Lola)と知り合い恋に落ちます。

なんとかローラをデートに誘いたいユーセフは、売人のリーダーであるラシッド(Rachid)のバイクを無断で借り出かけます。

ある夜、ユーセフが売らなければいけないはずだった麻薬が、何者かに盗まれていました。

慌てたユーセフは、盗まれた分の麻薬の売り上げをなんとか工面しようと、ランベールに助けを求めます。

ランベールは手元にあるだけのお金を渡し、足りない分は明日渡すと告げると、ユーセフは済まなそうにラシッドの元へ向かいます。

しかし、しばらくすると、ユーセフは二人乗りのバイクに追われる形で、ガソリンスタンドに戻ってきました。

そして、ランベールの目の前で殺害されてしまいます。

ラシッドの命令であることを知ったランベールは、ユーセフが恋していたローラの協力を得て復讐を決意します。

そして、次第に語られることのなかったランベールの過去が浮き彫りになっていくのでした。

80年代に流行った言葉「チャオ・パンタン」

タイトルになっている『チャオ・パンタン』とは、直訳すると「さらば操り人形」と言う意味です。

なんとも意味深なタイトルですが、映画の内容と何の関係があるのだろうと調べてみると、面白いことがわかりました。

「チャオ・パンタン」とは80年代に流行った言葉で「Salut mon pote(じゃぁな、友よ)」 や「Adieu l'ami(さらば友よ)」という意味で使われたそうです。

亡くなったユーセへランベールが送った言葉と捉えると、二人の友情が感じられる切ないタイトルになっています。

現在では使われないフレーズなので、「チャオ・パンタン」と言えば映画の『チャオ・パンタン』を示す時のみに使われます。

時代によって消えていくフランス語の表現に触れることができるのも、映画の魅力と言えるでしょう。

今もなお絶大な人気を誇る社会派ユーモリスト、コリューシュ

政治や社会を痛烈に批判したユーモアで国民に絶大的な人気を誇り、今もなおユーモリストの代名詞になっているコリューシュ

ここでは70年代から80年代にかけ活躍し、1986年に交通事故により41歳という若さで他界してしまったコリューシュについてご紹介します。

スケッチ『C'est l'histoire d'un mec(ある男の話し)』

スケッチとは実際にいる人物、または実際にいそうな典型的な人物像を面白おかしく一人で演じるコントの事です。

それまで舞台俳優やテレビシリーズなどで仕事をしていたコリューシュは、1974年に初めて手がけたスケッチ作品『ある男の話し』 の成功により、人気ユーモリストの仲間入りを果たしました。

このスケッチでコリューシュは、「ちょっと抜けているけど人はよく、シャイな性格ではっきり物が言えず、よく知らないけれど外国人が嫌いという事にしていて、テレビ報道に影響されやすく、70年代のパリ郊外に住むステレオタイプな白人男性」を演じています。

スケッチでは内容の無い話を延々としていますが、こんな話し方をするフランス人男性は本当にいるので、今でも見ていて本当に面白いです。

その後、彼のトレードマークとなる天然パーマ・赤い鼻にサスペンダー付きのズボン・黄色い T シャツの衣装を着ながら「ステレオタイプな白人男性」演じる様になります。

こちらのスケッチは、『Le flic(警官)』と言うタイトルで、警官を通じて、フランスの現状を痛烈に皮肉ったものになっています。

大統領選挙に立候補

なんとコリューシュは、1980年に翌年のフランス大統領選挙の候補者として立候補しています。

立候補宣言当初は、ただの冗談のつもりだったようですが、フランスを代表する 社会学者のピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu)や哲学者のフェリックス・ガタリ(Félix Guattari)などの知識人から支持されるようになり、選挙前には16%の票は確実と言われるまでになりました。

しかし多方面からの政治的圧力により、選挙前に辞退してしまいました。

心のレストラン(Les Restaurants Du Cœur)の設立

Je ne suis pas un nouveau riche, je suis un ancien pauvre.
(俺はニュー・リッチじゃない。元貧乏人だ。)

と語っていたコリューシュは経済的に厳しい家庭に育ち、青年期は盗みで何度も警察のお世話になった経験があったそうです。

そんな幼い頃からの生活苦の経験から、成功後は積極的に社会慈善の活動を行なっていました。

中でも一番の有名なのは「心のレストラン」の活動でしょう。

1985年9月、当時人気絶頂だったコリューシュが、フランスのラジオで「毎日2000から3000食を無料で提供できるようなレストランを作りたい」と語りアソシエーション「心のレストラン」を設立しました。

設立当初は1年限定の活動予定でしたが、予想以上に利用者が多かったためその後も活動を継続し、現在に至っています 。

常にボランティアを募集しているので、ご興味のある方は是非参加してみください。

コリューシュ法(Loi Coluche)

彼の慈善活動の功績を称え、1988年成立された「チャリティー団体や企業などに寄付した個人の寄付金の最大75%を税金から控除する」という法律が「コリューシュ法」と名付けられました。

まとめ

70年代から80年代にかけてフランスで絶大的な人気を誇り、現在でもフランスのユーモリストの代名詞であるコリューシュ。

そんな彼がシリアスな役を演じて話題となった、1983年の映画『チャオ・パンタン』で1984年にセザール最優秀主演男優賞を受賞しました。

ユーモリストとしてのデビュー作『C'est l'histoire d'un mec(ある男の話し)』は、今もなお語り継がれ、フランス人にとっての古典スケッチと言えるかもしれません。

ご紹介した2本以外のスケッチも、YouTubeで見つけることができます。

フランス学習には向いていませんが、これがわかるようになるとかなりのフランス通だと思います。

彼がフランス社会に残した功績は大きく、特に彼の設立した「心のレストラン」は現在ではフランス全土に広がっています。

通年でボランティアを随時募集しており、イベント時だけの参加や週に一回、または定期的になど自分のスケジュールに合わせてお手伝いができて、どなたでも参加できます

フランスに来る機会がある時は是非「心のレストラン」のボランティアに挑戦してみてください。

80年代のフランス映画はコメディもシリアスもとても素晴らしい映画が揃っているので、今後も機会があれば色々な作品をご紹介したいと思っています。

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