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皆さんは、‟apprivoiser”(アプリヴォワゼ)という言葉をお聞きになったことがありますか?
とても響きのきれいなフランス語単語で、『星の王子さま』の最重要単語の一つであるためか、“Apprivoiser”「アプリヴォワゼ」というネーミングのカフェやお花屋さんがいくつかヒットします。
きっとオーナーが『星の王子さま』好きなのでしょう。
では、‟apprivoiser”の意味はご存知でしょうか?
この単語の本来の意味を知ると、驚かれるかもしれません。
この記事では、『星の王子さま』で使われている‟apprivoiser”の単語の意味と、フランス語の奥深さについてご紹介いたします。
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『星の王子さま』に出てくるフランス語‟apprivoiser”の意味
皆さんは『星の王子さま』をお読みになったことがありますか。
「子どもの頃に読んだことがある」という方や「耳にしたことはあるけれど、読んだことはない」という方が多いのではないでしょうか。
中には、『星の王子さま』が大好きで、何度も読んだという方もおられるかもしれません。
フランス語が読めるようになったら、ぜひ原文に挑戦したいと思っている方もおられるでしょう。
‟apprivoiser"という言葉はこの『星の王子さま』の原文の中で、恐らくもっとも重要な単語です。
『プチ・ロワイヤル仏和辞典』では、下記のように説明されています。
1.〔動物〕を飼いならす
2.〔人〕をなれ親しませる;従順にする、てなずける
出典:プチ・ロワイヤル仏和辞典
この定義だけを見ると、それほど美しさや意味深さは感じないのではないでしょうか?
では、なぜ『星の王子さま』の中では最も重要な単語と位置づけられているかというと、この言葉が使われている場面にあります。
『星の王子さま』の中でフランス語‟apprivoiser”が出てくる場面
この“apprivoiser”という言葉は、物語のクライマックスの1つ、キツネとの出会いの場面で登場します。
『星の王子さま』の大まかな内容については、別の記事で紹介していますので、ぜひお読みください。
王子さまとキツネの出会いの場面を日本語訳から引用してみます。
「きみはだれ?なにかとってもすてきななりをしてるね」
「ぼく、キツネさ」、キツネは答えました。
「こっちにおいでよ。いっしょに遊ぼう。ぼく、とっても悲しいんだ…」、王子さまはキツネに言いました。
「きみと遊ぶってわけにゃいかないんだ。ぼくは飼いならされたキツネじゃないからね」、キツネが言いました。
「それは失礼」、王子さまは言いましたが、でも、ちょっと考えたあとで、こう言いました。
「《かいならす》って、それ、どういうこと?」
…(中略)…
「-それはね、近ごろじゃとってもないがしろにされてることなんだけど、心と心をきづなで結ぶ、つまり《心を通わせる》ってことさ」
(出典:『小さな星の王子さま』アントワヌ・サン・テグジュペリ、河原泰則訳)
この「かいならす」という部分に、フランス語“apprivoiser”が使われています。
王子さまは、この言葉の意味がわからなかったため、キツネに意味を尋ねています。
キツネの返答を、原文で見ると、 Ça signifie "créer des liens..."となっています。
“lien”には、「絆、つながり」、“créer”には「創造する、新しく作る、作り出す」という意味があります。
つまり、“apprivoiser”(飼いならす)とは「つながりや絆を新しく作り出すこと」だとキツネは説明しています。。
誰かとそのような新しい絆を作り上げると、お互いがかけがえのない存在に変わっていくのです。
サン=テグジュベリがフランス語“apprivoiser"を使った理由
フランス語“apprivoiser"は、『星の王子さま』第21章には15回も登場します。
もともと動物などを「飼いならす、手なずける」という意味を持つ、apprivoiserに対して、どんな日本語をあてるのか、翻訳者たちは頭を悩ませてきました。
「仲良くする」「心を通わせる」といった訳になっているものも多くみられるようです。
サン=テグジュペリが、それほどにまで“apprivoiser"を好んで使ったのはなぜでしょうか。
『大人のための「星の王子さま」』(北杜夫監修、鳥取絹子著)には次のような説明がありました。
サン=テグジュペリは、子どもの頃から変わった動物が好きだった。
幼年時代を過ごしたサン・モーリスの庭園では野ネズミやバッタ、カタツムリなどを相手に遊んでいたし、大人になってからも、砂漠でカメレオンやキツネなどを飼いならした経験を持っている。
…(中略)…
動物を飼いならすことにかけては天性の才能があったサン=テグジュペリは、その言葉を女性との関係にも当てはめるようになる。
きっと彼は、その言葉がとても気に入ったのだ。
出典:『大人のための「星の王子さま」』北杜夫監修、鳥取絹子著
サン=テグジュベリは、女性への手紙の中でも、この‟apprivoiser”という言葉を何度も用いていたようです。
彼は、‟apprivoiser"という言葉に、対象となる存在への愛情、その対象との特別な絆を感じたのでしょう。
有名な「オーシャンゼリゼ」というシャンソンの中にも、この言葉が使われています。
“Il suffisait de te parler, pour t’apprivoiser.”(君を手なづけるには十分だった)
フランス語の奥深さを感じます。
まとめ
この記事では、『星の王子さま』で使われている‟apprivoiser”という言葉を取り上げて、フランス語の奥深さをご紹介しました。
1つの言葉の中にも、深い意味があるということを発見するのも、新しい言語を学習する魅力といえます。
フランス語のニュアンスをつかむことができると、世界が広がっていくのを感じます。
慶應義塾大学文学部出身|英語教師・日本語教師
趣味は旅行とカフェでゆっくり過ごすこと。
座右の銘は「どの雲にも銀の裏地がついている」。
どんなに辛い状況でも、その先には明るい光が待っていると思うと「もう一歩先に進もう」と思えます。
フランス語を勉強し始めたきっかけについては、詳しいプロフィールでご紹介しています。