ドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ(Visages Villages)』のあらすじ&映画監督アニエス・ヴァルダとJR

映画監督のアニエス・ヴァルダ(Agnès Varda)写真家でアーティストのJRが、フランスの田舎を旅しながら人々と一緒に作品を作っていくドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ(Visages Villages)』

54歳差の年齢を超え育まれる2人の友情と、村々に住む人たちとの出会いに心があたたまる作品です。

2017年のカンヌ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞のルイユ・ドールを受賞、同年のトロント国際映画祭では最高賞にあたるピープルズ・チョイス・アワードのドキュメンタリー部門を受賞、さらに、米国アカデミー賞セザール賞にもノミネートされるなど、世界中の映画祭を席巻したフランスの傑作ドキュメンタリームービーです。

この記事では、『顔たち、ところどころ(Visages Villages)』のあらすじと映画監督のアニエス・ヴァルダについてご紹介します。

ドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ(Visages Villages)』のあらすじ

ヌーヴェルヴァーグの立役者で巨匠とも呼ばれる映画監督のアニエス・ヴァルダ(作中87歳)と、参加型アートプロジェクト「Inside Out」で知られる写真家でアーティストのJR(作中33歳)が、2人で一緒に映画をつくることを思いつく。

JRのフォトスタジオつきトラックに乗り、無計画でフランス国内の田舎をめぐる旅に出る。

2人は偶然出会った人々の顔写真を撮影し、大きく引き伸ばし、壁に貼っていく。

Chaque visage a une histoire.
(顔が人生を語る)

出典:映画『顔たち、ところどころ』

その土地の歴史、そこで生まれ育った人たちの生き様を表現していくのだ。

炭鉱労働者の村で取り壊される坑夫住宅の最後の住人となった女性、1人で800ヘクタールの農地を耕すシェランス村の農夫、大恋愛の末に駆け落ちをした曾祖父母を持つ女性、カフェの美しいウェイトレス、工場の従業員たち、村人たちをつなぐ配達員……

2人はJRのトラック一台で、フランス国内の北から南まで様々な土地に足を運び、たくさんの人たちと出会い、繋がっていく。

徐々に目が見えづらくなるアニエスと、ゴダールのように決してサングラスを取ろうとしないJR。

彼らは互いにこう問いかける。

En fait, tu vois flou et t’es contente?
(ぼやけてても幸せなの?)

Et toi tu vois tout foncé et tu es content?
(あなたは、ずっと薄暗い世界にいて幸せなの?)

出典:映画『顔たち、ところどころ』

最後にアニエスが用意したサプライズとまさかの展開には、誰もが心を打たれる。

旅を通じて深まる、親子以上に年の離れた2人の友情と人々との出会いが、世界中の人たちを感動させていく。

アニエス・ヴァルダ(Agnès Varda)とJR

ベルギー・ブリュッセル出身で、「ヌーヴェルヴァーグの祖母」とも呼ばれ、独創的な作品の数々を世に送り出してきたアニエス・ヴァルダ。

彼女の映画をいくつか観たことがあるという方は多いのではないでしょうか。

そんな彼女と一緒に作品をつくることにしたJRは、本映画を製作するにあたって、彼女にこう提案します。

“On va faire des images ensemble mais autrement.”
(お互い別な撮り方をしよう)

JRといえば、世界中の人たちが参加できるアートプロジェクト『Inside Out』で有名な写真家です。

彼はこの映画をつくる前から、世界中で人々の顔を撮影し、その大きく引き伸ばされた写真を街中の壁や建造物に貼っていくという活動を行なってきました。

東日本大震災の被災地である気仙沼や、アフリカ、パレスチナ、イスラエル、インド、ブラジルなどの貧困地域や戦争などで情勢が不安定な地域にも自ら足を運び、アート作品をつくり上げています。

「自分の作品が人々をつなぐと信じている」 そう話すJR。

彼の作品が、なんでもなかった寂しい土地を蘇らせていきます。

JRの写真はいつも白黒ですが、まるでその土地に彩りを添えるかのように、人々に笑顔と感動を与えてくれるのです。

「JRは私の夢を叶えてくれた。人と出会い顔を撮ることだ。これなら皆を忘れない。」

出典:映画『顔たち、ところどころ』

本作中でそうつぶやくアニエス。

フランスの田舎町で人々と出会い、彼らと言葉を交わすアニエスの顔はとても輝いて見えます。

どんどん衰えていく体、見えづらくなる目… JRからアニエスに贈られた最後のプレゼントからは、この旅を通じて築かれた2人の深い絆がうかがえます。

まとめ

キュメンタリー映画『顔たち、ところどころ(Visages Villages)』のあらすじと、本映画を製作したアニエス・ヴァルダとJRについてご紹介しました。

ただ顔写真を撮影し壁に貼るというだけのアートですが、写真に映る顔の背景には、その土地の長い歴史や、そこで生まれ育った人たちのストーリーがあります。

私たちには撮影された一瞬の姿しか見えませんが、その土地の建造物の壁に貼ることで、写真からは分からない隠れたストーリーが蘇り人々に感動を与えるのだと思います。

実は、この映画が公開された2年後の2019年に、アニエスは乳癌でこの世を去っています。

この映画で巡った町や村の中には、アニエスがかつて訪れた地もいくつかありました。

自分の人生を振り返り、人々に受け継ぐことができたのは、彼女にとってとても幸せなことだったのではないかと思います。

本当に心があたたかくなる素晴らしい作品でした。

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