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あの人がいたから自分が存在している!
すっかり忘れていた記憶が、何かのきっかけでよみがえることはありませんか?
その時は大切だったはずなのに、時が立ち、日々の忙しさに追われて、いつの間にか忘れてしまい、ふとしたきっかけで思い出す過去。
時には懐かしさで心が温まり、時にはつらかった思いが湧き出してくる。
そんな「思い出」によって現在も傷ついたままの人に見ていただきたいのが、この記事でご紹介するフランス映画『あの頃エッフェル塔の下で(原題:Trois souvenirs de ma jeunesse)』です。
2015年にフランスと日本で公開された本作品は、主人公ポール・デダリュス(Paul Dédalus)の人生を作った過去、
- チャールズ・ディケンズの小説のような幼少期
- 非日常的なスパイ・サスペンスを経験した思春期
- そして、その後の人生に大きな爪痕を残した青年期の恋愛
この3つの思い出(=trois souvenirs)を中心に、現在というエピローグとプロローグを加えた面白い構成になっています。
一見、何の関連性もないような3つの思い出が、後半の登場人物たちの台詞によって全てがつながってしまうストーリー展開は見事です。
それでは早速、映画『あの頃エッフェル塔の下で』のあらすじと、現代フランス映画界の最強「コンビ」名監督アルノー・デプレシャン(Arnaud Desplechin、以下デプレシャン監督)と名優マチュー・アマルリック(Mathieu Amalric)の共演作品をご紹介します!
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なぜ気が付かなかったのだろう!映画『あの頃エッフェル塔の下で』のあらすじ
人類学者で外交官のポール・デダリュス(Paul Dédalus)は、赴任していたタジキスタン共和国の首都ドゥシャンべから旅立つ準備をしていました。
恋人のイリナ(Irina)と別れを惜しんでいたポールでしたが、「きっとあなたのことを思い出すわ」という彼女の言葉を聞いた瞬間、ポツポツと幼少時代のことを思い出すのです。
気がふれてしまった母親の異常な愛に反発するため、ナイフをギュッと握りしめて立ち向かった夜のこと
母親からサッと逃げるように、親戚の叔母の家に住むことになったこと
そして叔母の「恋人」である、ロシア系ユダヤ人の女性からロシア革命時代の話をうつうつと聞いた日のこと
そして母親が亡くなった後、父親との確執がどんどんひどくなっていったこと……
思い出に浸りながらシャルル・ド・ゴール空港に到着したポールを待ち構えていたのは、ゾロゾロと集まった複数の入国審査官。
「身分証明書に問題がある」と言われたポールは、後日謎の取り調べ室に連れて行かれ、政府から派遣された担当者からボソッと「あなたは数日前にオーストラリアで亡くなっている」と告げられます。
生まれた場所、生まれた生年月日が同じ同姓同名の「ポール・デダリュス」が存在していると言われ、忘れていた記憶が鮮明によみがえってくるのですが……
現代フランス映画界の最強「コンビ」名監督デプレシャンと名優マチュー・アマルリックの共演作品
1996年から2017年の間で、共演作品がなんと6本!
そのほとんどがセザール賞の各部門にノミネートされているため、フランスでは現代映画界の最強「コンビ」と言われているデプレシャン監督とマチュー・アマルリック。
ここではより映画『あの頃エッフェル塔の下で』を楽しく見るために知っておきたい、2作品をご紹介します。
『そして僕は恋をする(Comment je me suis disputé… ma vie sexuelle)』 (1996)
デプレシャン監督にとって2作目となる長編映画『そして僕は恋をする』。
それまで映画の裏方として活躍していたマチュー・アマルリックと、ある映画フェスティバルで知り合った事がきっかけで、彼を主役に抜擢して撮った作品です。
初主演を務めたマチュー・アマルリックのリアルな演技と当時の若者に突き刺さる内容で、フランスで大ヒットしました。
ちなみに主人公の名前はポール、そして10年付き合っている恋人の名前がエステル。
2作品の登場人物に関しての関連性については、デプレシャン監督の口からは明らかになっていませんが、『あの頃エッフェル塔の下で』を見た後に『そして僕は恋をする』を続けてみると感慨深いものがあります。
『クリスマス・ストーリー(Un conte de Noël)』(2008)
フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)と、映画や舞台で活躍していた名優ジャン=ポール・ルシヨン(Jean-Paul Roussillon)の共演で話題になった映画『クリスマス・ストーリー(Un conte de Noël)』。
デプレシャン監督の最高傑作と言われるこの作品は、一見幸せそうな家族が、酒に溺れている次男のアンリ(Hanri)によってバラバラにされたことで、それぞれの登場上人物の問題が浮き彫りになる姿を描いています。
アンリを演じたマチュー・アマルリックは、この作品で名優の仲間入りを果たしたと言われています。
まとめ
恋人の言葉や事件をきっかけに忘れていた記憶がふつふつとよみがえり、過去に翻弄される男の姿を描いた映画『あの頃エッフェル塔の下で』。
3つの幼少期から青年期にかけての思い出に加え、「現在」をプロローグとエピローグとするストーリー構成で、まるで小説を読んでいるような感覚になります。
ひとつひとつは全く関係のないエピソードのようですが、登場人物たちの会話を通して、すべてつながっていることに気がつきます。
作品を理解するには、登場人物の会話を理解しなければならないので、フランス語学習中級者以上におすすめの映画です。
おまけ
出会いから作品作りへのこだわりをデプレシャン監督とマチュー・アマルリックが語っている、講演会の動画をご紹介します。
約70分と少し長いですがとても興味深い内容なので、二人についてもっと知りたい方におすすめです!
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フランス・パリ在住の、気分は二十歳の双子座。
趣味はヨーロッパ圏内を愛犬と散歩することと、カフェテラスでのイケメンウォッチング。
パリ市内の美術館ではルーブル美術館、オルセー美術館とポンピドーセンターがお気に入り!
好きな映画は70代80年代のフレンチ・コメディ。
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