フランス映画『宮廷料理人ヴァテール』のあらすじと詳しいキャスト紹介

フランス映画『宮廷料理人ヴァテール』のあらすじと詳しいキャスト紹介

※当ブログにはプロモーションを含みますが、記事内容は公平さを心がけています。

フランスのブルボン王朝が絶世の時代に、歴史に残る大饗宴が行われていました。

宮廷料理人ヴァテール(原題:Vatel)』では「天才料理人」と謳われたヴァテールがルイ14世を招くために度肝を抜く演出と食事を提供したので、その内容をご紹介します。

華やかな貴族の生活、それを支える下の階級の人たち。

当時のフランス社会における身分階級のコントラストが印象に残る、映画史に残る大スペクタクルです。

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映画『宮廷料理人ヴァテール』の予告編と今すぐ観れる動画配信サービス

今すぐ『宮廷料理人ヴァテール』を観たい方のために、動画配信サービス(VOD)の収録状況をお伝えしたいところですが、2021年4月時点の情報ではVODで配信しているところはありませんでした。

Amazon等でDVDを取寄せて鑑賞するのが最も現実的な選択肢です。

宮廷料理人ヴァテール
空前の40億円の制作費を投じられて再現されたルイ14世の宴は必見!

『宮廷料理人ヴァテール』の概要

宮廷料理人ヴァテール』は英仏映画で、実在したフランス人の天才料理人フランソワ・ヴァテールを描いた作品です。

ヴァテールの主人であるコンデ大公が自分の城に「太陽王」ルイ14世を招待し、三日間にわたる大饗宴を行うことになりました。

その饗宴の総指揮を取ることになったのがヴァテール

ヴァテールが仕掛けたルイ14世を驚嘆させる企画とは?

監督は『キリング・フィールド』『ミッション』のローランド・ジョフィー(Roland Joffe)です。

知日家のジョフィー監督は来日記者会見で「この映画は権力と忠誠心を描いた。」と説明し、「日本の終身雇用制は社員の忠誠心を生み出していた。」と、日本のかつての雇用形態にも言及しました。

また、ジョフィー監督は「映画では衣装に日本の着物の色彩を参考にした。」とも説明しています。

それは日本の着物の色彩が、宮廷の権力、華やかさを非常によく象徴しているからなのだそうです。

こういうことを知った上で貴族の華やかな衣装を見てみるのも楽しみになりますね。

『ヴァテール』のあらすじと登場人物

フランス王ルイ14世が建てたベルサイユ宮殿

フランス王ルイ14世が建てたベルサイユ宮殿

1671年、料理人ヴァテールは主人であるコンデ大公のために、ルイ14世をもてなす重責を担うことになります。

コンデ大公はかつて「フロンドの乱」で逆臣となったために、ルイ14世から遠ざけられていました。もし、この饗宴でルイ14世を満足させることができれば、コンデ大公が表舞台に復活するチャンスが生まれるのです。

そのために、コンデ大公は莫大な借金を抱えていたにも関わらず、ルイ14世を招待するという一世一代の賭けに出ました。

準備期間は短く、しかし、そのもてなしは宿泊、食事、エンターテイメント等、全てにおいて完璧でなければなりません。

ヴァテールは、バレエ、オペラ、芝居を絡めた企画を練り、地元の協力を得て、500名の国王夫妻と臣下、女官たちを迎える準備をします。

全ては主人、コンデ大公のため。

ヴァテールの忠誠心は並々ならぬものがありました。

いよいよ、王侯貴族を乗せた長い列の馬車が到着し、歴史に残る三日間の大饗宴が始まりました。

フランソワ・ヴァテール(Francois Vatel)を演じるキャスト:ジェラール・ドパルデュー(Gerard Depardieu)

Metre de l’hotel」という 料理、給仕、接客の責任者です。

平民の出ですが、類稀な才能を持った料理人で完璧な仕事を目指し、また、どんな人にも媚を売らない誇り高い人物です。

舞台になったシャンティイ城で、クレーム・シャンティイを考案したと言われています。

今回の一大イベントの料理・給仕・接客・芝居・音楽・バレエ全ての責任者として総指揮をとり、どんな難題が起こっても慌てずに淡々と処理をしてその責務を果たします。

ヴァテールは自分と同じような信念を持った女性、モントージェ夫人に密かに思いを寄せて、美を極めたプレゼントを贈ります。

ヴァテールを演じるジェラール・ドパルデュー(Gerard Depardieu)はフランスを代表する俳優で、数多くの映画やテレビドラマに出演しました。

フランス語の「hotel」におけるホテル以外の意味とは

Metre de l’hotel」の「hotel:オテル」は通常想像する宿泊施設の「ホテル」とは別の意味で、「広大な邸宅」(ここではシャンティイ城)という意味になります。

また「hotel」は「公共建造物」という意味もあり、「hotel de ville:オテル・ド・ヴィル」は市庁舎になります。

ちなみに、筆者はホテルと勘違いして市役所に来られた旅行者に出会ったことがあります。

アンヌ・ド・モントージェ(Anne de Montausier)を演じるキャスト:ユマ・サーマン(Uma Thurman)

貴族で王妃付きの女官の一人。

シャンティイ城で国王に見初められ、愛人としてデビューすることになります。

堕落した風潮の貴族社会の中で、自分の意思をしっかりと保つ女性で、ヴァテールに共感します。そんな凛としたアンヌ・ド・モントージェ役を美しさで評判が高かったユマ・サーマン(Uma Thurman)が演じました。

