映画『地下鉄のザジ(原題Zazie dans le métro)』のあらすじと絶対行くべきパリの厳選ロケ地とは

パリでの旅行で、「地下鉄に乗りたいけど治安やスリなど不安だな」と思った方もいるのではないでしょうか?

こんにちは!フランス人の夫とイル・ド・フランスに住んでいたシモンヌです。

実際、私も初めは少し不安でした。

でも、時間帯やエリアなど気を付けていればとても便利で、住んでいた頃はほぼ毎日使っていました。

今回は、「パリで地下鉄に乗ることが夢」の少女のお話、映画『地下鉄のザジ』とフランスで電車を使う際に役立つフランス語をご紹介します。

フランス映画『地下鉄のザジ』の概要

1960年に公開された映画『地下鉄のザジ(原題:Zazie dans le métro)』は1959年にフランスの詩人・小説家であるレーモン・クノーが発表し、ベストセラーとなった小説『Zazie dans le métro』が原作です。

フランスにおける映画運動のヌーヴェルヴァーグの先駆者であり、フランス映画の巨匠ルイ・マル監督が手掛けた、主人公の少女ザジが過ごすパリを、スラップスティックな表現で描いたコメディ映画です。

原作の小説では作者のクノーによるフランス語の言葉遊びがたくさん使われていて、監督のルイ・マルは様々な映像技法と音楽で遊びを入れることで、少女ザジの世界を生き生きと映し出している作品になっています。

映画『地下鉄のザジ』のあらすじ

地方からパリに母親と来た10歳の少女ザジ。

母親は恋人とデートの約束をしていて、ザジはパリで暮らす叔父ガブリエルに預けられます。

大人たちと過ごすことになりパリで見たいものは何かと聞かれ、ザジの楽しみはパリで地下鉄に乗ることだった。

しかし地下鉄はストライキで閉鎖、ザジは落ち込んでいると、そこに知らない男性が話しかけてくる……。

にぎやかで活気溢れるパリの街を舞台に少女ザジの冒険はどうなっていくのか……。

『地下鉄のザジ』の監督・キャスト

監督(Réalisateur) ルイ・マル(Louis Malle)
出演(Avec) カトリーヌ・ドモンジョ(Catherine Demongeot)

フィリップ・ノワレ(Philippe Noiret)

ヴィットリオ・カプリオリ(Vittorio Caprioli)

カルラ・マルリエ(Carla Marlier)他

フランス映画界の巨匠、ルイ・マル

Louis Malle(ルイ・マル)

1932年10月30日~1995年11月23日(逝去63歳)

フランス北部のトゥムリー生まれ、第二次大戦中はパリ郊外のカトリックの学校に疎開。

戦後、国立映画学校「Institut des hautes études cinématographiques(通称IDHEC)」で学び、1956年にジャック=イヴ・クストーとの共同監督作品『沈黙の世界』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞

1958年25歳の時に自己資金で製作した『死刑台のエレベーター』で実質的な監督デビューを果たし、斬新な技法で高く評価されました。

『地下鉄のザジ』ではそれまでの作品とは全く異なった作風で、当時も話題となり2022年現在でも人気のある作品です。

映画『地下鉄のザジ』の魅力的なロケ地厳選4箇所

この映画では主人公の少女ザジがパリの街中を走り回るシーンが特徴的です。

エッフェル塔や蚤の市など、1960年のパリの街並みが映し出され、ザジと一緒にパリを巡っている気分になります

ここでは、作中で登場するシーンの中でも、特に印象的だったロケ地を厳選して4箇所ご紹介いたします。

Pont de Bir-Hakeim(ビル・アケム橋)

ビル・アケム橋は20世紀初頭に建設された、パリのセーヌ川左岸の15区と右岸の16区の間に架かる橋で、1986年に歴史的建造物として登録されています。

この橋は2階に地下鉄6号線が通っており、1階は歩道と車道が通り二重構造の橋になっている珍しい造りで、数多くの映画でも使われている場所です。

ここを訪れた時は、映画のシーンのザジのように思わず誰かと追いかけっこをしたくなりました。

でも、人目のあるところなので控えました。笑

この橋からのエッフェル塔の眺めは最高なので、パリらしい景色を堪能できます。

橋の中央の階段からはセーヌ川に浮かぶ散歩道の「Ile des Cygnes(白鳥の島)」に降りることができ、散歩するにはとても気持ちのよい場所となっています。

白鳥の島は「Pont de Grenelle(グルネル橋)」という橋まで歩くことができ、グルネル橋のたもとに自由の女神像が立っています。

少し話がずれてしまいますが、皆さんご存じアメリカ・ニューヨークにある自由の女神像はフランスがアメリカの独立100周年の記念として贈ったものです。

その後フランス革命100周年を記念し、パリに住むアメリカ人が返礼品としてニューヨークの7分の1の大きさの自由の女神像を贈ったものが、グルネル橋のたもとに立っている自由の女神像になります。

そして、観光スポットとしても有名な東京のお台場にある自由の女神像、「なぜお台場に自由の女神?」と思いませんか?

