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フランスやフランス語圏に留学してフランコフォンと実際に話してみると、フランス語の授業では聞いたことのない言葉を耳にすることが多くあります。
仏検準一級や一級に合格していても、ついていけない単語がポンポン出てきて、「がんばって勉強してきたのになぜ?」とがっかりすることもあるかもしれません。
それは、学校の授業や仏検対策では口語フランス語を学ばないからです。
日本人が、友達とは教科書に出てくるような言葉遣いで会話しないのと同様に、フランコフォンも友達同士での会話は、くだけた表現の「口語フランス語」を使います。
さらに、いわゆる「スラング」と呼ばれる表現や言い回しも多用され、学校や仏検対策で習得できる語彙や表現力では日常の会話には対応しきれないのです。
でも、口語フランス語は意識して学べば習得は難しくありません。
この記事では、口語フランス語の中で動詞「foutre」を取り上げて、日常会話でよく使われる言い回しやスラングをご紹介していきます。
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よく使われる口語フランス語動詞foutreの意味とは?
辞書で「foutre」を調べてみると、次のような意味が紹介されています。
- する、やる。
- ~を(乱暴に)置く、ほうる。
- ~を食らわす、くれてやる。
つまり、「faire」の俗語表現と言えます。
ちなみに、私の持っている辞書では、卑語とみなされ、婉曲語「ficher」で代用することがあるとも述べられていました。
辞書の説明を読むだけでは、汚い表現として普通には使われていない印象を受けてしまいますよね。
しかし、実際にはフランス映画の中でもよく耳にしますし、日常生活の中でも友達や家族の間ではよく使われています。
辞書の説明を見るだけでは、どのように使われるのかが、いまひとつわかりにくく感じます。
では、実際にはどのような言い回しで使われるのでしょうか?
幾つか例を挙げてみましょう。
Foutez-moi la paix.の意味と使い方
この表現には「ほうっておいてくれ」「ほっといて」という意味があります。
「ほっといて」と聞くと、«Laissez-moi tranquille.»という表現がすぐに出てくるかもしれません。
こちらは仏検でも頻出の口語表現と言われているようで、フランス語学習者にはおなじみではないでしょうか。
しかし、日常の会話では、«Foutez-moi la paix.»が使われることも多いです。
自分が使わないとしても、覚えておくようにしましょう。
Qu’est-ce que t’as foutu?の意味と使い方
この表現には「一体全体お前に何があったんだよ?」という意味があります。
相手が予想外のことをしたときに使える表現です。
「foutre」が入っていますので、相手を心配して尋ねるというよりも、少し相手を馬鹿にしたような、あるいは少しいら立ちを含んだようなニュアンスの表現と言えるでしょう。
イメージを深めるために、フランス映画『最強のふたり』(2011)の一場面でどのように使われているかをご紹介します。
黒人青年ドリスが弟アダマの顔にあるケガに気づいて尋ねている場面です。(和訳は意訳です)
Driss: Ça c’est quoi là?(それ、どうした?)
Adama: Rien, laisse tomber.(何もないよ)
Driss: Qu’est-ce (que) t’as foutu?(お前、マジでどうした?)
Adama : Je suis tombé en scooter.(スクーターでこけたんだよ)
Driss : T’es tombé en scooter.(スクーターでこけたんだな)
Adama : ouais.(そうだよ)
(引用 :『最強のふたり』(2011))
弟の顔にある傷を見たドリスは、«Ça c’est quoi là?»(それ、どうした?)と尋ねていますが、弟は「何も」と言って答えようとしません。
本当はスクーターでコケたのではないと疑うドリルは、傷の原因を聞き出そうと、少し強い調子で、《Qu’est-ce (que) t’as foutu?》と尋ねているのがわかります。
Je m’en fous.の意味と使い方
この表現は、主に「どうでもいいよ」「気にしない」という意味で使われます。
シチュエーションによっては、相手の要求に対して、「自分には無関係だから勝手にしろ」というときや、「いやだよ」というときにも使えます。
映画『最強のふたり』では、大富豪のフィリップが黒人青年ドリスのことを評価する場面で使われています。
ドリスの素性を調べたフィリップの友人は、ドリスを近くに置かないほうがいいのではないかと忠告します。
しかし、フィリップの答えは次のようなものでした。
«Il est grand, costaud, il a un cerveau qui fonctionne... alors, tout le reste, dans mon état... sa vie d’avant, je m’en fous.»