『パルプ・フィクション』でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、『キル・ビル』シリーズのキャストでもあります。

ローザン侯爵(Le marquis de Lauzun)を演じるキャスト:ティム・ロス(Tim Roth)

国王の取り巻きの1人。彼もモントージェ夫人に惹かれており、ヴァテールの気持ちに気がついて何かと嫌がらせをする姑息な人物です。実は貴族社会でも苦労があるのだということを教えてくれるのが、ティム・ロス(Tim Roth)演じる、ローザン侯爵で、ちょっと同情的になる場面もあります。

コンデ大公(Le prince de Conde)を演じるキャスト:ジュリアン・グローヴァー(Julian Glover)

かつての武将で、シャンティイ城の城主。フロンドの乱で国王に対立する立場をとったため、国王から遠ざけられます。年老いてもなお、再起に賭ける執念の老大将コンデ大公を実力派のジュリアン・グローヴァーが好演します。

ルイ14世(Louis XIV)を演じるキャスト:ジュリアン・サンズ(Julian Sands)

ブルボン王朝の太陽」と呼ばれた国王で、ベルサイユ宮殿を築き、華やかで優雅な貴族社会を作り上げました。

一方で侵略戦争を繰り返し、領土を広げていきました。たくさんの愛妾を抱えていましたが、今回はその一人、モンテスパン夫人が出て来ます。

その対抗馬になるのが、モントージェ夫人になります。

朕は国家なり(L’Etat, c’est moi)」という有名な言葉を残したルイ14世を美形のジュリアン・サンズ(Julian Sands)が演じます。

ヴァテールが演出した三日間の饗宴とは

Dinner

ヴァテールが演出したイベントを中心にご説明します。

初日「太陽の栄光」と「大自然の恵み」

木、鳥、蝶、フルーツ、そして花をモチーフにしました。

エキゾチックな演出のバレエと舞台装置が壮大で、仕掛けがユニークです。

かわいいエンジェルが空中に舞い、大道具が次々とパノラマのように変わります。

コンピューターで操作するのではなく、全て手作業で舞台を転換させている点を考えると、当時の舞台づくりの苦労がしのばれます。

また、500人分の料理を準備しますから、料理人の数も膨大です。

映画に出てくる材料は全て本物で、修行中の料理人見習いの方達が村人として撮影に協力されたようです。

監督の話によると、ヴァテール役のドパルデューはしょっちゅう、つまみ食いをしていたとか…映画を観ると、ドパルデューの気持ちがわかります。

二日目「水の饗宴」

庭の噴水を舞台に、7トン、4000発の仕掛け花火が闇夜に太陽のごとく照らし出されます。

テーブルにも花火が仕掛けられ、招待客たちは度肝を抜かれます。

また、大がかりな大道具を作ってオペラ歌手を乗せて吊り上げます。

裏方の緊張感は相当なもので、10日以上ほとんど寝ていないヴァテールは途中で「胃が痛い。」とこぼします。

料理の進行にも目を配りながら、舞台の進行も同時に進めなければならず、これだけの重責を担うヴァテールのストレスは計り知れません。

そしてまさかの事故発生。それでも饗宴は続きます。

クレーム・シャンティイ(Creme Chantilly)

卵が腐っていたためにカスタードクリームが作れず、ヴァテールが機転を効かせて生クリームをホイップさせ、クレーム・シャンティイ(Creme Chantilly)を創作する場面があります。

しかし、クレーム・シャンティイは以前から存在していたという説もあります。

三日目「氷の饗宴」

カトリック教徒は金曜日には肉を食べないので、魚料理を出すことにしました。

ヴァテールは魚が当日の朝に届くように入念な注文を行い、氷の彫刻の上にありとあらゆる種類の魚や甲殻類を盛り付けようと考えました。

その魚の量をもって招待客を圧倒し、「海の神」から「太陽の神」=ルイ14世に捧げるというコンセプトになっていました。

前日から海の神の彫刻を含めた、たくさんの氷の彫刻の準備を開始し、料理の仕込みに余念がないヴァテール。

この饗宴の総仕上げです。

が、この日の朝は悲劇から始まってしまいました。

まとめ

太陽王ルイ14世の時代はブルボン王朝の絶世期でした。

映画『ヴァテール』に登場する貴族たちは昼夜を問わず、宴を繰り広げ、豪奢に過ごしています。

しかし、案外貴族でいることも楽ではないようです。

常に男性の間では権謀術数が張り巡らされ、より大きな権力に近づくことにしのぎを削っていました。

また、女性は国王の寵愛を受けることでその存在感が高められるために、自由を犠牲にしなくてはなりませんでした。

時には自分の名誉を捨てることも。

もちろん、平民のことなどは眼中になく、コンデ大公も自分の出世のために忠臣ヴァテールを賭けの対象にしてしまいます。

この後少しずつ宮廷の財政が悪化してゆき、ルイ16世の時に革命が起こりますが、これは必然だったと思われます。

一方、フランスはこのブルボン朝時代に勢力を伸ばしたことでヨーロッパの中心となり、フランス語がヨーロッパに拡がりました。

今でも、オリンピックやジュネーブにある国連ではフランス語が英語と共に使われています。

ヴァテールの生き方を「不器用」と言う人もいましたが、筆者はその不器用さがこの映画を救っているのだと思いました。

『宮廷料理人ヴァテール』は2021年4月時点の情報ではVODで配信されていないので、興味ある方はAmazon等でDVDをお取寄せして見てください。

宮廷料理人ヴァテール
空前の40億円の制作費を投じられて再現されたルイ14世の宴は必見!

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