これは、1998年から1999年に日本とフランスの友好関係の記念として、自由の女神像はパリから日本へ海を渡り公開されることになりました。

当時は期間限定での公開だったのですが、人気を博していたため、パリの自由の女神像のレプリカをフランスで制作し2000年にお台場海浜公園に常設されました。

自由の女神像は国と国の友好のシンボルとして、昔も今も人々に愛されているのですね。
Pont de Bir-Hakeim
住所:Quai Branly - Avenue de New York - 75015 Paris
次に、作中で特に印象的なシーンだなと思っているのが、パッサージュでのシーンです。

「Passage(パッサージュ)」とは、18世紀から19世紀にパリで建設された、ガラス屋根で覆われているアーケード街のことで、正式名は「passage couvert」。

カフェやレストラン、ギャラリーなどが幹を連ねる、パリらしい風情のある場所です。

私も住んでいた時に、パサージュがあると必ず通って、どんなお店があるのか見るのが楽しみでした。

ここでは、ザジのロケ地で使われたパッサージュやパリで特に人気のあるパッサージュをご紹介します

パリでの旅でパッサージュ巡りをして、お土産にもぴったりなお気に入りのお店を発掘してみてはいかがでしょうか。

Passage du Grand-Cerf(パッサージュ・デュ・グラン・セール)

1825年に建てられたこのパッサージュは、屋根から床まで約12メートルという高さが特徴的で、1階は商業施設、2階は住居としても使われているようです。

さらに、上には歩道橋が設置されている珍しい造りのパッサージュです。

『地下鉄のザジ』の撮影はこのパッサージュで行われ、思わず楽しくなるようなシーンとなっています。

ここはデザイナーやアーティスト、職人などが集まる文化的なエリアとなっています。

照明のお店や編み物のお店があり、「Lil Weasel」という編み物専門店は、編み物には興味はなくても、色とりどりの毛糸でいっぱいの店内を見ているのも楽しいお店です

Passage du Grand-Cerf
住所:145 rue Saint-Denis - 75002 Paris

La Galerie Vivienne(ギャルリー・ヴィヴィエンヌ)

1823年に建てられたギャルリー・ヴィヴィエンヌは、歴史的建造物に指定されているパリのパッサージュの中でも特に美しいパッサージュとして有名です。

ガラスの屋根から光が射し、床に埋め込まれたモザイクやドーム型の天井と装飾がとても美しく、このパッサージュでは何度もファッションショーが行われました。

日本人デザイナーの高田賢三が創業者の「KENZO」もここでファッションショーを行ったそうです!

古書店からカフェやレストラン、ワインショップなど様々なお店が入っていますが、ここでのおすすめのお店は1826年創業の「Librairie Jousseaume」という書店です

古書、古本、新刊書が並び、アンティークな店内はタイムスリップした気分になります。

お店の前を通ると思わず足を止めて本を見てしまい、掘り出し物がないかなと探しているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。

La Galerie Vivienne
住所:4 rue des Petits-Champs - 75002 Paris

Passage des Panoramas(パッサージュ・デ・パノラマ)

