映画『RAW 少女のめざめ 』のあらすじと法規制されてるフランスの問題伝統行事「ビズタージュ」とは

少女から大人の女性へ成長する姿を「ホラー作品」として描いた衝撃作!

この記事では、2021年第74回カンヌ国際映画祭で最高賞に当たるパルム・ドールを受賞したジュリア・デュクルノー(Julia Ducournau)の長編デビュー作、映画『RAW-少女のめざめ(原題:Grave)』をご紹介します。

こんにちは!ホラーではおばけものは苦手ですが、殺戮ものは普通に楽しめるカタクリです。

2016年に上映された本作は、普通のホラー映画と一線を画すストーリー展開で、映画評論家からも高い評価を得て大ヒットしました。

映画のあらすじと共に、主人公が「めざめる」きっかけとなったフランスの問題伝統行事「ビズタージュ(bizutage)」も一緒に見ていきましょう。

失神者も出た!?フランスでR15の映画『RAW-少女のめざめ』のあらすじ

獣医の両親の元で育ったジュスティーヌ(Justine)は、幼い頃から成績が優秀だったため、16歳で両親の母校であるベルギーの獣医大学に飛び級入学することになりました。

大学ではすでに在籍している姉のアレクシア(Alexia)と久しぶりの再会を果たしますが、様子が変わった事に気が付いたジュスティーヌは、姉に対して不信感を抱きはじめます。

大学入学初日に新入生は先輩から「ビズタージュ」を受ける、その一環で強制的に「うさぎの生の腎臓」を食べることを強制されることに。

厳粛な「ベジタリアン」の家庭で育ち、生まれてから一度も肉を口にしたことがなかったジュスティーヌは、先輩グループの中にいたアレクシアに「肉を食べたくない」と伝えますが、「そのうち慣れる」と冷たく言い渡されてしまうのです。

ジャスティーヌは仕方なく「肉」を飲み込んでしまいますが、しばらくすると身体全体が蕁麻疹でただれてしまいます。

医者に診てもらうと「肉」に対するアレルギー体質であると診断され、当分はアレルギー用の薬をつけて生活することになってしまいました。

ところが、この一件以来、ジャスティーヌは無性に「肉が食べたい」という強い衝動に駆られるようになります。

大学の食堂でステーキを盗み取ってしまったり、誰も見ていないところで肉を食べたりし、「肉を食べてはいけない」という自分の意思に反した「抑えきれない欲望」を隠しながら生活をするようになりました。

そんなある晩、ジャスティーヌがアレクシアの家に泊まりに行った際、引き出しから自分も使用しているものと同じ抗アレルギー薬を発見し戸惑っている中、ちょっとしたアクシデントでアレクシアは指を切断してしまいます。

転がったその指を手に取ったジャスティーヌは、ある行動に出てしまうのですが……

フランスの問題伝統行事「ビズタージュ(bizutage)」

映画『RAW-少女のめざめ』の中にはショッキングなシーンを多く含む架空の物語ですが、その中でもフランスを中心に欧米諸国で実際に行われている「行事」があります。

それが、主人公のジャスティーヌが「めざめる」きっかけとなった「ビズタージュ」です。

ビズタージュの歴史

ビズタージュとは「新入生いじめ」の事で、その歴史は非常に古く、なんと世界最古の大学パリ大学(現在のパンテオン=ソルボンヌ大学)が生まれた中世に遡ります。

12世紀半ばに起源を持つパリ大学では、新入生たちを「べジョンヌ(béjaunes:巣から出たばかりの鳥のクチバシが黄色い(bec jaune)ことから転じて、青二才や経験の少ない若者の事を示す単語)」というニックネームで呼び、先輩学生からバケツで水を掛けられるなどの「新入生歓迎式」があったそうです。

年々エスカレートし暴力沙汰にもなっていったため、1342年には同大学で新入生歓迎式は禁止されてしまうことに。

その後、新入生歓迎式は下火になって行きますが、19世紀に入ると特にエリート学生の間で洗礼式が徐々に再開されていき、1840年頃には「学校の一年生」を表す「ビズ(bizut)」から派生し、「新入生歓迎式=ビズタージュ(bizutage)」という単語が生まれたのです。

何度も下火になっては復活しているビズタージュですが、男女共学制度が始まるとビズタージュの質も変わっていき、性的暴行に発展するケースも多くなっていきます。

その事から、1928年にはビズタージュ禁止の政令が出されますが被害は収まりませんでした。

1998年には刑法に制定され、加害者は最高で禁固6カ月、罰金7500ユーロが課されることになり、またビズタージュが行われた場所の責任者、イベントの開催者、そして傍観者も罰金などの刑を課せられるようになります。

2021年のビズタージュ状況

映画『RAW-少女のめざめ』でも見られるように、伝統化されてしまったビズタージュは医学部などのエリート学校や軍隊、消防士、スポーツチームなどで現在も行われています

強制的にアルコールを飲まされ急性アルコール中毒で亡くなる若者や、性的行為を強制され写真を取られてSNSに投稿される等の被害も後を絶ちません。

元被害者やビズタージュで子供を無くしてしまった親がビズタージュ反対市民団体(https://www.contrelebizutage.fr/)を立ち上げ、加害者にも被害者にもならないように若者に注意を呼びかける運動が続いています。

まとめ

2021年の第74回カンヌ国際映画祭で、単独では女性初のパルム・ドール受賞者ジュリア・デュクルノーが2016年に発表した映画『RAW-少女のめざめ』は、他のホラー作品には見られない主人公の心理状態を丁寧に描き、フランスで大ヒットしました。

デュクルノー監督は「父親が皮膚科医で母親が産婦人科医だった家庭環境で、家にあった医学書を幼い時から見ていて、血や肉と言うものに愛着を感じるようになり、その影響からかホラー映画好きになった」と語っており、「少女が大人の女性に成長する」苦悩を表現するためには「血との関係は切り離せない」と語っています。

フランスでは1998年に憲法で禁止されているにも関わらず、伝統行事として続けられている「ビズタージュ」は、映画の中でジャスティーヌが「めざめる」きっかけとなった出来事として取り入れているのも特徴的です。

若者が使う日常のフランス語を耳にすることができるので、フランス語学習初級者は日本語字幕でフランス語の自然なスピードに慣れるように、中級者は語彙力を増やすためにフランス語の字幕をつけて観るといいでしょう

映画全編は98分と短い上にストーリーも作り込まれているため、ホラーが苦手な方にもオススメの作品ですが「痛い」シーンがたくさん出てくるので、観覧にはご注意ください!

 

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