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まだ見ぬ「祖国」のために、男たちは命をかけた!
サッカーのワールドカップで活躍するフランス代表選手の「アフリカ人」の多さに驚いたことはありませんか?
フランスとアフリカ大陸との「密接な関係」の歴史は非常に長く、2022年現在の移民制度にも大きな影響を及ぼしています。
移民に関しては、フランスの政治・経済・歴史・時事を語る上で基礎知識として知っておかなければならないテーマの一つですが、「どこから勉強すればいいのかわからない!」という方も多いはず。
そんな方にまず見ていただきたいフランス映画が、この記事でご紹介させていただく『デイズ・オブ・グローリー(原題:Indigènes)』です。
第二次世界大戦で「フランス人」として戦った旧仏領地・植民地出身の兵士に焦点を当てた本作品は、フランス国内では社会現象になるほど大ヒットしました。
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それでは早速、映画のあらすじと、公開当時にスキャンダルとなった旧仏領地・植民地の元兵士に対する恩給・年金締結問題に迫ってみます!
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銃弾の前ではみんな平等!映画『デイズ・オブ・グローリー』のあらすじ
1943年、第二次世界対戦下の北アフリカ諸国。
ナチスによってジワジワと占領されていたフランス本土を開放するため、仏軍は仏領地および植民地で兵士を募っていました。
仏領地アルジェリアの貧しい村に住むサイード(Saïd)は、止める母をバッと振り切り、貧困からの脱出、そしてまだ見ぬ祖国であるフランスの自由のために立ち上がり、義兵として名乗りでます。
同じ頃、仏領地モロッコではヤシール(Yassir)は弟ラルビ(Larbi)の結婚資金を稼ぐために仏軍に入隊し、バタバタと慌ただしく訓練へ参加。
そして、仏植民地セティフからは、フランスが掲げる「自由、平等、友愛」を心から信じているアブデルカデ(Abdelkader)が、フランス行きを志願したのです。
こうして北アフリカおよびアフリカ諸国からどんどん集まってきた彼らは、フランス軍から「原住民(les indigènes)兵」と呼ばれ、第7アルジェリア歩兵連隊に配置されることに。
指揮は「ピエ・ノワール(Pieds-noirs)」のマルチネス軍曹(Martinez)。
彼ら原住民兵の任務は、最前線で「人間の盾」となりナチス軍を誘き出すことだったのですが……
旧仏領地・植民地の元兵士に対する恩給・年金締結問題とは
不当な差別を受けつつも祖国フランスの自由のために戦った、仏領地・植民地の兵士にスポットを当てた映画『デイズ・オブ・グローリー』。
白人でありながら、北アフリカ人同様に差別を受けていたピエ・ノワールの立ち位置も見事に描き出されています。
ここでは、近代フランス史の闇と言われる旧仏領・植民地の元兵士に対する恩給・年金締結問題について解説していきます。
旧仏領地・植民地の元兵士とは?
映画のテーマになっている旧仏領地・植民地の元兵士とは、第二次世界大戦(1939年〜1945年)の間に、アルジェリアなどの仏領地およびマリなどの仏植民地から集まり、フランス人として戦った兵士たちのことです。
恩給・年金締結問題とその後
映画の最後で語られる、旧仏領地・植民地の元兵士に対する恩給・年金締結が、映画公開当時フランスで物議を醸し出しました!
そもそも、なぜ締結されたのか、その経緯をみてみましょう。
締結の理由
戦時中までは「フランス」だった仏領地・植民地。
そのため戦後しばらくは、全ての元兵士がフランス本国に住むフランス人元兵士と同じ条件で、恩給・年金などの手当が支給されていました。
ところが第二次世界大戦終了後しばらくして、北アフリカをはじめ、仏領地・植民地諸国が相次いで独立して行きます。
それに伴い1959年、ドゴール政権は、独立した国々出身の元兵士はフランス人ではないとし、恩給・年金支給額を据え置き(凍結)にすることを決定します。
さらに、1981年のミッテラン政権下になると、修正予算法によって1962年に独立したアルジェリア出身の元兵士に対しては、支給額の修正・改正が不可能になってしまいます。
その後も、元外国人兵士やその遺族たち、人権団体などによる働きかけや抗議活動が続き、2002年になりシラク大統領によって「恩給・年金支給額の凍結解除」が約束されます。
フランス映画『デイズ・オブ・グローリー』の影響
2006年、映画『デイズ・オブ・グローリー』が公開され、世論が動き出し始めた途端、なんとシラク大統領は凍結解除に動き出すと宣言!
その5年後、2011年に恩給・年金支給額の凍結解除が正式に廃止されたのです。
まとめ
忘れられた仏領地・植民地の兵士たちにスポットを当てた映画『デイズ・オブ・グローリー』。
主演の仏領地・植民地の兵士たちを演じたのは、大人気の北アフリカ系フランス人俳優たちで、彼らもまた「原住民兵」の子孫にあたります。
本作品では標準のフランス語だけでなく、訛りがあるフランス語を耳にすることができるので、リスニング強化にも大変有効です。
この映画で近年の移民問題のベースに触れた後に、少しずつ歴史を遡っていくことで、よりフランスの政治・経済・歴史・時事が理解できるようになるでしょう。
フランス「移住」をする前に、見ておくべき映画の一つです!
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。