今回取り上げるのは、「フランス人で知らない人はいない」と言われるコメディー映画『奇人たちの晩餐会(Le dîner de Cons)』です。
1993年に舞台作品として発表され、1998年に映画化された本作は、同年、フランスではあの『タイタニック』に次いで2位の興行収入を記録した大ヒット作品です。
公開から20年以上経った現在もなおフランス人に愛され続ける本作品の魅力をご紹介します。
映画『奇人たちの晩餐会』が観れる動画配信サービス
こんにちは!70代80年代のフレンチ・コメディ映画が大好きなカタクリです。
『奇人たちの晩餐会』は、77分間のジェットコースター・フレンチコメディーです。
『奇人たちの晩餐会』を観れる動画配信サービスは下記のとおり。
サービス名 | 有無 | 無料期間 | 月額(税込) |
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映画『奇人たちの晩餐会』のあらすじ
出版会社を経営するピエール(Pierre)は、毎週水曜日に友達と少し変わった晩餐会を催していました。
それは、各自必ず一人の「奇人」を招待し、その中で最も「優れた奇人」を連れてきた人が勝ちというものです。
その「奇人たちの晩餐会」に参加するため、ピエールは友達に紹介された「世界トップレベルの奇人」を自宅に呼ぶことにします。
彼の名はフランソワ・ピニョン(François Pignon)。
税務署に勤め、マッチで作る模型マニアです。
晩餐会の当日、腰を痛めた挙句に夫婦喧嘩が原因で妻のクリスティーヌ(Christine)が家を出て行ってしまったピエール。
仕方がなく晩餐会を欠席しようとしたその時、奇人のピニョンが現れます。
ピエールが弱っているところを見て、なんとか助けたいと思うピニョンですが、医者を呼ぶ代わりにピエールの愛人マルレーヌ(Marlène)を呼んでしまったり、せっかく戻ってきたクリスティーヌを追い返してしまったりと破茶滅茶な事をしてしまいます。
世界トップレベルの奇人ピニョンに翻弄されるピエールは、更なる災難に巻き込まれていくのでした。
キャストはフランス人なら誰でも知っている国民的スター大集合
『奇人たちの晩餐会』の魅力の一つは、何と言っても豪華な俳優陣です。
奇人のフランソワ・ピニョン役を演じたジャック・ヴィルレ(Jacques Villeret) は、70年代から舞台や映画で活躍していた俳優です。
残念ながら2005年に53歳という若さで他界してしまいましたが、多くのコメディー映画や舞台に出演していました。
この映画ではセザール賞で最優秀主演賞を受賞しています。
劇場版も映画同様、ジャック・ヴィルレが1993年から1997年までフランソワ・ピニョンを演じていました。
そして、ピニョンに翻弄されたピエール役のティエリー・レルミット(Thierry Lhermitte)も70年代から現在に至るまで沢山のお芝居や映画、そしてテレビドラマに出演している人気俳優です。
本作のようにダンディなお金持ち役で多くのコメディー作品に出演しています。
ピエールの愛人マルレーヌを演じたカトリーヌ・フロ(Catherine Frot)も、フランスでは知らない人がいない人気女優で、コメディーからシリアス、脇役から主人公まで幅広く演じています。
この映画では、セザール賞の助演女優賞を受賞しました。
ピニョンの友達で税務署の調査官であるルシアン(Lucien)役のダニエル・プレヴォスト(Daniel Prévost)は、人気バンデシネの『アステリクスとオベリクス(Astérix et Obélix)』や50年以上愛されている児童書の『プチ・ニコラ(Le Petit Nicolas)』の実写版映画にも出演しています。
『奇人たちの晩餐会』ではセザール賞の助演男優賞を受賞しました。
この物語の原作者であり映画監督兼脚本家のフランシス・ヴェべール(Francis Veber)は、自分の作品に「フランソワ・ピニョン」と言う人物をよく登場させおり、数々の有名俳優が演じています。
そのためフランス人にとって「フランソワ・ピニョン」という名前は、「おっちょこちょいでおバカさん」の代名詞になっています。
フランス人から見た典型的なフランス人像
フランス人というと「おしゃれ」「ワインが好き」「プライドが高い」などのイメージを持っている人が多いと思いますが、実はフランス人同士でもステレオタイプのイメージがあります。
例えば典型的なパリジャン像、それがピエールと彼の友人であり、かつてはクリスティーヌを奪い合った親友のジュスト・ルブラン(Juste Leblanc)です。
パリジャンといえば、表向きは人当たりがいいけれど、どこかで人をバカにしている態度のエレガントなお金持ち。
職業は知的分野(ピエールは出版会社の経営者)や、アーティスト(ジュストは作家)が多く、綺麗で真面目な専業主婦の妻がいる傍、情熱的な可愛らしい愛人がいる。
そんなちょっと鼻持ちならないパリジャンと対比するのが典型的な庶民像のピニョンと、友人のルシアンです。
使う言葉はガサツだけど、単純でお人好し。
そして何より、フランスのリーグ・アン(Ligue 1)が大好き。
仕事が終わった後、お気に入りのチームを応援しながらビールを飲むルシアンの姿は、まさにフランス人がイメージする「これぞ庶民!」像なのです。
『奇人たちの晩餐会』の名シーン
