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80年代と90年代に最も活躍したコメディー映画監督の一人コリーヌ・セロー(Coline Serreau)をご存知でしょうか。
女性映画監督のセロー氏は、1989年に異色のロマンティック・コメディー映画『ロミュアルドとジュリエット(原題:Romuald et Juliette)』を制作し、大きな話題を呼びました。
この「おとぎ話」のヒロインは、なんと離婚歴5回、5人の子持ち、そして深夜の清掃業者として働く四十歳の女性なのです!
こんにちは!タブー知らずの80年代90年代フレンチコメディが大好きなカタクリです。
異色のロマンティック・コメディー、どんなあらすじなのか、気になりますよね。
この記事ではフランス映画『ロミュアルドとジュリエット』のあらすじ、監督のコリーヌ・セローとフィルミーヌ・リシャール(Firmine Richard)についてご紹介します。
フランス風シンデレラストーリー映画『ロミュアルドとジュリエット』のあらすじ
乳製品ブランドとして急成長中の会社「ブランレ」。
この会社の若いCEOのロミュアルドは、家庭は円満で、秘書の愛人ともいい関係を保ち、何もかもうまくいっていました。
そんなある日、乳製品市場のトップになるべく、彼の部下であるポーリン(Paulin)に副社長に昇進させることを条件に、リヨン郊外の工場でヨーグルトの生産を増やすという使命を任せます。
工場の規模や衛生基準を考えると無理難題に思える生産量ですが、ポーリンは工場の責任者に掛け合い、期日までに生産を間に合わせるように強引に交渉しました。
ところがその直後、原因不明の食中毒がフランス国内で広まり、原因は「ブランレ」のヨールグルトにあることが明らかになったのです。
ロミュアルドは責任を取って会社を追い出されることになりました。
その一連の「衛生スキャンダル」を見ていた、深夜のオフィス清掃をしていたアンティル諸島出身の黒人ジュリエット(Juliette)は、この食中毒問題は内部の裏切り者による犯行だとロミュアルドに告げます。
最初は半信半疑のロミュアルドでしたが、ある事件をきっかけにジュリエットを信じるようになります。
この問題が解決するまで、ジュリエットの家に身を隠すことを決めたロミュアルド。
ジュリエットは彼を受け入れますが、彼女のアパートは郊外のエレベーターが壊れたままの市営団地で、居間と寝室が二つの小さなアパートに5人の子どもと一緒に住んでいました。
6人の黒人に囲まれた白人であるロミュアルドの奇妙な共同生活がスタートします。
しばらくするとジュリエットの協力を得て、会社の問題は解決していきましたが、ロミュアルドにはさらなる別の問題に直面することになったのです。
映画『ロミュアルドとジュリエット』を支えた2人の女性とは
白人であるロミュアルドと黒人のジュリエットの恋愛を描いた『ロミュアルドとジュリエット』は、2021年の今観てもかなり衝撃的な内容です。
新しい形のフレンチ・ロマンティック・コメディーを描いた、監督・脚本のコリーヌ・セローと魅力的なヒロイン、ジュリエットを演じたフィルミーヌ・リシャールの2人の女性に注目してみましょう。
女性コメディー映画監督の第一人者コリーヌ・セロー
作家の父と脚本家の母を持つセロー監督は、幼い頃から映画館や劇場に足を運んでいました。
1975年、28歳の時に初めてメガホンを取り、その2年後に発表したポリアモリーの登場人物らを爽やかに描いたコメディー映画『彼女と彼たち-なぜ、いけないの(Pourquoi pas !)』 のヒットで、コメディー映画監督の第一人者と言われるようになります。
脚本も手がけるセロー監督は、『ロミュアルドとジュリエット』の4年前に発表した1985年の映画『赤ちゃんに乾杯!(Trois hommes et un couffin)』が大ヒットし、彼女の名前は世界的に知られるようになりました。
翌年の1987年には、ハリウッド映画『スリーメン&ベビー』としてリメイクされ世界的ヒットとなりました。
その後、スランプに陥りますが、『赤ちゃんに乾杯!』のハリウッド版『スリーメン&ベビー』の撮影に同行した際に思いついたストーリー『ロミュアルドとジュリエット』の映画化に踏み切ります。
その後も次々とヒットを飛ばし、2004年には当時のフランス大統領ジャック・シラク(Jacques Chirac)によってレジオンドヌール勲章(L'ordre national de la légion d'honneur:1802年にナポレオンにより制定された、国家功労・芸術文化勲章)が送られ、シュヴァリエの階級が与えられました。
また、彼女自身も女優であることから、現在でも舞台での活動を続けています。
ジュリエットのようなシンデレラストーリーを歩んだフィルミーヌ・リシャール
頼り甲斐のあるチャーミングなジュリエットという女性を演じたフィルミーヌ・リシャールは、この『ロミュアルドとジュリエット』がデビュー作にあたります。
制作が始まった当初、ロミュアルド役を始め、ほとんどの役のキャスティングが決まっていましたが、ジュリエット役はなかなか見つからなかったそうです。
そんなある日、映画のキャスティングディレクターが偶然入ったアンティル料理のレストランで、お客さんとしてきていたリシャールに目が止まりました。
当時リシャールはグアドループ在住で地方議会の会計秘書として働いていましたが、病気の治療のためにたまたまパリに滞在している時でした。
正式に出演依頼をされたとき、リシャールはセロー監督作品の『赤ちゃんに乾杯!』の大ファンであったこともあり、映画の出演に承諾したそうです。
全くの演技初心者でありながらスカウトで準主役に抜擢されたリシャールは、まさに映画のジュリエットさながらのシンデレラストーリーでスターの仲間入りを果たしました。
その後も数々の映画に出演し、2008年に入ると移民が多い19区のパリ評議員に選出され、それ以降は政界進出も果たしています。
まとめ
80年代と90年代に大活躍した女性コメディー映画監督の第一人者セロー。
彼女が1989年に発表した映画『ロミュアルドとジュリエット』は、若いエリート白人男性ロミュアルドと5人の子持ちの清掃業者として働く黒人女性ジュリエットの異色のロマンティック・コメディー映画です。
男性社会であるコメディー映画業界で、次々にヒットを飛ばしたセロー監督と、ジュリエットさながらのシンデレラストーリーを歩んだフィルミーヌ・リシャールによって、この映画は普通のコメディー映画と一線を画す仕上がりになっています。
フランス語の学習者にとっては、黒人たちの独特のアクセントがあるフランス語を耳にする良い機会ですので、是非聞き取りにチャレンジしてみてください。
2021年の今見てもテーマが新たしい映画『ロミュアルドとジュリエット』。
フランスにおける肌の色に対する「見えない壁」を見ることができる、オススメ映画です。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。