フランス映画『天国でまた会おう』のあらすじと感想

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今回は、2017年にフランスで大ヒットした映画『天国でまた会おう(原題:Au revoir là-haut)』をご紹介します。

原作は、ピエール・ルメートル(Pierre Lemaitre)の同名小説で、フランス文学界で最も権威のある賞の一つであるゴンクール賞(le Prix Goncourt)を2013年に受賞しています。

また、その2年後の2015年には、人気作家のクリスチャン・ド・メテ(Christian De Metter)によりバンデシネ(Bande-Dessinée)化された大人気作品です。

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第一次世界大戦の悲劇をファンタスティックに描いた映画『天国でまた会おう』のあらすじ

1920年11月、当時フランスの植民地であったモロッコのフランス国家憲兵隊事務所で、本国において詐欺容疑の指名手配されていたアルベール・マイヤール(Albert Maillard)が取り調べを受けていました。

共犯者のエドゥアール・ペリクール(Édouard Péricourt)について問われると、彼はゆっくりと戦場での出会いから語り始めます。

第一次世界大戦終盤、現場の指揮をとっていたプラデル中尉(Le lieutenant Pradelle)は、本部の休戦指示を無視し戦争を続けようと、自分の部下をドイツ兵の攻撃に見せかけて射殺してしまいます。

その現場を見てしまったアルベールは、プラデル中尉に命を狙われることになります。

逃げる最中、ドイツ兵の攻撃による爆風で地中に生き埋めにされてしまったアルベール。

そんな彼を、同じ部隊の絵を描くのが好きな若者、エドゥアールが危険を冒し助けてくれました。

しかし、次の瞬間、再度ドイツ軍からの攻撃を受け、エドゥワールは顔に重傷を追ってしまいます。

病院に運ばれて一命を取り留めまたエドゥアールでしたが、爆風の怪我により下顎を失ったショックで生きる気力を無くしてしまいました。

そんな絶望の淵に立つ命の恩人を看病するため、あらゆる仕事で生活費を稼ぐアルベールに、エドゥアールはある「作戦」を提案します。

作品の魅力要素となっているユニークな経歴の二人

ゴンクール賞を受賞した人気小説の映画化

はもちろんですが、作者のルメートルと、本作の監督であり主人公アルベール・マイヤールを演じたアルベール・デュポンテル(Albert Dupontel)が、共同で脚本を仕上げたことも話題となり、2018年のセザール賞、最優秀シナリオ賞を受賞しました。

そんな二人は、実はとてもユニークな経歴の持ち主です。

人気推理シリーズ、『ヴェルーヴェン警部の第二部:その女アレックス(原題:Alex)』が日本でも大ヒットしたのが記憶に新しいルメートルですが、本格的に小説家になったのは55歳になってからでした。

元々は心理カウンセラーの道を歩んでいたメートルですが、同時に大好きだった文学の勉強を独学で始めます。

その後、少しずつ文学の専門家として人前に立つようになり、ついには司書専門の職業学校の講師になります。

そんな仕事の傍、テレビドラマの脚本や小説を書き始めたそうです。

一方、デュポンテルは、今でこそ映画監督としても俳優としても有名ですが、元はパリ第7大学、通称パリ・ディドロ大学(Université Paris Diderot)の医学部に入学し、脳神経外科の研修生として病院に務めていました。

父親が医者、母親が歯医者という家系から、親の希望で医学生になったものの、勉強に全く興味が持てず、授業や研修をサボっては暇つぶしで映画館に通っていたそうです。

通い詰めるうちに、だんだん映画の世界にのめり込み、俳優養成学校に通うようになりました。

その後、小さな役を経て舞台で俳優デビューを飾ります。

本名はフィリップ・ギヨーム(Philippe Guillaume)ですが、俳優の活動を始めた当初、親にバレないようにと作った「アルベール・デュポンテル」と言う芸名を現在も使っています。

ゴール・カセと呼ばれた元兵士たち

小説および映画がこれほど高く評価される理由の一つが、いままであまりフォーカスされることがなかった第一次世界大戦後の兵士の様子を描いたことです。

中でも、エドゥアールの様に顔に大きな傷を負った兵士は、ゴール・カセ「壊れた顔」と呼ばれ、差別をされました。

約1万500人にも及んだゴール・カセの兵士たちの多くは、現在もあるパリ5区のヴァル・ド・グラス病院(L’hôpital du Val de Grâce de Paris)で治療を受けていたため、当時は、よだれ垂らしの専門病院(Service des baveux)と呼ばれていたそうです。

エドゥアールが一命を取り留め、入院している時に担当医に「マスク」の説明を受けるシーンがありますが、あの様なマスクは実際に存在し、彫刻家のジャンヌ・プープレ(Jane Poupelet)が赤十字と協力して製作に当たりました。

当時のマスク製作技術は、その後のエピテーゼ技術の発展に大きな貢献を残しています。

印象に残るフランス語のやりとり

第一次世界大戦後の兵士の姿を描いた映画『天国でまた会おう』は、悲劇の物語であるにも関わらず、ファンタスティックでユーモアがあるのも魅力の一つです。

その中でも印象に残るのが、アルベールがエドゥアールの父マルセル(Marcel)に会うシーンです。

エドゥアールの実家が、想像以上に大きく豪華な屋敷に緊張を隠せないアルベール。

ただでさえ小心者で、しかも嘘をつかなければならなかったため落ちつくことができません。

彼と対照的に落ち着きを払ったマルセルと食事をしながら、こんなちぐはぐな返答をしてしまいます。

Marcel : Dans quelle branche êtes-vous ?
(あなたはどんな専門分野で?)

Albert : Plutôt les blanches basses.
(どちらかと言うと、落ち目の分野で)

出典:映画『天国でまた会おう』

une blancheとは、「木の枝」と言う意味の他に、「専門」や「仕事」と言う意味があり、Dans quelle branche vous travaillez ? (あなたはどの分野で働いていますか?)と尋ねるのはとても一般的な言い方です。

マルセルは「quelle branche」を、「どんな仕事をしているか」の意味で言ったのに対し、「大した仕事はしていない」と言いたかったアルベールが、緊張のあまりマルセルの言い方を真似て「branche」に、下部を意味する「basses」を付けて答えてしまいます。

しかし、これではles blanches basses、「木の下の部分の」という意味になり、会話が全く噛み合いません。

アルベールの気の弱さが見えるユーモアがあるシーンになっています。

まとめ

今まであまり扱われていなかった戦後の兵士達の生活を見事に映画化した『天国でまた会おう』は、2017年、フランスの大ヒット作です。

顔に大怪我をしたエドゥアールを演じたナウエル・ペレス・ビスカヤール(Nahuel Pérez Biscayart)は、同年の話題作『BPM ビート・パー・ミニット(原題:120 battements par minute)』にも主演しており、一気にフランス映画界のスターに駆け上りました。

主役を演じたデュポンテルはとても早口でもぞもぞ話すので、正直セリフが少し聞き辛いのですが、そこがまたフランス語聞き取りチャレンジになります。

日本ではあまり語られることがない第一次世界大戦ですが、フランスでは「世界大戦」といえばこの第一次世界大戦を指します。

休戦日に当たる11月11日は、1918年休戦記念日(Armistice 1918)として祝日になっており、各市町村にある終戦記念碑でセレモニーが行われます。

ファンタジーとユーモアとちょっぴり悲しい映画『天国でまた会おう』。

今でもフランス人の心に残るこの戦争の事を少しでも知ることができ、フランスという国をより理解できるようになる作品である事に間違いありません。

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