『奇人たちの晩餐会』には数多くの笑いどころがありますが、その中でもフランス人に愛されている名シーンをご紹介します。
男としてのプライドを捨てた「頑張れ、ロエム!」
家を出て行ってしまったクリスティーヌの行き先を突き止めるために、友達の税務調査官のルシアンに電話をかけると、折しもフランスで1、2を争う人気チーム、ロリンピック・ド・マルセイユ(L’Olympique de Marseille)対 アー・ジー・オクセル(AJ Auxerre)の試合中でした。
マルセイユの大ファンであるルシアンは、2点差で負けているオクセルの大ファンのピニョンをバカにします。
ピニョンは熱烈なアー・ジー・オクセル(AJ Auxerre)のファンで、「お願いがあって電話していること」をすっかり忘れ、 L’OMのファンであるルシアンに対し、"Aux chiottes l'OM(L’Olympique de Marseilleの愛称で、ロエムと発音します)"と連呼してしまいます。
「chiotte」とはフランス語の俗語で「便所」を意味し、「Aux chiottes」という表現で下品な「ヤジ、罵倒」です。
そのまま電話を切ってしまうピニョンですが、お願い事があることを思い出し、すぐに掛け直します。
ルシアンは"Allez L’OM! (頑張れ、ロエム!)"と言えば話を聞いてやるの条件を言われ、ピニョンはまるで男のプライドを捨てるかのようにしぶしぶと"Allez L'OM."と言う場面は、フランス人にとって爆笑ポイントの一つになっています。
そのシーンの動画はこちらです。
日本の野球で言えば、巨人ファンが熱烈な阪神ファンに対して「巨人を応援しろ」と迫り、しぶしぶ屈したと読み替えると、わかりやすいでしょうか。
絶妙なやりとりが魅力「彼の名前はジュスト・ルブラン」
本作には、たくさんのjeux de mots(ダジャレ)が出てきますが、中でも伝説的な場面"Il s’appelle Juste Leblanc."を一緒に見ていきましょう。
ピエールは、家出した妻のクリスティーヌを探すために、かつての親友でクリスティーヌの婚約者だったジュスト・ルブランに電話をするようにピニョンに頼むシーンです。
ピエール:Il s’appelle Juste Leblanc.(彼の名は、ジュスト・ルブランだよ。)
ピニョン:Ah bon, il n’a pas de prénom?(え、ファーストネームがないんですか?)
ピエール:Je viens de vous le dire Juste Leblanc... Votre prénom c’est François, c’est juste ? Eh bien lui c’est pareil, c’est Juste!
(ジュスト・ルブランと言ったばかりでしょう・・・あなたの名前はフラソワ、そうでしょ?だとしたら彼も同じで、ジュストですよ。)
これは、「Juste」を使ったダジャレです。
「Juste」には次のような意味があります。
・単なる、ただの
ピエールが"Il s’appelle Juste Leblanc."と言った際に、ピニョンは彼のファーストネームである「Juste」を形容詞の「juste(単なる)」だと理解したので、よくわからなくなってしまったのです。
そして"C’est juste?"とピエールがピニョンに確認しているときの「juste」は「正しい」という意味として使われていて、このシーンでは「そうでしょ?」と訳されます。
ファーストネームとしての「Juste」、形容詞の「単なる」という意味としての「juste」と「正しい」という意味としての「juste」。
3つの「Juste」でダジャレのような掛け合いをしているのがこのシーンの見どころです。
ちなみに、"C’est juste !"というフレーズはフランス人がよく使うもので、「その通り!」という意味の他に、場合によっては「それはギリギリだなぁ」というネガティブなニュアンスにもなります。
まとめ
次々に事件が起こりテンポよく進んで行くので、全く飽きることがなく最後まで見ることができます。使われている単語や言い回しは難しくないものの、「Juste Leblanc」のシーンのように、jeux de mots(ダジャレ)を理解するのは難しいかもしれませんが、俳優さんたちの発声ははっきりしているので、フランス語の学習にも大変役立つと思います。
何度見ても新しい発見があり飽きることがない『奇人たちの晩餐会』。
フランス人が描く「パリジャン」や「庶民」のイメージも学ぶことができ、フランスの文化を学ぶ上でも面白いと思いますよ。
『奇人たちの晩餐会』は『タイタニック』に次いで興行成績2位となった映画なので、フランス人なら誰もが知っていると言っても過言ではありません。
この映画が話題になった時に話題についていけるよう、「教養の一つ」として観ておくことをおすすめします。
映画『奇人たちの晩餐会』が観れるビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス
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『奇人たちの晩餐会』の他にも、例えば、
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趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。