※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。
ヌーヴェルヴァーグの巨匠が描く、斬新なミュージカル映画!
みなさんは、日常の生活の中で「きっとここは、私の居場所じゃないかも……」と考えたことはありませんか?
そう考える人にぜひ見ていただきたい映画が、今回ご紹介する『パリでかくれんぼ(原題:Haut bas fragile)』です。
1995年に制作された本作品では、生まれた環境も立場も全く異なる同い年の3人のヒロインたちが、自分の居場所を探すために、「少しの勇気」と「少しの行動力」を持って日常生活を変えて行く姿を見ることができます。
監督は、ヌーヴェルヴァーグを生んだ雑誌「カイエ・デ・シネマ(Les Cahiers du cinéma)」の元編集長であり、自らもメガホンをとったジャック・リヴェット(Jacques Rivette)です。
この記事では、映画のあらすじと、本作品のミュージカル映画としての見方をご紹介します!
リヴェット監督とも交流のあった、ヌーヴェルヴァーグ次世代の巨匠フィリップ・ガレルの『つかのまの愛人(L'Amant d'un jour)』
※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。
自分の居場所を探す女性たちを描いた映画『パリでかくれんぼ』
1994年の夏、パリ。
ワイワイと賑わうバーで、恋人であり恐喝仲間でもある男に、分け前をごまかされたニノン(Ninon)は、きちんと清算する様ように掛け合っています。
お金を受け取ったニノンは、次のカモとなる男性を捕まえるために、ダンスフロアでゆらゆらと踊り始めると一人の男性にナンパされ、お店の裏へ向かいました。
そこへ、いつものように恐喝仲間の男が現れ、ナンパ男をガツンと殴って財布を奪い取ります。
うまくいったかのように見えましたが、ナンパ男は起き上がって仲間の男をドンと突き返してきました。
カッときた相棒の男は、ポケットからナイフを取り出し、ブスッとナンパ男と一刺し。
タタタタと逃げるようにその場を離れたニノンは、アパートに戻ると必要なものだけカバンに入れて出て行ってしまいます。
場所は変わって翌日、5年間の昏睡状態から目覚めたルイーズ(Louise)は、無事に退院。
しかし実家には戻らず、とぼとぼとホテルに向かいます。
資産家である父親に電話をかけると、パリに住む叔母が亡くなったことを告げられ、所有していた家をルイーズが相続することになったと告げられます。
同じころ、装飾美術博物館図書室に務めるイダ(Ida)は、休憩時間を利用して、いつも行く公園内の屋台でパクパクとクレープを食べる日々。
そこで、一人の老人に「どこかで会ったことはないか?」と言われ、どきっとしたイダはその場を離れます。
職場である図書館に戻ると、文献をペラペラめくりながら調べている中年の女性が目に留まりました。
自分の母親と同い年であろうその女性に、自分は養子で、自分が何者なのかわからないと、自分の生い立ちをポツポツと語り出してしてしまうのです。
過去から逃げて新しい人生を始めたいニノン、父親から逃げて自分だけの人生を歩みたいルイーズ、裕福でない両親から逃げ本当の母親を見つけたいイダ。
この全く共通点のないパリに住む3人の女性たちが、ロラン(Roland)という家具修理職人を介して、静かに人生が動き始めるました……
『パリでかくれんぼ』のミュージカル映画としての見方
ミュージカル映画というジャンルに入る映画『パリでかくれんぼ』ですが、登場人物が踊って歌い出すのがなんと、本編が始まってから55分後!
しかも、169分の劇中でトータル4曲しか披露されません!
「これのどこがミュージカル映画なの?!」と思う人が多いと思います。
ここでは、『パリでかくれんぼ』のミュージカル映画としての見方を2点にまとめてみました。
劇中のダンスフロアシーン
映画の冒頭パリのバーや、映画の中盤から登場するダンスフロアバー。
一見長く、無駄なように見えるダンスシーンですが、ストーリー全体を通してみると、ダンスは登場人物の関係性や感情を表現する大切な要素になっています。
登場人物の中でも、特にダンスシーンが多いニノンは、台詞ではなく体の動きで自分のことを表現しているように見えます。
ストーリー展開の要になる歌の数々
本作品の要になると言ってもいいダンスフロアで、当時の人気歌手エンゾ・エンゾ(Enzo Enzo)とヌーヴェルヴァーグのミューズ、アンナ・カリーナが劇中でなんと10曲以上も歌を披露しています。
劇中では、彼女たちが歌う歌は、ストーリー展開に重要になっており、ダンスシーン同様、登場人物たちの心境を見事に語っています。
劇中でアンナ・カリーナとエンゾ・エンゾ本人によって歌われていた曲も合わせてご視聴ください!
「音楽・歌・ダンスで物語を表現する」というミュージカルの定義を、リヴェット監督なりの解釈で制作された、まさに異色のミュージカル映画と見ることができるのではないでしょうか。
まとめ
ヌーヴェルヴァーグを生んだ映画評論誌「カイエ・デ・シネマ」の元編集長であり、自らも監督となったリヴェット監督。
映画『パリでかくれんぼ』は、彼自身初のミュージカル映画です。
アンナ・カリーナを始め、すでにリヴェット作品に出演した俳優陣を集め、新しいジャンルに挑んだ本作品は、無冠であるものの監督の代表的作品の一つに挙げられています。
登場人物の話し方はとても聞きやすいため、フランス語学習の初心者でも、フランス語の字幕付きで挑戦できると思います。
フランス語の学習、そして日常を変えたいと思う人にもオススメの映画です!
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。