フランス映画『戦場のアリア』のあらすじと元となった実話の「クリスマス休戦」とは

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この記事では、戦争中に起こった奇跡のような実話「1914年のクリスマス休戦(Trêve de Noël 2014)」を元にした映画『戦場のアリア(原題:Joyeux Noël)』をご紹介します。

戦場のアリア(原題:Joyeux Noël)』は、フランスで2005年に、そして日本では2006年に公開されたフランス・イギリス・ドイツ共同制作の映画です。

クリスマスがいかにヨーロッパ人にとって特別なものか、そして戦争とは何かについて深く考えさせられる感動作品になっています。

こんにちは!フランスに住むようになって、クリスマスの大切さを理解するようになったパリ在住のカタクリです。

この記事では、『戦場のアリア』のあらすじ、映画のベースとなっている実話のエピソードに加え、劇中の印象的なフランス語フレーズをご紹介します。

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実話が元になっている映画『戦場のアリア』のあらすじ

1914年の夏、第1次世界大戦が勃発しました。

フランス・スコットランド連合軍対ドイツ軍間で激しい爆撃戦が行われている中、ドイツではベルリン・オペラ座のテナー歌手としてキャリアを築いていたニコラウス・シュプリンク(Nikolaus Sprink)が、徴収命令により戦場へ向かうことになりました。

その頃、英国教会のパーマー牧師(le pasteur Palmer)は、戦傷した兵士達のための担架係を志願し戦場へ向かいます。

そして時を同じくして、フランス軍のオードゥベール中尉(le lieutenant Audebert)は、妊娠している妻を案じながらも戦場へ行かざる得なくなったのでした。

数ヶ月後、ドイツに占領されているフランス北部の小さな村で連日緊迫した戦いが続く中、それぞれの国の軍隊にニコラウス、パーマー牧師そしてオードゥベール中尉の姿がありました。

次々と兵士が命を落とす激しい戦闘の中、とうとうクリスマスを迎えます。

昼間の銃撃戦が嘘のように静まり返ったクリスマスの夜、国の家族や軍本部から手紙やプレゼントが届き、疲れ切っていた軍の兵士たちの顔にも微笑みが浮かびました。

兵士たちがそれぞれの塹壕内で静かに夕食を取っていると、スコッットランド軍のパール神父がバグパイプでクリスマスソングを演奏し始めました。

しばらくすると、バグパイプのメロディーに合わせでドイツ軍のニコラウスは歌い始めます。

フランス軍とスコットランド軍の兵士たちが覗き込むと、ドイツ軍の塹壕沿いには無数のクリスマスツリーが並び、その一つを手に持ったニコラウスはクリスマスソングを歌い続けながら、無防備のままノーマンズランドと呼ばれる各軍の中間地点に姿を表しました。

ニコラウスを止めようと塹壕から出てきたドイツ軍のホルストマイヤー中尉 (le lieutenant Horstmayer)、そしてそれを見ていたフランス軍のオードゥベール中尉とスコットランド軍のゴードン中尉(le lieutenant Gordon)もノーマンズランドへ向かいます。

そして各軍の中尉が話し合った末、争いを一旦中断してクリスマスを一緒に過ごす事になるのでした。

実話『1914年のクリスマス休戦(Trêve de Noël 2014)』

映画『戦場のアリア』は、第一次世界大戦で行われた『1914年のクリスマス休戦』と呼ばれる出来事が元になっています。

実際に「クリスマス休戦」は何箇所の戦地で行われたそうですが、特に有名なのがベルギー国境近くの戦地でドイツ軍が塹壕沿いにクリスマスツリーを飾ったエピソードです。

本編でも引用されていますが、軍本部から大量に送られてきたクリスマスツリーをドイツ兵士が塹壕の上に火を灯したロウソクとともに飾り、敵のイギリス・ベルギー・フランスからなる連合軍にクリスマスを共に祝うための「休戦」の交渉をしたと言われています。

夕方まで銃を向け合っていた兵士たちが握手を交わし、一緒にクリスマス・ソングを歌いながらお酒を飲み食事しただけではなく、家族から送られてきたプレゼントを交換しサッカーを一緒に楽しむなど戦争中とは思えない交流もありました。

