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フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴの小説『Notre-Dame de Paris』が原作で、珍しいフランス発のミュージカルです。
脚本はリュック・プラモンドン(Luc Plamondon)、作曲はリシャール・コチャンテ(Richard Cocciante)。
英米のようにほとんど成功作がなかったフランスのミュージカルですが、この『Notre-Dame de Paris』は1998年に興行が始まって以来、爆発的な人気を博しました。
20周年にあたる2018年の時点では、全世界で観客動員数が1100万人を突破し、20か国以上で9つの言語に訳されて上演されました。
現在も世界のどこかで上演されています。
このミュージカルは現代の社会問題と絡め、それをスピード感あふれるコンテンポラリーダンスによって表現しています。
19世紀の舞台と現代のコンテンポラリーダンスが違和感なく共生しているのがひとつのみどころになります。
さらにメインの登場人物が歌い上げるナンバーの数々は、彼らの歌唱力もあって観る人の胸に響きます。特に1998年にフランス音楽界で歴代3位の売り上げをたたき出した『Belle』は、鳥肌がたつほど感動的です。
ここでは、2000年のフランス公演をご紹介します。
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『Notre-Dame de Paris』のあらすじと主な登場人物
1482年のパリ。
フランスはルイ11世の統治下にありました。
ある日、流れ者のジプシーの集団がノートルダム大聖堂にたどり着き、庇護を求めます。
しかし、副司教のフロロはジプシーたちを拒絶して親衛隊を派遣しました。
もみあっているうちに、フロロ、親衛隊長のフェビュスはそれぞれジプシーの踊り子であるエスメラルダを見出し、その美しさに魅かれてしまいます。
そして、フロロの忠実な下僕である醜い鐘つき男のカジモドも、密かにエスメラルダに恋い焦がれるのでした。
エスメラルダを巡って、それぞれの立場で悩む男たち。
ジプシーたちは安住の地を見つけられるのでしょうか。
そして、恋の女神は誰に微笑むのでしょうか。
グランゴワール(Gringoire):Bruno Pelletier(ブリュノ・ペルティエ)
吟遊詩人。
パリのノートルダム大聖堂の周囲で起こった出来事を証人として語ります。
エスメラルダ(Esmeralda):Hélène Ségara(エレーヌ・セガラ)
ジプシーの踊り子で、美しく、仲間たちのアイドル的存在。
ジプシーグループの長であるクロパンはエスメラルダを妹のように守っています。
そんな彼女は、フェビュスと出会って恋心を抱き始めます。
カジモド(Quasimodo):Garou(ガルー)
ノートルダム大聖堂の前に赤ん坊の時に捨てられ、フロロに拾われます。
背中が曲がり、醜い容貌だったため、ノートルダム大聖堂の中で生活し、鐘つき男として働きます。
恩があるフロロには絶対的な忠誠心を持っています。
人目を避けて生活をしていたカジモドは、自分を助けてくれたエスメラルダに恋をしてしまいます。
フロロ(Frollo):Daniel Lavoie(ダニエル・ラヴォア)
ノートルダム大聖堂の副司教。
ジプシーの存在を好ましくないと思いながら、ジプシーのエスメラルダに恋心を抱いてしまいます。
聖職者としてストイックな生き方をしなければならないフロロの心の葛藤が描かれます。
フェビュス(Phoebus):Patrick Fiori(パトリック・フィオリ)
王室の親衛隊長。
婚約者がいながら、エスメラルダに魅かれてしまいます。
クロパン(Clopin):Luck Mervil(リュック・メルヴィル)
ジプシーの集団「奇跡の庭」(La Cour des Miracles)のカリスマ的なリーダー。
エスメラルダを兄のような気持ちで大切に育てています。
フルール・ド・リス(Fleur-de-Lys):Veronica Antico(ヴェロニカ・アンティコ)
フェビュスの婚約者。
貴族の娘で一途にフェビュスを慕う、幼さの残る少女。
しかし、エスメラルダの登場によって彼女は嫉妬にかられ、強い女性に変身するのでした。
『ノートル・ダム・ド・パリ』のみどころ
このミュージカルは原作にほぼ忠実ですが、現代の社会問題が加わっています。
それが劇中にも出てくる「Les Sans-papiers」です。
直訳すると「紙がない」ということですが、ここでの「紙」は「滞在許可証」のことで、「紙がない人たち」つまり「違法滞在者」という意味で使います。
第二次世界大戦後、フランスは労働力を補うために多くの移民を受け入れました。
しかし、滞在許可が切れても自国に戻らなかった人たちが「Sans-papiers」となってフランスに留まったのです。
また「Papiers」がないままフランスを目指して入国してくる違法移民も多々おり、それがフランス国民との軋轢を引き起こして、今でも大きなフランスの社会問題になっています。
