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全ては神様の思し召なのか?
誰しもが持っている、子どもの頃の忘れられない嫌な経験。
しかし、そんなトラウマを克服しようとした人は、どのくらいいるでしょうか?
この記事では、過去のトラウマを乗り越えようと行動している、勇気ある大人たちにスポットを当てたフランス映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時(原題:Grâce à Dieu)』をご紹介します。
実際に起こった児童性的虐待事件「プレナ神父事件(Affaire Bernard Preynat)」を元に制作され、フランスだけでなくヨーロッパで大ヒット。
カンヌ国際映画祭やヴェネツィア国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭の1つベルリン国際映画祭では、見事審査員グランプリの銀熊賞を受賞しました。
幼少期のトラウマを乗り越えようとしている方に、ぜひ見ていただきたい作品の一つです。
それでは早速あらすじと、「プレナ神父事件」について解説していきます!
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それでもあなたは神様を信じますか?『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』あらすじ
銀行の役職につき、バリバリと仕事をこなしている40歳のアレクサンドル(Alexandre)は、5人の子どもに恵まれ、教師を務める妻とともにリヨンで幸せに暮らしている敬虔なカトリック教徒。
一見、誰から見ても順風満帆な人生に見える彼でしたが、プレナ神父がリヨンの教会に戻ってくることを知りゾクっと戦慄が走ります。
数日前、子どもの同級生の父親と世間話をしていた時のこと。
お互いに同じ時期に、カトリック教会が主催するボーイスカウトに参加していたことが判明。
楽しかった思い出をぺちゃくちゃと話していると、突然「アレクサンドル、君も、プレナ神父に触られたことがあるかい?」と尋ねられます。
その時は、ドギマギと動揺していたアレクサンドルですが、プレナ神父の犠牲者は自分一人ではなかったことにハッと気がつくきっかけになりました。
彼がボーイスカウトに参加していた頃から30年以上経った2014年。
いまだにプレナ神父が教会で「子どもたち」の指導を担当していることに憤りを感じたアレクサンドル。
自分の子どもたちを守るため、そしてこれ以上の犠牲者を出さないために、プレナ神父をカトリック教会から追放することを決意。
そのため、フランスカトリック教会のトップであるバルバラン枢機卿へ、過去の事件を告発することを決意したのですが……
この事件によって人生を破壊されてしまった青年エマニュエル(Emmanuel)を見事に演じたスワン・アルロー(Swann Arlaud)は、2018年の『ブラッディ・ミルク』でセザール最優秀主演男優賞の受賞に続き、本作品で2020年セザール最優秀助演男優賞に輝きました!
フランス映画『ブラッディ・ミルク』(セザール賞最優秀作品賞)のあらすじと舞台裏エピソード
映画の元になった「プレナ神父事件」とは?
本作品のベースとなった実話「プレナ神父事件」。
映画で描かれていたエピソードの実際の映像と、2022年現在に至るまでを一緒にみていきましょう。
ことの起こりは1991年と2014年
1991年、ドゥボー夫妻(Devaux)は当時10歳だった息子のフランソワ(François)が、プレナ神父に性的虐待を受けたことをリヨン教会に訴えます。
その処罰として、プレナ神父はリヨンから離れることになりました。
2014年、リヨン教会に戻ってくることが決まり、それを知ったアレクサンドル・エゼズ(Alexandre Hezez)は、バルバラン枢機卿へ自分の経験を告発し、プレナ神父をカトリック教会から追放するように申し願います。
2015年「La Parole libérée」設立以降
フランソワとアレクサンドル、そして匿名希望者が、2015年、プレナ神父の被害者の会「La Parole libérée」を設立。
翌年の2016年にジャーナリストを招いて行われた会見では、「La Parole libérée」への問い合わせ件数や警察の調べから、1971年から91年にかけ7歳から15歳まで合わせて80人以上の少年が性的虐待を受けていた、と発表しフランス中を震撼させました。
バルバラン枢機卿の問題発言
被害者のプレス会見の数カ月後、バルバラン枢機卿自身も会見を行います。
この中で、「La majorité des faits, grâce à Dieu, sont prescrits.(大半の事件は、神のおかげで、時効になった)」と発言。
「grâce à Dieu」を「heureusement (幸いにも)」の意味で使ったことにより、メデイアはもちろんのことカトリック教徒からも非難されること。
2018年に時効を延長
それまで未成年者が性的虐待を受けた場合、成人してから20年経つと時効になっていました。
しかしこの事件がきっかけで時効が見直され、成人してから30年にまで延長されたのです。
そのため、被害者は48歳になるまで、被害届を出せるようになったのです。
そして2019年以降
2019年に映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』が公開されたことで、この事件に関する人々の関心が一気に高まります。
この年、事件を長年知っていながらも隠し続けてきたバルバラン枢機卿が、隠蔽の罪で執行猶予付禁固6カ月の判決を言い渡されます。
数ヵ月後、教会裁判所はプレナ神父の還俗を決定します。
2020年、プレナ元神父は5年間の禁固刑が言い渡されますが、75歳という高齢と健康上の問題から、刑務所には入っていません。
その後、何度も自分の罪を告白したのに追放しなかったカトリック教会に、責任を転換しています。
現在も続く裁判
現在も裁判は続いています。
2016年の会見では、80人以上の被害者がいると発表されていましたが、その後のプレナ元神父の証言を元に弁護士が調べた結果、犠牲者が4,000人以上に上ることがわかりました。
まとめ
幼少期の辛い経験を乗り越えようと行動した、勇気ある大人にスポットを当てたフランス映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』。
2022年現在も解決していない事件を、真っ正面から捉えたオゾン監督の代表作です。
フランス語だけでなく、フランスの時事や、宗教が抱える閉鎖的な問題などを教えてくれる映画です。
出演者の演技も素晴らしく、2019年を代表したフランス映画と言っても過言ではありません。
トラウマを乗り越えようとしている方に、ぜひ見ていただきたい映画です。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。