お互いの軍から出てしまった戦死者を協力して埋葬したというエピソードも残っています。

第一次世界大戦が始まった当初は数ヶ月で終わると思われていたため、記念として軍服のボタンを交換したり、戦争が終わったら遊びに来るようと自宅に招待したりする兵士たちもいたそうです。

「クリスマス休戦」は戦地の兵士の間で行われたもので、軍の命令ではありませんでした。

そのため、状況を知った軍上部は兵士の士気低迷を恐れて、多くの戦場では戦争をすぐに再開しましたが、中にはお正月まで休戦をした戦場もあったそうです。

「クリスマス休戦」は公式の記録としては残っていませんが、個々の兵士たちが家族に送った写真や手紙で知られるようになり、今でも戦争の悲劇を物語るエピソードとしてヨーロッパの人々に語り継がれています。

劇中で印象に残るオードゥベール中尉のセリフ

ここではこの映画のメッセージとも言える、オードゥベール中尉のセリフを一緒に見てみましょう。

「クリスマス休戦」のことで父である将軍とオードゥベール中尉が口論をする場面です。

Le pays ? Mais qu’est-ce qu’il sait le pays sur ce qu’on souffre ici ?
国?だったら、僕たちがここで苦しんでいることを国は知っているの?

Je vais vous dire moi, je me suis senti plus proche des Allemands, que ceux qui crient « Mort aux Bosches » chez eux bien au chaud devant leur dinde aux marrons !
僕があなたに言えるのは、クリスマス料理(栗と七面鳥の丸焼き)を前に家で暖をとりながら「ドイツ兵に死を!」と叫んでいる奴らより、ドイツ兵の方に親しみを感じるって事だ!

出典:映画『戦場のアリア(原題:Joyeux Noël)』

セリフの中に出てくる、「Bosches(またはBochesとも書きます)」とは1870年に行われた普仏戦争以来、第二次世界大戦まで「ドイツ兵」を指すときに侮辱的なニュアンスとして使われていました。

現在では「ドイツ人」を指す言葉として頻繁に耳にしますが、とても侮辱的なニュアンスが含まれているのには変わりません。

日常会話での使用は避けたほうがいいですが、よく使われる単語なので知識として覚えておいた方がいいでしょう。

この事を踏まえた上で、「Bosches」と 「Allemands」の使い分けに注目してみましょう。

現場の状況にも気にもとめず上から指図し、ドイツ兵(Bosches)を侮辱しながら威張っているだけのフランス軍上部に対して、敵ではあるが恐怖と寒さの中戦っているドイツ兵(Allemands)の方が身近に感じる、というオードゥベール中尉の気持ちが彼のセリフからはっきりと読み取れます。

敵味方は関係なく、戦争は常に最前線にいる兵士が一番の犠牲者であると訴えることで、戦争の愚かさを訴える心に残るセリフと言えるでしょう。

まとめ

フランスでは2005年にそして日本では2006年に上映されたフランス・イギリス・ドイツ共同制作の『戦場のアリア』は、実際に戦場で起こった『1914年のクリスマス休戦(Trêve de Noël 2014)』という、ヨーロッパの人々に語り継がれているエピソードが元になっている映画です。

各地の戦場で兵士同士が行った休戦なので、公式の記録としては残っていませんが、個々の兵士たちが家族に送った写真や手紙で知られるようになりました。

戦争中の奇跡のようなお話ですが、同じキリスト教徒圏である兵士たちがクリスマスという一年でもっとも大切な日の一つを共に祝う姿に、心を打たれる人も多いのではないでしょうか。

劇中で英語、ドイツ語、フランス語と3か国語が飛び交うところが、まさに色々な言語や歴史が混じり合ったヨーロッパという独特な土壌を表しています。

フランス語を学習されている方には、フランス語の新聞記事を解読する上で大切な知識「ヨーロッパの近代史」の入門編として、映画『戦場のアリア』をご覧になることをお勧めします。

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