※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。
数々の名作フランスミュージカル映画を撮影し、フランス「ヌーヴェル・ヴァーグ世代」を代表する監督ジャック・ドゥミ(Jacques Demy)が手がけた、1970年のフランスミュージカル映画『ロバと王女(原題:Peau d'âne)』を紹介します。
17世紀のフランス人作家シャルル・ペロー(Charles Perrault)が1694年に発表した童話『ロバの皮』を原作とするこの映画には、彼の作品に欠かすことのできないフランスを代表する大女優カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)が主人公の王女を演じています。
その他にも、数々のジャン・コクトー(Jean Cocteau)映画で活躍したジャン・マレ(Jean Marais)などの豪華俳優陣に加え、フランスのみならずアメリカのハリウッドでも活躍した映画音楽の作曲家ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)が劇中の音楽を担当し、見事なドゥミの世界(Demy-monde)を作り出しています。
※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。
ドゥミ監督最高のヒット映画『ロバと王女』のあらすじ
あるところに、宝石のフンをするロバが富の糧となっていた青い王国がありました。
その国の青の王は「私よりも美しく、道徳のある女性と再婚してほしい」と言い残した亡き青の王妃の遺言に従い、再婚相手を探していました。
しかしなかなか見つからず、悩んだ末に亡き王妃よりも美しく道徳のある女性は、自分の実の娘である王女のみであるという結論に至ります。
その日から始まった青の王のプロポーズに困り果てた王女は、自分の名付け親であるリラの妖精のアドバイスをうけ、無理難題を青の王に押し付け結婚から逃れようとしました。
しかし青の王は王女の無理難題を次々とこなしていき、ついには国の富の源であったロバの命までも奪ってしまったのです。
王女はリラの妖精の助けを借り、亡くなってしまったロバの皮を被って、青い王国からの脱出に成功しました。
ロバの皮をまとった王女は、たどり着いた村の村人に卑しい者として扱われ、素性を隠したまま家畜の世話役として雇われることになりました。
そんなある日、理想の女性を見つけるために散歩していた赤い国の王子が、森の中で見つけた小屋の中を覗いてみると、そこにはロバの皮を脱ぎ本来の美しい姿をした王女の姿が。
すっかり王女に恋をしてしまった赤の王子は、その日以来、恋の病のために床に伏してしまいました。
必死で看病する赤の王妃に対し、王子は病気を治すために「ロバの皮」にお菓子を作らせるように頼むのでした。
カトリーヌ・ドヌーヴの歌声を担当した歌手「アンヌ・ジェルマン(Anne Germain)」
カトリーヌ・ドヌーヴの歌声を担当したのは、童謡を多く歌っていた歌手のアンヌ・ジェルマン(Anne Germain)です。
残念ながら彼女は2016年に他界してしまいましたが、映画『ロシュフォールの恋人たち』(Les demoiselles de Rochefort)でもドヌーヴの歌声を担当していました。
実現しなかった「本来の」主演俳優はブリジット・バルドーとアンソニー・パーキンス!?
ドゥミ監督はこの映画を企画した当初は、主演の王女役にブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)を、そして青の王役にはアメリカの俳優アンソニー・パーキンス(Anthony Perkins)を考えていたそうです。
しかし双方のギャラが高すぎたため、交渉は決裂してしまったそうです。
大人気観光地「プレシブレ城」と「シャンボール城」をロケ地にしたトラブル
ロワール川沿いにあるプレシブレ城(château du Plessis Bourré)は青い王国のお城に、そして赤い王国のお城にはシャンボール城(château de Chambord)がロケ地に使われました。
人気の観光地であるシャンポール城では、撮影が行われていた部屋が観光客の通路に面していたため、雑音により何度も撮影が中断されたそうです。
映画で「一番現実的な人物」は妖精!?
ドゥミ監督は、おとぎ話では架空の生き物の代名詞であるリラの妖精を、この映画では「一番現実的な人物」として描いています。
そのため劇中で彼女は常識的なことを話し、当時の流行りの髪型をしてセクシーなハイヒールを履きこなしています。
またラストでは電話を使い、お城にヘリコプターで到着するという驚くべき演出にも一役買っています。
シナリオ作成のドゥミ監督に大きな影響を与えたアメリカ文化とは
この映画のシナリオを手がけたドゥミ監督は、アメリカ滞在中に書描き上げたそうです。
そのため、劇中の鮮やかな色使いや画面構成は、当時現地で流行っていたポップアートやサイケデリックなヒッピー文化の影響を多大に受けています。
『愛のケーキのつくりかた(原題:Recette pour un cake d'amour)』の歌
ミュージカル映画『ロバと王女』では、劇中に様々な曲が使われていますが、その中でも特に人気がある曲『愛のケーキの作り方』で、恋の病に苦しむ赤の王子を治すためのケーキを作りながら、王女が歌っている曲です。
「底の深い皿」を意味する「une jatte」という単語は古く、現在では日常的にあまり使われることはありませんが、童話や文学にはよく出てきます。
Préparez votre(準備しましょうあなたの)Préparez votre pâte(準備しましょうあなたの生地を)とフレーズを繰り返していますが、これは、少しワクワクしながら動揺している王女の気持ちを表しているのと同時に、2行目の「Préparez votre pâte」と4行目の「Dans une jatte plate」、また5行目の「Et sans plus de discours」と、7行目の「Allumez votre four」のように、一行置きに脚韻を踏む、フランスの定型詩の形式にしています。
原作である、ペローの『ロバの皮』が韻文による物語なので、そのオマージュなのかもしれません。
まとめ
『ロバと皮』は日本ではあまり馴染みのない童話ですが、原作者のシャルル・ペローの名前を知らなくても、彼の作品『長靴をはいた猫(Le Chat botté)』『青ひげ(La Barbe Bleue)』『眠れる森の美女(La Belle au bois dormant)』、そして『シンデレラ(Cendrillon, ou la Petite Pantoufle de verre)』は皆さんもご存知だと思います。
原作ももちろんのこと、映画『ロバと王女』が今もなお全世代に愛される理由は、豪華な俳優陣や映像の美しさだけでなく、やはり「歌」にあるでしょう。
可愛らしいリズムと歌詞は、とても聞き取りやすく覚えやすいので、フランス語を勉強されている方にもとても良いフランス語教材になります。
私もフランス語で初めて覚えた曲が『愛のケーキの作り方』で、この曲のお陰で基本的な単語を歌いながら暗記することができました。
「Recette pour un cake d'amour」とネットで検索すると、たくさんのレシピが出てくるので、皆さんも是非「愛のケーキ」を作ってみてください。
フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
オススメや好きな作品は詳しいプロフィールで紹介しています。