劇中では、警察に追われた「Sans-papiers」たちが「Asile :避難所」として、ノートルダム大聖堂に逃げ込もうとする場面があります。
当時、教会は聖なる場所であったために、警察は易々と踏み込めない場所でした。
一種の「駆け込み寺」的な役割があったのです。
実は1996年に違法移民がフランスの教会に逃げ込むという事件があり、そのことがフランスで大きく報道されました。
しかし、現在の法律では教会に逃げ込んでも逮捕されてしまいます。
このミュージカルの初演は1998年でしたから、この事件がもしかしたら『Notre-Dame de Paris』の演出のヒントになったかも知れません。
15世紀のジプシーと現代の違法移民を重ね合わせ、忌み嫌われて社会に受け入れられない人たちの怒り、苦しみ、悲しみ、自由への渇望が終始このミュージカルを通して表現され、いかにもフランスらしい仕立てになっています。
またアクロバティックでスピード感のあるダンスも見ごたえがあります。
『Notre-Dame de Paris』のおすすめの曲
『Notre-Dame de Paris』の曲は全部で51曲あります。
私はこの2000年版『Notre-Dame de Paris』のDVDを20回以上見ていますが、全ての曲が「語り」になっているので、どれもはずすことができません。
そこで話題になった曲を選んでみました。
Le temps des cathédrales(カテドラルの時代)
オープニングにふさわしく、グレンゴワールがこれから始まる物語をどんどん転調しながらドラマティックに歌い上げ、それにかぶせて幕が上がります。
『Notre-Dame de Paris』の代表曲です。
ちょうど西暦2000年を迎える直前だったので、この部分はよく巷で流れていました。
Il est venu le temps des cathédrales(カテドラルの時代がやってきた)
Le monde est entré
Dans un nouveau millénaire(世界は新しい千年紀に入った)
Belle(美しい人)
冒頭にもご紹介しましたが、『Belle』は大ヒットした一曲です。
エスメラルダに魅せられた三人の男たちの、それぞれの性格と心の葛藤を表しています。
Visite de Frollo à Esmeralda (フロロのエスメラルダ訪問)
ネタばれしたくないので詳しくはご説明できませんが、この曲はフロロの最大の見せ場です。
それはまちがいありません。
Libérés(自由)
自由を求める人たちの熱情が爆発するシーンです。
カジモド、クロパン、グランゴワール、エスメラルダが次々に畳みかけるように歌を重ねてゆき、最後は大合唱となって観客に迫っていきます。
Lune (月)
Libérésの後でグランゴワールがしっとりとカジモドの心情を歌い上げます。
静寂が戻って、グランゴワール見上げる空は青白い光を放つ三日月。
Danse mon Esmeralda(踊って、ぼくのエスメラルダ)
ラストナンバーになります。
これまで繰り広げられた、めくるめく展開に終止符が打たれ、観客に余韻を残しながら静かに終演してゆきます。
まとめ
なかなかミュージカルは成功しなかったフランスに大きな功績を残した『Notre-Dame de Paris』。
20周年記念の年は初演を行ったパレ・デ・コングレ・ド・パリ(Palais des congrès de paris)に戻って凱旋公演が行われました。
その時のキャッチフレーズは「20ans que vous êtes BELL Notre-Dame de Paris:20年、Notre-Dame de Parisあなたはずっと美しい」。
その後公演は今も続いていて、公演回数記録を更新しています。
2020年8月にはカナダのケベックで上演される予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の拡大のために2022年8月に延期されました。
日本でも2013年に公演されたことがありますので、再上演されることがあれば、ぜひ足をお運びください。
CDは日本でもAmazonで手に入るようなので、楽曲にご興味のある方はぜひお聴きになってみてください。
ミュージカル『ノートル・ダム・ド・パリ』が観れる動画配信サービス
ミュージカル版の『ノートル・ダム・ド・パリ』ですが、残念ながら動画配信サービス(VOD)では配信されていないようです。(2021年2月現在)
映画版であれば、1956年にフランスーイタリア合作が公開されています。
Wikipediaによりますと、エスメラルダ役のジーナ・ロロブリジーダは、当時「世界的な人気を博す」、イタリアを代表する女優さんで大人気だったとのこと。
半世紀以上前の映画ですが、2021年2月現在でもAmazonで HDリマスター版のDVDを購入できる、不朽の名作です。
ロンドンミュージカルを完全映画化した『レ・ミゼラブル』のあらすじとキャスト
スイス・ジュネーブ在住
スイス生まれのフランス人と結婚した、二人の娘の母。
趣味は料理。フランス料理は義母から教えてもらったブルゴーニュ料理が得意。
特技や趣味など、詳しいプロフィールはこちら。