(体が大きいし強くて、ちゃんと動く脳みそも持っている。だから、私の現状を顧みると、彼の素性や過去など、他のことは、どうでもいいことだ)
(引用:『最強のふたり』(2011))
最後に«Je m'en fous.»が格好良く使われていて、フィリップの名言となっています。
ちなみに、ご紹介した『最強のふたり』(2011)は口語フランス語の宝庫となっていますので、興味のある方は是非ご覧になってみてください。
アマゾンプライムの会員なら、prime video対象なので無料で観れます。
フランス映画『最強のふたり』をフランス語学習者にお勧めする理由
「foutre」を使った言い回しやスラングの例
「foutre」を使った口語表現やスラングはほかにもたくさんあります。
さらにいくつかご紹介いたします。
N’en avoir rien à foutre(どうでもいい、しったことではない)
N’en avoir rien à foutreは、「どうでもいい」という意味ですが、「どうなろうと知ったこっちゃない」という表現がしっくりきます。
«Je m'en fous.»と基本的に同義ですが、更に強い語調で言いたいときに使われます。
例えば映画などでは、嫌味なエリート官僚が自慢げに将来像を語るシーンでノンキャリが苛ついて、
«J’en ai rien à foutre de ce que tu vas devenir!»
と言い放つような場面であれば、次のようなニュアンスになります、
「お前が将来どうなるかなんて、どうでもよくて、知ったこっちゃなねぇんだ!」
他にも、興味がないことや、どうでもいいことに対して意見を求められた際に、ぶっきらぼうに、
「俺には関係ねぇ。どうでもいいから好きにやれば?」
というニュアンスで、《Je n’en ai rien à foutre.》と用いられます。
Se foutre de la gueule de(馬鹿にする)
《Se foutre de la gueule de》は、「馬鹿にする」という意味のスラングです。
映画などでは、«Tu te fous de ma gueule ou quoi?»(お前、馬鹿にしてるのか!?)といった言い回しをよく聞くことがあります。
「てめぇ、俺のことナメてんのか?」と凄むようなニュアンスです。
Aller se faire foutre.(くたばる。消える)
相手が一人であれば、«Va te faire foutre!»
相手が複数の場合は、«Allez vous faire foutre!»
命令形の表現で使います。
日本語では、意訳として「くたばれ!」「とっとと消え失せろ!」「くそくらえ!」といった表現で訳されますが、英訳すると、Fuck you、Fuck offといったニュアンスです。
できる限り自分で使うのは避けたほうが良い、かなり強い意味のスラングで、«Va te faire!»と省略されることもあります。
こうした表現を実際に使うということはないかもしれませんが、フランスに住んだりすることがあれば耳にする機会があるかもしれません。
まとめ
この記事では、「foutre」という口語動詞を取り上げて、実際にどのように使われているのかをご紹介しました。
フランス語は美しい言語と言われていますが、日常生活ではスラングや汚い表現が多々使われています。
ちょっとイメージが崩れるかもしれませんが、口語フランス語やスラングを学ぶことは、フランコフォンの友人との関係を深めていくうえで欠かせません。
口語フランス語やスラングを学んで、フランス語の奥の深さを探求していきましょう!
慶應義塾大学文学部出身|英語教師・日本語教師
趣味は旅行とカフェでゆっくり過ごすこと。
座右の銘は「どの雲にも銀の裏地がついている」。
どんなに辛い状況でも、その先には明るい光が待っていると思うと「もう一歩先に進もう」と思えます。
フランス語を勉強し始めたきっかけについては、詳しいプロフィールでご紹介しています。