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最後まで自分らしく生きたい!
と、自ら死を選んだ92歳の女性の実話をもとに描かれたフランス映画『92歳のパリジェンヌ(原題:La Dernière Leçon)』。
同じく実話を元に制作された映画『Tout s’est bien passé(読み方:トゥ・セ・ビアン・パセ、日本未公開)』と同様に「安楽死」を扱った本作品は、その深刻なテーマにも関わらず、どこか明るく、そして「最後まで生き抜くということはどういうことなのか?」ということを考えさせてくれるストーリー展開になっています。
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原作は、2004年に出版されたフランスの有名作家ノエル・シャトレ(Noëlle Châtelet)の小説『最期の教え、92歳のパリジェンヌ(青土社)』。
著者が実母であるミレイユ・ジョスパン(Mireille Jospin)と過ごした「最後の3カ月間」を描いた話題作で、フランスで最も権威ある文学賞の一つ、全国の高校生が選んだ「高校生のルノードー賞2004」を受賞しています。
ミレイユ・ジョスパンと聞いてピンときた方もいると思いますが、実は、1997年から2002年までフランス共和国16代目首相を務めたリオネル・ジョスパン(Lionel Jospin)の実母なのです!
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それでは早速、映画『92歳のパリジェンヌ』のあらすじと、映画ができるまでの3つのエピソードを一緒にみていきましょう。
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頑張って生きてきた自分へのご褒美!映画『92歳のパリジェンヌ』のあらすじ
朝、いつものようにラジオを聴きながら、鏡の前で髪を整えるマドレーヌ(Madeleine)。
この日は、彼女の92歳の誕生日。
子どもたちや孫が主催した誕生日会へ自動車で向かう途中、突然横切ってきた自転車を避けるためにキキーっと急ブレーキを踏み、交通事故を未然に防ぐことができたのですが、再発進がなかなかできないマドレーヌは渋滞を起こしてしまいます。
いったん自宅に戻って手帳を広げ、「車の運転」とメモってはスッと線を引く。
マドレーヌは、日々できなくなってしまったことをチェックしていたのです。
つえをつきながらトボトボを歩き、バスに乗りやっとの思いで会場に到着。
そこには娘のディアーヌ(Diane)、息子のピエール(Pierre)、孫のマックス(Max)など家族一同が集まり、マドレーヌを温かく迎えてくれました。
楽しく過ごす誕生日会が終わりに差し掛かった時、マドレーヌはスッとみんなの前に立ち上がり
「2カ月後の10月17日に安楽死をする」
と宣言するのですが……
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映画化までの3つのエピソードとは
深刻なテーマにもかかわらず、主人公マドレーヌの元気で明るいキャラクターで、切なくも暖かな気持ちになれる映画『92歳のパリジェンヌ』。
ミレイユ・ジョスパン
マドレーヌのモデルとなったミレイユ・ジョスパンは、本作品でも描かれているように助産師として4人の子どもを育てながら、積極的に社会活動を行っていた女性です。
特に、女性の避妊の権利、学校での性教育、ピルの必要性などを訴え、2001年に行われた大規模な助産師のストライキをサポートします。
そんな彼女は、生前、安楽死・尊厳死の権利を訴える非営利団体ADMD(Association pour le droit à mourir dans la dignité)を以前から支援し、自らも2002年12月6日、ADMDの協力のもと、死ぬ自由を全うして旅立っていきました。
10年越しの映画化
映画の原作、小説『最期の教え、92歳のパリジェンヌ』はミレイユ・ジョスパンの死後2年目の2004年に娘であり作家のノエル・シャトレが出版した実話を元にした作品です。
自ら命を絶った知人を持つ映画監督パスカル・プザドゥー(Pascale Pouzadoux)は、この小説を読んだ直後、ノエルに映画化を打診します。
それでも諦められなかったプザドゥー監督は、夫であり本作品でピエールを演じたアントワーヌ・デュレリ(Antoine Duléry)とプロジェクトを温め続け、なんと10年後の2014年、再びノエルに打診します。
コメディの要素を重要視
小説『最期の教え、92歳のパリジェンヌ』の映画化にあたって、原作者のノエル・シャトレがプザドゥー監督に訴えたのが「コメディの要素を重要視」です。
最後まで明るく生き生きとしていた母親と過ごしたノエルにとって、死は悲劇なものではなく「生の一部である」とし、特に、このようなデリケートな問題に対しては、ユーモアが何よりも必要と主張しました。
この意志を汲み取ったプザドゥー監督は、最後まで自分らしく生きるために、自分で終わりを決めたマドレーヌの姿を見事に映し出しました。
まとめ
自ら死を選んだ元助産師で運動家のミレイユ・ジョスパンの実話をもとに描かれたフランス映画『92歳のパリジェンヌ』。
若者からお年寄りまでと登場人物の年代が幅広いため、全世代のフランス語を聞くことができます。
同じく「安楽死」を扱ったオゾン監督の作品『Tout s’est bien passé』とは異なり、コメディ要素が含まれているため、切ないながらも暖かな気持ちになれる作品になっています。
主人公のマドレーヌ目線で見事に描かれているため、「安楽死」に対する考え方が変わるかもしれない映画『92歳のパリジェンヌ』。
高齢化が進む日本だからこそ、多くの方に見ていただきたい映画の一つです。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。