映画『ザ・カンニングIQ=0』のあらすじと原題「Les Sous-doués」に秘められた意味とは

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韓国やフィリピンでは上映禁止だったフレンチコメディ映画があります。

1980年、日本では大ヒットしたフランス映画『ザ・カンニングIQ=0(原題:Les Sous-doués)』です。

『ザ・カンニングIQ=0』は、70年代から90年代まで数々の大ヒット作品を生み出したクロード・ジディ(Claude Zidi)監督の作品で、彼が手掛けた作品には下記のような名作が多く、ご覧になられたものもあるのではないでしょうか。

  • 『手羽先とモモ(L'aile ou la cuisse)』:フレンチコメディ映画のレジェンド、ルイ・ド・フュネス(Louis de Funès)とコリューシュ(Coluche)が共演して話題となった。
  • 『フレンチ・コップス(Les Ripoux)』:コメディー作品で初めてセザール賞を受賞
  • 『アステリクスとオベリクス(Astérix et Obélix contre César)』:フランス語圏で大人気のバンディネの映画化作品

シリアスからコメディーまでこなす名俳優ダニエル・オートゥイユ(Daniel Auteuil)は本作でキャストとして抜擢され、出世作になりました。

さらに名脇役ミシェル・ガラブリュ(Michel Galabru)やマルチアーティストのリシャール・ボーランジェ(Richard Bohringer)も映画を綾取る豪華キャストとして出演しています。

こんにちは!中学生の事、カンニングの用のメモを作っているうちに内容を全て覚えてしまい、結果普通に勉強してしまっただけだったという経験を持つカタクリです。

この記事では、「映画のあらすじ」そして「映画をより理解するための3つのポイント」を一緒に見ていきましょう。

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70年代のエスプリが残る映画『ザ・カンニング[IQ=0]』のあらすじ

上品な住宅街ヴェルサイユにあるお金を払えば誰でも入学できる高校「ルイ14世」には、勉強嫌いの裕福そうの子どもたちが集まっていました。

大学入学資格試験「バカロレア」の合格発表の日、ルイ14世高校の合格率0%であるとメディアで発表され、その結果に怒った校長のマダムジュモクール(Madame Jumaucourt)は、これまでの自由教育を一転しスパルタ教育に変更することに決めたのです。

校長や教師陣の思惑をよそに、バカロレア4年連続不合格のベベル(Bébel)をはじめとする自由奔放に生きてきた生徒たちは、ヴェルサイユの警察署長も巻き込み様々な手段でスパルタ教育を逃れていきます。

自由恋愛主義のジャンヌ(Jeanne)の妊娠、勉強しない生徒たちの模擬テストの結果が最悪、と普通のスパルタ教育では彼らを勉強させることができないと悟ったマダムジュモクールは、アメリカから取り寄せた「最終スパルタ教育マシーン」を使うことを決意。

しかしその事で、学校全体が大きな事件に巻き込まれていくのでした。

映画をより理解するための3つのポイント

フランスの歴史背景や文化を少しだけ知っておくと、『ザ・カンニングIQ=0』をもっと面白く見ることができます。

知っておいたほうがより映画を理解できるポイントを3つにまとめました。

バカロレア(Baccalauréat)

ルイ14世高校の学生達が必死に(?!)取ろうとする「バカロレア」とは、中等教育修了資格と大学入学資格を兼ねた「国家資格」のことで、口語ではバック(Bac)と言います。

1808年に制定されたシステムで、毎年6月に開催されるバックの試験を取らなければ、どんなに真面目に高校生活を過ごしたとしても高校卒業扱いにはならないため、フランス人高校生にとっては人生のかかった試験です。

68年世代の子どもたち

映画『ザ・カンニングIQ=0』の学生たちを見て、「自由過ぎる」と感じ驚いた人も多いでしょう。

この自由な学生たちの過ごした幼少期に起こった出来事「1968年の五月革命」がとても大きく影響しているのです。

「1968年の五月革命」とは、戦後の政策が色濃く残るド・ゴール大統領とその政府に対して反発した運動のことです。

元々は学生が起こした運動が引き金となり、その後労働者や一部の大衆が加わり「Egalité Liberté Sexualité (平等、自由、セクシャリティ)」のスローガンの元、それまでの古い伝統や価値観と覆そうとする「革命」に変わっていきました。

この運動に関わった人たちを「soixante-huitard(68年世代)」といい、彼らの思想は全世界の若者達の共感を呼び、その後の70年代のヒッピー・サブカルチャーから、女性の人権問題、LGBT運動、エコロジー運動など2021年の現在まで繋がる価値観に影響を及ぼしています。

映画の中の学生たちがそんな「soixante-huitard」の両親や親戚の元で育ったと考えたら、彼らの奔放さが理解できるのではないでしょうか。

フランス語のタイトル『Les Sous-doués』

「sous-doués」とはジディ監督の造語で、「surdoué」つまり「sur(上をいく)+doué(才能にめぐまれた)=天才、能力の高い人」を元に、「sous-doués」「sous(下にある)+doué(才能にめぐまれた)=バカ者達」というダジャレになっています。

まとめ

80年に日本で大ヒットした映画『ザ・カンニングIQ=0(原題:Les Sous-doués)』

その年、日本での洋画興行成績第10位だった成功とは裏腹に、その自由すぎる内容から当時は韓国やフィリピンで上映禁止に、そしてフィンランドとノルウェーでは12歳未満禁止になった問題作です。

50年以上前の映画が今見ても自由と感じるのは、登場人物たちが過ごした「古い伝統や価値観と覆そうとし時代」が背景にあります。

そんな彼らが通っているルイ14世高校が、保守的な街「ヴェルサイユ」にあるというのも、なんだか笑ってしまいますよね。

フランス語の学習の点で見ると、80年代的な少し古い言い回しもありますが、2021年の現在でも十分使え日常のフランス語を学ぶことができます。

新しい価値観の若者たちが活躍する映画『ザ・カンニングIQ=0』は、フランスの現代史を理解する上でもオススメの映画です。

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