1799年に建てられたパッサージュ・デ・パノラマは、パリ最古のパッサージュで歴史的建造物に指定されています。

名前の由来は通路の正面玄関であるモンマルトル大通りにあった、2つのパノラマのように広がるフレスコ画にちなんで付けられたと言われています。

残念ながら、これらの作品は1831年に取り壊されてしまいました。

現在はアンティークなハガキや古切手、古銭などを扱うお店が集まっているため、コレクターに有名な場所です。

比較的庶民的な雰囲気でレストランも多く、活気のあるパッサージュです。

映画『地下鉄のザジ』で学べるフランス語

『地下鉄のザジ』のフランス語の原題の意味は『Zazie dans le métro(ザジ ダン ル メトロ)』です。

Dans ~の中に(で)
Métro(Chemin de fer métropolitainの略) 地下鉄

フランス語で「地下鉄 / 電車にいる」は「Je suis dans le métro / le train」となります。

自分が電車の中にいるというニュアンスになります。

電話やメッセージで「今どこ?」と聞かれた場合などにも、「Je suis dans le train(電車だよ)」と答えます。

地下鉄&電車の利用時に役立つフランス語

パリに行ったら地下鉄に乗ってみると、良いところも悪いところも普段のパリの暮らしを垣間見ることができるでしょう。

駅には、通り過ぎるだけではもったいないアートで溢れているので、電車を待っている間に作品を楽しむこともできます。

そして2022年現在は自動ドアも多くなっていますが、私がパリに住んでいた頃は、自動で開かないドアの路線もまだ多く残っていました。

初めて地下鉄のドアを自分でガチャッと開ける時は、ちょっとドキドキしたのを今でもよく覚えています。

乗る際には、夜間など治安の良くないエリアの駅を利用する場合の注意や、スリへの対策をしっかりしていればトラブルに巻き込まれることも避けられるので、フランスでの電車の旅も楽しめると思います。

ここでは電車を利用する時に使えるフランス語をご紹介します。

station de métro 地下鉄の駅
gare 駅(鉄道、バス)
quai ホーム
départ 出発
arrivée 到着
destination 行き先
guichet 切符売り場
guichet automatique 発券機
billet 長距離列車の乗車券(お札ほどの大きさ)
ticket 地下鉄、バス、電車の切符
aller-simple 片道
aller-retour 往復
RER
(Réseau Express Régional d'Île-de-France)
イル=ド=フランス地域圏急行鉄道網
TGV
(Train à Grande Vitesse)
フランス国鉄SNCFが運行する高速鉄道
Navigo 地下鉄、バス、路面電車で使用できる交通系ICカード

観光客向けには「Navigo Découverte」がある

Mobilis パリやパリ周辺の地下鉄やバス、RERの1日乗り放題チケット

映画『地下鉄のザジ』で特に印象に残るシーン

映画の中でザジが頻繁に使っている言葉があります。

「mon cul」という言葉。

「cul」は「尻、けつ」という意味で、「mon cul」は直訳すると「私のけつ」となります。

実際の意味は「いやだ、だめだ、違う」と辞書には記載してありますが、「ふざけるな」や「やなこった」というようなニュアンスでも使われます。

スラングで汚い言葉なので使い方には注意が必要ですが、街中で聞くことがあるかもしれないので頭に入れておくと役に立つかもしれません。

上品な言葉ではないので子供が大人に対して使う言葉ではないのですが、この映画では大人の「常識」を壊すように、ザジが遠慮なく言い放つシーンはある意味爽快です。

この「mon cul」が使われている、印象的なシーンがあります。

パリへ来たザジに叔父のガブリエルが、ナポレオンの墓があるアンヴァリッドを見に行くのはどうかと聞いた時のシーンです。

ザジ : Napoléon mon cul, m’intéresse pas du tout, cette enflure avec son chapeau à la con.
(ナポレオンなんか 興味はないわ)

ガブリエル:Mais qu’est-ce-qui t’intéresse alors ?
(じゃ 何が見たい?)

ザジ: Le mé-tro !
(地・下・鉄!)

出典:映画『地下鉄のザジ』(日本語は映画の字幕から引用)

「cette enflure avec son chapeau à la con.」は映画の中では翻訳されていませんが、意味は「バカげた帽子をかぶっている間抜けなやつ」という感じでしょうか。

ナポレオンにも言いたい放題のザジですが、有名な観光地や歴史上の偉人などには全く興味はなく、彼女がパリでやりたいことは地下鉄に乗ることだけ

果たして、ザジは地下鉄に乗ることができるのでしょうか。

まとめ

『地下鉄のザジ』はスラップスティックな表現で描かれ、シュールでナンセンスな世界観のコメディ映画が見どころで、好き嫌いがはっきりと分かれるかもしれません。

「この映画の意味とはなんだろう?」と難しく考えずに、ワクワクな気持ちにさせてくれる演出と音楽、1960年のパリの美しい街並みや、赤いタートルネックのセーターが可愛いザジや出演者のファッション、インテリアなどを楽しみながら気軽に観ることができる作品です。

スラングが多く、テキストでは学ぶことのできない、生きたフランス語が飛び交っているので、繰り返し観るのもおすすめです。

繰り返し観てみると、この映画の意味することがもしかするとわかるかも?しれないですね。

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