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人間の本性(=ユマニテ)とは何か、を問う異色のサスペンス映画!
「映画は娯楽ではなく、『芸術』として残していくべきもの」をテーマに作品を撮り続けるブリュノ・デュモン(Bruno Dumont)監督。
この記事では、そんな彼の長編二作目、映画『ユマニテ(原題:L’Humanité)』をご紹介します。
デビュー作の『ジーザスの日々(La Vie de Jésus)』と共通し、「普段は見えない人間の本質」を見事に捉えた作品です。
本作品は興行成績としては振るわなかったものの、1999年の第52回カンヌ国際映画祭でグランプリ、男優賞、女優賞の三冠に輝きました。
- エピソードに説明がない!
- ストーリーと映像に付箋が多い!
- スッキリしない終わり方!
というフランス映画に重要なポイントを見事に抑えている本作品は、「分かりやすい映画は物足りない……」という大人にオススメです。
それでは早速映画『ユマニテ』のあらすじと、出演者たちについて一緒にみていきましょう。
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人間の本性を見事にさらけ出した映画『ユマニテ』
生まれ育ったフランス北部の小さな町で、警部補をしているファラオン・ド・ウィンター(Pharaon de Winter)。
彼は、同じ名前を持つ祖父であり画家「Pharaon de Winter」の名前がついた通りに、母親と二人で粛々と暮らしていました。
人の感情に敏感なファラオンは、地元の人に信頼される人徳者ですが、数年前に起こった「ある事件」がきっかけで、人生ががらりと一変し、心に深い傷を負追っていました。
そんなある日、町の外れのぼうぼうの茂みの中で、性的暴行を受けた11歳の少女の遺体が発見されます。
担当になったファラオンは、あまりに残酷な事件を目の前に、なかなか捜査に打ち込むことができません。
そんな彼の心の安らぎは、ひそかに恋心を抱いている同じ通りに住むドミノ(Domino)と話すこと。
魅力的でパサパサとした性格の彼女には、ジョセフ(Joseph)というスクールバスの運転手をしている恋人がいました。
カップルはなぜかいつもファラオンを誘って、食事やドライブに出かけます。
見せつけるかのようにイチャイチャする二人に、そっと寄り添うファラオン。
しかし、ドミノやジョセフ、そして町の人々とのどこか不思議でありながら、バランスが取れていた人間関係が「少女殺害」の捜査を通して、グラグラと揺れ始めます。
そしてファラオンは、それまで感じたことのない「人間の本質」を、次々と目の当たりにしていくことになるのです……
映画『ユマニテ』の予告編
映画出演キャストの気になる「その後」
演技経験のない一般人を好んでキャスティングをするデュモン監督。
本作品でも出演者全員が「素人」なのですが、カンヌ国際映画祭では主人公のファラオンを演じたエマニュエル・ショッテ(Emmanuel Schotté)が男優賞を、そしてヒロインのドミノを演じたセブリーヌ・カネル(Séverine Caneele)が女優賞を受賞するという快挙を成し遂げました!
そこで、気になるこの二人の「その後」を調べてみました。
エマニュエル・ショッテ
もともと軍人であったショッテは、除隊後、失業者になります。
ふらふらとしていたところ、職安でたまたまデュモン監督の出していた「映画の出演者募集」を目にし、演技経験が全くないにもかかわらず、気まぐれで応募。
多数の応募者の中からオーディションで候補の3人に残り、最終的に見事ファラオンに選ばれました。
しかし、カンヌ国際映画祭で男優賞した後、周囲の嫉妬などに悩まされ表舞台から身を引きます。
デュモン監督で復活か?!
長い沈黙の後、2018年、デュモン監督が手がけたテレビのミニシリーズ『Coincoin et les Z'inhumains(日本未公開)』に脇役で再びカメラの前に立ちました。
彼に関してはあまり情報がないのですが、存在感のある俳優なので、復帰が期待されます。
セブリーヌ・カネル
ベルギー国籍のカネルは、本作品に出演する前はフランス北部の繊維工場で働いていました。
転職を考えていた彼女もまた、職安でデュモン監督の「募集」を目にし、軽い気持ちで応募します。
ドミノ役を手にした後、演技未経験とは思えない存在感と、体を張った演技で見事にカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞。
その後の活躍
『ユマニテ』での演技が、同じくベルギー人の監督ベネディクト・リエナール(Bénédicte Liénard)の目にとまります。
そして、2002年、彼女の長編デビュー作『Une part du ciel(日本未公開)』のヒロイン役に起用されるのです。
続いて2004年にヨランド・モロー(Yolande Moreau)とジル・ポルト(Gilles Porte)監督作『潮が満ちるとき(Quand la mer monte…)』とベルトラン・タヴェルニエ(Bertrand Tavernier)監督の『ホリー・ローラ(Holy Lola)』に出演。
女優活動が順調に見えましたが、ここでいったん映画の世界から離れてしまいます。
そして再びカンヌ映画祭へ!
2017年、カネルはフランス映画の巨匠ジャック・ドワイヨン(Jacques Doillon)監督の作品『ロダン、カミーユと永遠のアトリエ(Rodin)』で、ロダンのパートナーであったローズ・ブーレ(Rose Beuret)役で復活。
この作品はコンペティション作品として第70回カンヌ国際映画祭に参加。
カネルは18年ぶりにカンヌに返り咲きました。
衝撃的なデビュー後、下積みをしながら活動を続けているカネルの次作にも期待したいです!
まとめ
「人間の本性(=ユマニテ)とは何か」がテーマの映画『ユマニテ』は、二作目にしてデュモン監督を「フランス映画界の若き巨匠」と言わしめた名作です。
1999年のカンヌ国際映画祭ではグランプリ、男優賞、女優賞を受賞しました。
あえてセリフを少なくし、登場人物の表情やフランス北部の風景のカット割りを多く入れることで、観客は映画をみながらテーマについて考えることができる仕組みになっています。
言葉での説明が少ない分、何気ない一言一言がストーリーを追う重要な鍵になるので、字幕が無くても理解できるフランス語力が中級以上の人にオススメの映画です。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。